魔法科高校~黒衣の人間主神~
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九校戦編〈下〉
九校戦九日目(5)×久々の家族行動と決勝戦で使ったバーストモード
裏でそんな危険な一幕があったと知っていたとしても、普通にスルーしていた織斑家だった。試合後、本来ならシャワーのみとなるが織斑家なら人口温泉に入ってもいいので、深夜、穂波さんらと一緒に風呂に入っていた。大会委員が飛行魔法に使用したデバイスを検査させろと言ってきたが、普通にふざけるなと言っといた。
「第一高校の織斑一真君、飛行魔法で使ったCADを検査させてくれ」
「は?テメエは何を言っているんだ、たかが大会委員が俺に向かってその態度だと殺すぞ?お前では話にならんから、蒼い翼を間にでも入れてからもう一回出直して来い!」
という事があったので、蒼い翼関連の者と間を介入させてからデバイス検査を蒼い翼がする事となった。変な騒動があったが、二度と大会委員からは来ないと思う。深雪に向けた視線についてだと、直接的な害はないが放っておくことが一番である。
デバイスを預けたまま、俺はプライベートな空間となっていたが現在俺がいる部屋は自室ではない。ここは深夜と穂波さんが泊まっている部屋だが、先程言った通り地下人工温泉に入っているので久々に親子として待っていた。ついでに話し相手としてドライグを召喚させたので、机の上にいたドライグと話していた。
「先程の相棒は大量殺人を防ぐ為に動いたんだよな?」
「まあな~。俺の行動に関しては、必ずと言っていい程に悪人を倒すために動くぞ。例え面識がない観客だったとしても、殺されたのでは意味がないからな」
「それは本来の主人公なら、どうでもいい事であって同じ学校の先輩が犠牲になったとしても主人公は残念だとしか思わないだったか」
「だが今夜もしかしたら赤龍帝の鎧を纏うかもしれんな。無頭竜をこれ以上、俺らの邪魔だけはさせたくないからな」
無頭竜という組織をこれ以上泳がせる訳にはいかないので、今夜潰しに行く予定だ。そんでしばらくドライグと話していると風呂上りとした感じで、部屋に入ってきた深雪、深夜、穂波さんがそれぞれ私服を着ながらこちらに戻ってきた。俺は冷蔵庫からドリンクを渡してから、一気に飲み干したのでやはり風呂に入らせて正解だったか。
「ふうー久々の親子としてお風呂に入ったのは久々よね」
「そうですね奥様。お嬢様と入るのは久々でしたが、たまには一真さんも一緒の方がよかったのでは?」
「本当ならそうしたいでしたが、お兄様は今夜の事で準備をしていますから。なのでこれからお食事にしませんか?厨房を借りた桜花達が、ここまで持ってくるそうですよ」
「それはいいな。久々に家族としての食事は最近なかったもんな」
そうしているとノック音が聞こえたので、俺が開けたら桜花・結衣・沙紀のワンセット組が来たのか。食事を運んできたので、ドアを開けていたままにしてから入ってきたので食事をしようと専用の机を出した。
今回は桜花達が作ったので、家族食事風景を久々に見たので懐かしく思った。食べ終わってから、深雪は深夜と共に寝てしまった。昼食が終わってから、決勝までは時間があるので仮眠をしたいがたまには深夜と一緒に寝たいという希望をした事、深夜と深雪と共にベッドで眠ろうとしたがすぐに眠れるような効果がある風を出した。
「奥様とお嬢様の顔を見るとホントに親子という感じですね」
「そうだな。穂波さんはどうなんだ?最近の深夜は」
「そりゃ最近は家族として生活していないので、寂しがっていましたからね。このような機会があるとは思いませんでした」
「ま、九校戦が終われば元の生活に戻れると思うがな」
母親が使っているベッドなのか、それとも俺の力なのかまでは分からないがすぐに寝てしまった事で俺はしばらくドライグと穂波さんと話していた。深夜と深雪らが眠りに落ちてから四時間経つが、穂波さんは昼食の片付けをして行ったが俺はベッドサイドを離れぬままとなっていた。隣に居て欲しいという深夜と深雪の願いにより、俺と一匹は安心しきった寝顔を見る事が何よりも信頼の証である。
家族として一緒に暮らし始めたのは、深夜と結婚してから結構経つが同じ家の中で寝起きしていても言葉を交わす事がよくあった。それと朝鍛錬では、家だと俺らだけの少人数だがここに来てからは全ての蒼い翼やCB関連の者達と一緒に朝鍛錬をしているので、家族だったとしても事務連絡を聞くだけで終わってしまう。零家、四葉家、七草家と織斑家は、数字付きではないがとても強い仲間がいるし例え十師族でなくとも後ろ盾には蒼い翼がいる。
「それにしても響子からの連絡によれば、長文の暗号メールの中には回収した『ジェネレーター』のドウター化についてはもう無さそうだな」
「そのようだな。相棒の出番も楽しみであるが、無頭竜が言っていたドウター化というのはどういう感じでドウターになるのかが楽しみだ」
「おいおい。俺らは無頭竜の一味を確保する事であり、殺しに行く訳じゃないからな。仲間が準備してくれているし、俺らの決定は変わりはない」
