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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第四十一話 勝負が続いてその八

「身体には嘘は吐けないでしょ」
「どうしても身体を庇うね」
「痛いところね」
 まさに無意識でだ。
「そうなるでしょ」
「それがコンディションだね」
「今私が言うね」 
 それになるというのだ。
「この場合はそうなのよ」
「ほんの少しの痛みが試合を左右することもある」
「そうした時もあるのよ」
「特に今みたいな時は」
「そう、実力伯仲だとね」 
 余計にとだ、こう僕に話してくれた。そしてだった。
 日菜子さんは僕達の前で試合を続けた、試合終了間際になってやっと。
 一本を取った、それでだった。
 その一本から試合終了となってだ、日菜子さんは準決勝進出を決めた。そのことを決めてからだった。僕達はというと。
 日菜子さんを笑顔で迎えてこう声をかけた。
「これで、ですね」
「準決勝進出ですね」
「おめでとうございます」
「あと二つですね」
「ええ、何とかね」
 笑顔で微笑んでだ、日菜子さんも応えてくれた。
「出来たわ。ただね」
「ただ?」
「ただっていいますと」
「あと二回勝てば確かに優勝だけれど」
 それでもという口調でだ、日菜子さんは僕達に話してくれた。
「その二回がまた大変だから」
「一戦一戦がですね」 
 池田さんが僕に言って来た。
「大事ということですね」
「だから二回というよりは」
 そうした考えよりもというのだった。
「一回、そしてまた一回ね」
「一回ずつですか」
「必死にやっていくわ」
 日菜子さんは汗を拭きながら僕達に話してくれた。
「そうした考えよ」
「そうなんですね」
「ええ、それとね」
「それと?」
「さっきは相手が手を少し痛めたから」
 日菜子さんもわかっていた、このことは。
「それがこちらに有利になったのよ」
「相手のコンディションですね」
「それが関係したわ、ただこれはひょっとしたら私もね」 
 考える顔で汗を拭きつつだ、日菜子さんは話してくれた。
「負けていたわ」
「そうなっていましたか」
「空手では付きものでしょ、痛くなることは」
 手足で技を繰り出し合って打ち合うものだ、それならだ。
「私もいつもだから」
「けれどそれが」
「ええ、私に勝たせてくれたわね。ただ」
「それでもですか」
「次は私がそうなるかもね」
 痛む場所が出来たりしてだ、その分だけコンディションが悪くなるというのだ。
「だから気をつけないとね」
「それはわからないですよね」
「だから一回一回ね」
 その試合をというのだ。
「やっていくわ、全力でね」
「わかりました、それでは」
「ええ、次の試合まで休ませてもらうわ」
 こう言ってだ、日菜子さんは。
 控えの場で物凄く落ち着いたお顔になってだった。そのうえで。
 思いきり気を抜いていた、僕はその日菜子さんの顔を見て池田さんに囁いた。
「何か精神的にね」
「緊張してばかりだから」
「そうした試合が続くから」
「今の日菜子先輩は肉体的によりもね」
「精神的になんだ」
「疲れておられるみたいね」
「だからああしてだよね」
 僕もその日菜子さんを見つつ頷いた。 
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