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インフィニット・ストラトス if 織斑一夏が女だったら

作者:しばいぬ
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第九話《『私』と俺と私》

 
前書き
この話は書いてて楽しかった(´・∀・`)
主人公の全体像は私でも決まってません。(´;ω;`) 

 
白い空間。上も左も、右も下も、立っているのか浮いているのか解らない。そんな空間に、俺は存在していた。

「どこだろう。ここは」

俺は行くあてもないまま動き続けた。白しかないため動いているのは感覚上でだけだ。もしかしたら動いていないかもしれない。動いているのは空間の方かもしれない。もしかしたら戻っているかもしれない。

でも、動いていないと不安だった。

俺はどうなるのか。生きているのか。死んでいるのか。解らないから。動きさえすれば、今、生きていることは確かだから。

ふと、俺は頭を右に動かした。

*

なんだか、久々に目が覚めたような気がします。

どれくらい眠っていたのでしょうか。ここは、あの暗い混凝土の部屋ではなくて。白い。ただ白い。とても白い。

いつの間にかあんなに汗と涙とおう吐物で汚れた制服はきれいになっていました。

ーー夢。なわけないよね。

『私』は確かに誘拐されたのだから。

ーーじゃあ、ここは天国?と、するとここは雲の中かしら・・・?

『私』は上へと泳ぎだしました。天国かどうかは解らないけど、もしかしたら天使さん達が『私』を探しているかもしれないから。

*

霧に濡れ、鈍く輝く漆黒のISが、福音を見つめていた。

「弖膩キ瓷躱饐ア駑瓷ア樋麼ム」

言葉にならない言葉を発した私は、福音へ向けて急加速した。

福音は身じろぎもせず、エネルギー弾の雨を、私に打ち込んだ。

*

そこに、俺が現れた。新品の制服を着た、幼い俺。

俺は、何となくだけど、ここが精神の世界だと、理解した。

*

少し泳いだら、目の前に人影を見つけました。

ーーもしかして、天使様でせうか?でも、羽が生えていませんね?

人影が徐々にはっきりとしてきました。

なんと、そこには、『私』が立っていたのです。成長した『私』が。

「きゃああああぁぁぁぁぁぁ」

『私』は、思わず叫んでしまいました。だって年は違えど、瓜二つの私。これは間違いなく、ドッペルゲンガーです。『私』は折角天国へと招(まね)き入れてもらえたのに、また死んでしまうのでせうか!?

*

「!?」

幼い俺は、急に叫びだし、目を手で塞ぎ、座り込む。俺は驚愕した。

(こ・・・この俺も変な奴だったのか!?)

*

立ち込める爆煙の中。エネルギー弾の雨は降り注いだ。

漆黒のISは装甲の大半を失いながらも爆煙を振り払い、福音に突進し、右腕をもぎ取っていた。

紅い血液が舞う。福音は、操縦者がいながら暴走していたのだ。

私は、もいだ腕を、夢中で(むさぼ)った。

*

あ・・・あれ?死んでない?おかしいのです。ドッペルゲンガーに出会ったら死んでしまう、と本で読んだのですから。死なないはずがないのです!

はっ!ということは、やっぱり『私』は死んでしまったのですね!?(よわい)13にして、早くも生涯を終えてしまうとは。悲しきかな!

『私』は思わず成長した『私』を見て、泣いてしまいました。

アーメン、『私』!『私』、アーメン!

*

立ち上がったかと思うと、幼い俺はメソメソと鳴き始めた。

(な・・・なんなんだ!?この俺は!?)

*

あ、あああああ。「」あああ?ああ、あ

美味しい。あたたかい。あたたかい。ほしい。ごめんください。あたたかい、もっと。窓をしめる。オレンジ。染まる。あたたかい。夕御飯。家族。たべる。たべたい。あたたかいの。もっと。ほしい。あたたかい。ほしい!

私は、泣いていた。笑いながら、泣いていた。

*

「お・・・落ち着け!そこの俺!」

俺は思わず叫んだ。

ーーいや、俺じゃない!俺だけど!この娘は俺だけど俺じゃない!あぁ、ややこしい!!