話している間に決勝戦の時間がやって来た事で、穂波さんが戻ってきたと同時に起こしたのだった。それも起きたてのキスをしてからだったが、家族との挨拶みたいな感じだから気にしていない。晴天の夜空だったが、俺的には決勝戦は飛行魔法を使うかもしれんなという推測をしていた。上弦の月が星の瞬きを圧倒していたが、天空神からの応援なのかまでは知らんが下から光球を見分けるには良くないコンディションだと思った。
「体調はどうなんだ?」
「万全です。お風呂に入って仮眠を取ったお陰で、気力と体力も回復しています。なので最初から飛行魔法で行きたいと思うのですが」
「もちろん構わんが、他校も飛行魔法を使って来たら音声入力でのバーストモードを使うといい。バーストモードは、背中に出現する想子によって出来た翼だからな。深雪以外が使おうとしても想子保有量が、圧倒的に多い俺ら以外が使おうとしても発動しないようになっている。だから思いっきり飛んで来い」
「はいお兄様!」
勢いよくフィールドへ飛び出していく深雪を俺は見送ったが、随分と上機嫌なのはサポート要員としてブース入りしているあずさが言っていた。残念ながら、あざさが担当した選手は予選落ちとなったが決勝戦進出は一高、二高、三高、五高、六高、九高からの各一名ずつとなっている。
複数名を決勝に送り込めた学校はないけど、女子最終競技ともあってか各学校が意地を見せた形となっていた。それとこの場には、毎朝診察を受けている摩利と主だった女子メンバーが顔を揃えていた。三高が一名しか決勝に送り込めなかった段階で、深雪が三位以内に入れば第一高校の総合優勝が決定するからである。
「機嫌良く試合に臨めるのは良い事だわ。一真君が上手にケアーしてくれたみたいだけど」
「それは違いますよ。深雪は久々の家族で温泉に入って、食事をしてから深夜と一緒に寝ましたからね」
「そういう事か・・・・家族と過ごせば自動的にこうなる事を予想していたのね。まあ私もお母さんと過ごしていると、自動的にそうなるから気持ちは分からなくもないけど」
反対側から真由美が笑顔で話し掛けてきたので、否定してから深夜と一緒に過ごした事を話したのだった。
「そういえば深雪さんは『カプセル』を使わなかったようですが、どうやらその心配は不要のようですね」
「母親と一緒に寝れば、そのようなモノを使わなくとも五時間寝かせたので充分かと」
ベッドで眠らせていたので、俺のではなく母親が使っているので眠らせた事も言ったが、飛行魔法の隠しモードについてはまだ話さないままにいた。そして始まると同時に、注意がフィールドへ向いたのか静かにホッとしている。
淡い色のコスチュームが、照明と湖面に揺らめく反射光に照らされてくっきりと浮かび上がって見えた。ついでに深夜らは、ここにはいないが真夜達がいるVIPルームで見ていた。桜色のコスチュームを着た深雪が一際目を引くが、予選で飛行魔法という離れ業を披露した為ばかりではないと思った。
ゆらゆらと揺らめく光の中、少し注意を逸らした隙にフッといなくなってしまいそうな儚さに、観客は目を離せなくなっていた。ミラージ・バットの別名はフェアリー・ダンスとも言うが、少女を妖精に例えるのは使い古された定番のレトリックだったが今の深雪は妖精そのものだと思えるように見えた。
ざわめきが潮を引くように静まったが、競技委員=蒼い翼の者がしつこくメッセージボードを振り回す必要もない。人々が固唾を飲んで見守る中、ミラージ・バット決勝戦が始まった。始まりの合図と共に、六人の少女達が一斉に空を飛んだ事で推測が当たった。跳び上がったのではなく、六人全員が足場へ戻ってこなかった。
「飛行魔法!?他校も!?」
「流石は九校戦。僅か六~七時間で飛行魔法の起動式をものにして来たようですな」
あずさは裏返った声で叫び、俺は推測から予想通りな感じとなったので口にした。実際俺はそれ程驚いていないし、蒼い翼を仲介とした事で各校へ起動式をリークしたのだろうと思った。不正疑惑の抗議に対する回答、という形となったがデバイスを預けっぱなしにしていたのでその可能性まで考慮に入れていた。
「各校ともトーラス・シルバーが公開した術式をそのまま使っているようですね」
鈴音が空を見上げて眉を顰めていた。
「・・・・無茶だわ。あれはぶっつけ本番で使いこなせる術式じゃないのに。選手の安全より勝ちを優先する何て・・・・」
真由美が苦々しく呟いた。
「大丈夫だと思いますよ。あの術式をそのまま使ったとしても、深雪が優勝な事は変わりません。万が一の場合でも『安全装置』が機能すればいい事ですし、それに飛行魔法には隠しモードがあるので深雪はそれを使うと思います」
俺の声からしても一高の優勝は確実だと言っていたが、最後のキーワードを聞いた事でいつもの女子メンバーも疑問符を浮かべたのだった。隠しモードというのがどういうモノかまでは知らされていないが、それを知っているのは開発者と関係者だけだった。空を舞う六人の少女達は、妖精のダンスをしているかのように観客は夜空を飛び交うその舞に、心を奪われていた様子が見れた。
