真田十勇士
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巻ノ八 三好伊佐入道その四
「だからじゃ」
「そう言うのか、しかしな」
「しかし。何じゃ」
「貴殿等見たところ旅の武士じゃな」
一行を見ての言葉だ。
「そうじゃな」
「うむ、実は上田からここにまで来た」
幸村が答えた。
「この寺におるある僧侶と会う為に」
「ふむ。あの大柄な修行のか」
「知っているのか」
「少し見た、まだ若いが随分生真面目で法力もある様じゃな」
「わしの弟でのう」
清海もだ、留吉に言う。
「会いに来たのじゃ」
「それでか」
「そうじゃ、しかし御主本当に大きいのう」
清海も留吉を見て言うのだった。
「わしと同じ位はあるな」
「そうじゃな、お互いに大きいな」
「うむ、ただな」
「ただ?」
「御主、狩りに鉄砲に腕っ節にな」
それにというのだ。
「術も使うのう」
「ほう、術をか」
「忍術か」
「何故わかったのじゃ?」
「身のこなしでじゃ。御主身体は大きいが動きの一つ一つに無駄がなくじゃ」
そしてというのだ。
「音一つ立てぬ」
「だからか」
「そうじゃ、只の猟師ではないな」
「答える必要はあるか?」
「そうしたことは言わぬ、とにかくわし等はこれからな」
「御主の弟に会いに行くのじゃな」
「そうする」
清海は笑って留吉に答えた。
「これからな」
「そうか、この山は険しい、道は気をつけよ」
「わかっておる、そのこともな」
「ではよい、それでじゃが」
ここでだ、留吉は。
幸村を見てだ、こう彼に問うた。
「貴殿が一行の中で一番偉い者か」
「うむ、この者達の主じゃ」
幸村はその通りだとだ、留吉に答えた。
「名を真田幸村という」
「真田、真田家のご次男か」
「拙者のことを知っておるのか」
「若いながら相当な方と聞いておったが」
「拙者の名は近江まで知られているのか」
「話は聞いている、しかしここでお会いするとは」
「これも何かの縁か」
「そうであるな、噂通りの御仁」
幸村の目を見ての言葉だ。
「貴殿は相当な者になられるな」
「有り難きお言葉、ではこれからも修行に励まさせて頂く」
「そうされるか、では」
「これで」
「このまま猿共を怯えさせても仕方ない」
猿達を見つつの言葉だ。
「別の場所に移り狩りをしようぞ」
「そうか、ではな」
「これでお別れじゃ」
微笑んでだ、根津に応えた。
「また機会があればな」
「会うか」
「その時を楽しみにしておるぞ。ではな」
こう話してだ、そしてだった。
留吉は幸村達に一礼して別れてだった、一行は寺に向かった。留吉は別のところに移り山の中を歩いていたが。
ここでだ、その山の中に。
黒装束の忍達が出て来てだ、彼に問うた。
「剛力殿、聞いた通りでしたな」
「やはり真田殿はこの山に来られましたな」
「そしてあの若い坊主とですな」
「会いますな」
「うむ、しかしわしが忍であることも見抜いておったわ」
清海の言葉を聞いて言うのだった。
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