八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四十一話 勝負が続いてその九
「休憩の時には気を抜かれて」
「休まれているのよ」
「休憩の時は思いきり休まないとね」
「ずっと緊張したままじゃ駄目でしょ」
「うん、疲れる一方だから」
「だからね」
それで、というのだった。池田さんも。
「ああして疲れを癒されているのよ」
「勝負が終われば休憩して」
「そしてね」
「それで試合に挑む」
「そうされてるのよ」
「そういうことだね。試合の時は思いきり気を張り詰めて」
それもだ、針が落ちる音でさえ聞ける位にだ。神経を集中させて。
「そして試合が終われば」
「ああした風に気を抜いて」
「そうしていかないとね」
「決勝までもたないよね」
「次の試合でも」
準決勝のその試合でもというのだ。
「負けるわよ」
「そうなるよね」
「だから今はそっとね」
「日菜子さんをそっとしてあげて」
「それでなのよ」
そうしてというのだ。
「次の試合に頑張ってもらいましょう」
「それが一番だね。それじゃあね」
僕は池田さんの言葉に頷いてだ、今は気を抜いている日菜子さんをそっとしてあげた、けれど試合が近くなると。
池田さんは日菜子さんのところに来てだ、こう声をかけた。
「先輩、そろそろ」
「試合の時間ね」
「はい」
そうだとだ、日菜子さんに答えた。
「そうです」
「わかったわ、それじゃあね」
「行かれますね」
「そうするわ、今から」
日菜子さんは池田さんに確かな声で答えた。
「じゃあね」
「はい、全力で」
「闘って来るわ」
日菜子さんは微笑んでだ、池田さんに応えてだった。
そのうえで試合に向かった、その時に。
僕達も試合場の方に向かったけれど、そこで池田さんは次の相手準決勝のその人のことを話した。
「金沢県の一年生の娘なの」
「一年生なんだ」
「一年生だけれどね」
「強いんだ」
「急に出て来た娘なのよ」
今度の相手の娘はというのだ。
「中学の時もね」
「無名だったんだ」
「空手は中学一年からはじめたみたいだけれど」
「高校になって急に?」
「強くなってね」
そしてというのだ。
「全国大会準決勝まで出て来たのよ」
「何か凄いね」
「多分教えてくれている先生が凄いのよ」
「それで強くなったんだ」
「そうみたいよ」
「ううん、そうしたこともあるって思っていたけれど」
それでもというのだ。
「ああしてね」
「実際になんだね」
「そう、急に強くなる人がね」
「いるんだ」
「そう、それにね」
「それに?」
「いいコーチ、指導者の人に会えるって」
そのことはというのだ。
ページ上へ戻る