「お兄様の推測は見事に当たったようなので、これを使わせてもらいます・・・・バーストモード!」
深雪が大きな声を発した事で、観客一同や真由美達に五人の選手達は一斉に深雪の方へと見た。そうしていると深雪の背中から翼が生えたかのように見えた事で、残像を残すかのようにして一気に光球を弾いていた。
これに関しては隠しモードだったので、いくら魔法の知識がある鈴音でもこれに関しては驚いていた。同じように空を飛んでいるが、一人だけはまるで翼を生やした本物の妖精か女神雪音のように華麗に舞っていたのだった。
「え!何あれ、飛行魔法なのに深雪だけは違うようにして舞っているけど!?」
「ただでさえ飛行魔法だけで驚いているのに、深雪だけは翼を生やしたかのように見えて残像を残す程の速度になっているぜ!」
「まるで女神様みたいですね深雪さんは!」
「・・・・ほのかは知っていたの?あれについては」
「ううん私が知っていたのは飛行魔法だけであって、あのようなのがあるという事までは知らなかった。あれは何?」
「どうやらトーラス・シルバーの術式には、隠しモードというのが存在していると聞いたからどういうのかな?とは思っていたけど、もしかしてアレかもしれないね。一真から聞いたんだけど、想子が規格外にある者でしか使えないバーストモードというのが存在するらしいよ」
と上からエリカ、レオ、美月、雫、ほのか、幹比古の順だったが、どうやら隠しモードがあるという事を知っていたのは幹比古だけだった。徐々に落ち着きを取り戻した観客だったが、ここで深雪がバーストモードを発動した事で同じように空を飛んでいるにも関わらずポイントを重ねているのは一高選手だけだった。
他校の選手は飛行魔法をしている動きで精一杯だったのに、残像を残すかのような深雪の動きには全くと言っていい程ついて来れていない。素早く滑らかに優雅に、身を翻して宙を滑りながら上昇して下降する。
「バーストモード・・・・確かにトーラス・シルバーの術式にはありますが、それは他校の選手では使えないと言いたいのですか?」
「そうですよ。ただでさえ想子を自動で吸収させてから飛行しているので、本来なら本戦の選手でさえ飛行するのがやっとというレベルです。深雪や俺だと想子保有量は規格外にありますから、いくら数時間でモノに出来たからと言って試合で発揮されるのは事実上深雪だけです」
「ノーマルモードは深雪さん以外の者が使えて、バーストモードは限定者だけだと聞かされていたけど、まさか一真君や深雪さんが使えるモードだったなんて」
「飛行魔法は誰にでも使える魔法ではありませんが、真の価値を発揮させるのは今の所深雪だけでしょう。いくら他校が飛行魔法を使おうが、レベルが違い過ぎますからな」
この魔法を使いこなせる者は、今だけだと深雪だけなのでバーストモードを発動していたとしても、光球を弾こうとする他校生徒を素早く深雪が弾いたので空振りだった。様子を見ると想子保有量は、深雪以外だと普通ぐらいだろうと思っていると一人また一人と力尽きて落ちていく他校の選手。最初の一人が空中でグラリと体勢を崩した瞬間、観客から悲鳴が上がるが選手がゆっくりと降下されていくので客席全体はホッと息をついた。
選手がゆっくりと降下していくので、蒼い翼の者達もホッとしているが予選では落下事故があったにも関わらずであった。飛行魔法には安全装置というのが組み込まれていたが、術者の想子を供給の補充効率が半減すると起動式に組み込まれて自動的に十分の一の重力で軟着陸モードとなる。一高ブースでは、変なアレンジをしていないので飛行魔法の安全性が実証された訳だ。
『飛行魔法の宣伝にフル活用されていますね一真様』
『そうだな。深雪がバーストモードを使っているからか、他選手も使おうとしても使えない状況下となっている訳だ。それについてはエンジニアが一番知っている事だと思うが、第一ピリオドから最終ピリオドまで飛行したままとなっているな』
『深雪様が棄権しない限り、一高の総合優勝が決定します。一番確実な戦法としては足場の上に留まって何もしない事ではありますが、そのような戦法をしなくとも深雪様の意志で降りて来ないまでずっと飛んでいられますね』
ここまでのポイントは大差で一位となったが、休憩時間になっても降りてこない深雪だったので他選手だけは休憩となっていた。バーストモードを使えるのは、想子が枯渇しないぐらいの保有量がある深雪だから出来る事だ。
総合優勝も大切だが、個人優勝を犠牲にするべきという考えもなく声援と信頼を受けた深雪は最終ピリオドの空へと舞上がっていた。決勝戦が終了と共に降りてきた他校選手は、湖上の足場に膝をつき、荒く息を吐く選手だったが夜空をソロで妖精の舞を舞い踊っていて最早チートに近い感じで最後の光球を叩いたのだった。試合終了と共に、熱狂的な拍手となっていた。
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