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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第四十一話 勝負が続いてその三

「だってかわされるでしょ」
「突っ込んでもね」
「そう思うからね、多分これまでの相手の人も」
「突っ込まなかったんだ」
「さっきまでの日菜子先輩みたいに攻めていたのよ」
 日菜子さんはこれまで自分はあまり動かず相手を見て攻撃をしていた、それに対して相手の人は積極的に左右に動いていた。前後にも。
「けれどその攻め方で駄目だったでしょ」
「攻撃を買わされてあちらの攻撃には翻弄されて」
「それで先輩も考えられたんじゃ」
「攻め方を」
「相手の意表を衝いたね」
 まさにそうした攻め方をというのだ。
「それでだったのよ」
「一気になんだ」
「突進されたんじゃ、まあそのことは後から聞きましょう」
「まだ試合時間残ってるしね」
「ええ、けれどさっきの一本は大きいわ」
「そうだね、相手もびっくりしたし」
「これで試合の主導権握られたかも」
 その日菜子さんがというのだ。
「さっきの突進と一本で」
「じゃあ三回戦は」
「苦しかったけれどね」
 それがというのだ。
「変わったかも知れないわ」
「じゃあこのままいけば」
「先輩勝てるかもね」
 池田さんは面持ちも確かにだ、僕に話してくれた。そしてその池田さんの言う通りにだった。相手の人は。 
 その突進で一本取られてだ、完全にだった。
 試合の主導権を取られてだ、動きが完全に先程までより落ちていてだった。日菜子さんに追い詰められて。
 一本こそ取らせなかったけれど押されてだ、そのまま試合を終えた。日菜子さんは準々決勝に勝ち進めた。
 その日菜子さんが試合の後の礼を終えてから僕達のところに戻って来てくれた時にだ、僕と池田さんはその日菜子さんに尋ねた。
「あの、さっきの突進ですけれど」
「一本取られたあれは」
「どうしてですか?」
「どうして出されたんですか?」
「閃いたのよ」
 それでだとだ、日菜子さんは僕達に答えてくれた。
「ふとね」
「閃いてですか」
「それでなんですか」
「そう、これまでの攻撃じゃ何時か追い詰められて一本取られるって思って」
 試合の中でだ、そう思われたというのだ。
「自分がこれまでこの試合でしなかった攻撃の仕方考えて」
「それが突進」
「それでそれを使われたんですか」
「しかも相手の娘素早いし動きかわすの上手だけれど」
 相手の人の特質も話してくれた。
「それじゃあかえってこれまで突進を受けたこともないかしらって思って」
「何かそれって」
 池田さんは日菜子さんのお話を聞いて言った。
「私が推察したことと一緒です」
「そうなのね」
「それでじゃないかしらって思いましたけれど」
「その通りだったわね」
「はい、本当にそうですね」
「そしてそれがね」
「上手にいきましたね」
 池田さんも微笑んで言った。
「相手がされたことのない様な攻撃をですか」
「仕掛けたのよ」
「そしてその攻撃が見事にでしたね」
「一本になったわね」
「本当にそうですね」 
 池田さんはしみじみとしてだ、日菜子さんに述べた。
「何よりでした」
「私も上手くいったと思うわ、正直ここまでくるとね」
 全国大会までくると、というのだ。 
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