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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第四十話 緊張の続く試合その十三

「西郷四郎さんって人いたけれど」
「確か会津出身で山嵐を使った」
「姿三四郎のモデルのね」
「その人も小さかったんだ」
「今から見ると女の子から見てもね」
「小さかったんだ」
「そうだったみたいよ」
 そこまで小さかったというのだ、西郷四郎さんという人は。
「嘉納治五郎さんも一六〇なかったらしいし」
「それはまた小さいね」
「それでもね」
「そうだよね、柔よくだよね」
「剛を制すよ」
 まさにというのだ。
「空手でもだから」
「じゃああの相手の人も油断出来ないね」
「そうなるわ」
 こう僕に話してくれた。
「あの人もね、そもそもね」
「そもそもって?」
「あの人さっきも話したけれど二回優勝してるから」
 中学、高校で一回ずつそれで二回だ。
「尋常じゃない強さよ」
「じゃあ油断出来ないね」
「ええ、日菜子先輩でもね」
「勝てればいいね」
「正直下馬評では皆日菜子先輩不利って言ってるわ」
「そうなんだ」
「けれどもうここまできたら」
 全国大会も三回戦までくればというのだ。
「強い人しかいないわよ」
「急に出て来た人でも」
「そう、全国でも上から数えた方が早い」
 そのレベルでというのだ。
「強い人ばかりよ」
「そうなんだね、じゃあ」
「この人に負けても」
 例えだ、そうなってもというのだ。
「仕方ないかもね」
「日菜子さんは勝つつもりだよね」
「けれどね」
 それでもだというのだ。
「もうここまできたら負けても仕方ないわ」
「それ言ったら仕方ないかな」
「うん、そうだと思うわ」
 池田さんはかなり真剣にだ、僕に話した。
「けれど第一はね」
「一番大事なことは?」
「悔いのない様にしないとね」
「いけないんだね」
「そう、それが大事よ」
「それはどのスポーツでもだね」
「武道でもでしょ」
 池田さんは空手のことからまた話した。
「それは」
「そうなるよね、やっぱり勝っても負けても」
「スポーツマンとして悔いのない様にね」
「全力を尽くさないと駄目よ」
「だから日菜子さんも」
「日菜子先輩のいいところは全力を出されるところよ」
 まさにというのだ。
「だからね」
「そうだね、あの人はね」
 僕もそのことを知っていた、同じアパートに住んでいるだけに。 
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