*

わ・・・『私』が怒ったのです。この方はやっぱり『私』ではないのでせうか?だって『私』は怒りませんもの!そうですとも!

ではやはりこのお方は、ドッペルゲンガーなのですね!?

「ナムアミダブツ!」

*

幼い俺は急に手を会わせ、ナムアミダブツ!と唱えた。

ーーだめだこの幼い俺。早くなんとかしないと。

「いやいや、落ち着け!幼い俺!今がどんな状況か解っているのか!?」

「どど、どんな状況だなんて!天国まで『私』を追っかけて来て!何をいっているんですか!?」

お前が何いっているんだよ!

俺はものすごい疲労を感じた。

*

私は今も、泣いていた。

全身(からだ)を真っ赤に染めながら。

独りでずっと泣いていた。

銀を辺りに飛ばしても。

泣いても、泣いても、笑っても。

どんなにぬくもり満たしても。

心の隙間、大きな穴は。

ぬくもりをただ願うだけ。

私は福音(ぎん)(むさぼ)った。

口が、顔が、赤が染める。

おなかは満たされ赤くなる。

赤をたくさん浴びたとしても。

心の穴は空いたまま。

*

「お前、俺なんだろ!?コンクリートの部屋の記憶があるだろう!?」

俺は思わず大声をあげていた。

「はっ!そういえば、確かに!でも、なんであなた様がそのようなことを!?」

幼い俺はオーバーなリアクションでそう答えた。

まじか!?俺ってこんな奴なのか!?

*

太陽が沈みかけ、辺りが影に染まり始めた。

「出撃した五名!皆さんの意識が戻りました!」

医療科の先生は大きな声で一年全員へ知らせた。

生徒達から安堵の息が洩れる中、教師陣は難しい顔をしていた。

織斑一夏と、その同室していた二名が消息不明。ーー

内、織斑一夏以外の二名は、遺体として発見されたが、織斑一夏は未だ見つからず。

織斑千冬は、思い当たる節があった。

ーー四年前の、誘拐事件。

あの時も、一夏の周りにいた友人が遺体として発見されている。

千冬は手を強く握りしめた。

*

「と・・・ということは、ここは精神の世界であり、あなたは『私』の人格の一つ、そして、いまは、精神の壊れた私なるものが『私』を動かしている。というのですね!?」

「そうだ。お前も壊れた自分をみていただろ?あれは、相当ヤバイぞ。」

俺は『私』の記憶を既に見ることができた。だが『私』は、そういうわけではないらしい。俺が性格は男だと言ったら、「『私』の体に、ヘンなことしてませんよね!?」と、言われる始末だ。

大丈夫だ。俺は、性同一性障害として人格を得たからな。そして、変態である前に紳士なのだから。

変なことなんてしていない。たしか。

*

確かに、この人のおっしゃることに、嘘はなさそうなのです。

たとえ、この人が変態だったと前提しても、変態の前に紳士がつきそうな出で立ちをしていますから。さすが『私』の体です!

「・・・コホン。俺君のおっしゃる事はわかりました。ところで、『私』達はこれからどうすればいいのですか?」

沈黙が、白い空間を包んだ。

*

私は、スコールの隠れ家に連れていかれていた。

それは、白い外壁に黒い屋根をもつ二階建ての洋館であったが、森の中でも一際(ひときわ)大きい木が生えている一角の中に建てられているため、ずいぶんと近づかなければその姿を確認できない。

大理石で出来た浴室のなか、私は壁際のシャワーの前でスコールに体を洗われていた。

浴室には低学年用プールほどの大きさの浴槽があり、そこには絶えずお湯が流れている。

私に動く気配はない。まるで人形だった。

既に福音の血は乾ききり、私の全身に張り付いている。

スコールはそれらを優しく洗う。全身を、くまなく、愛でるように。

ーーあたたかい。

私は、たしかにあたたかい物を感じ、あたたかい物をさらに求めた。

確かに、そこには愛があった。それは、初めての成功個体へ向けての愛。無機質な愛。

私は無機質な愛だとは微塵も思わず、愛を求めた。織斑千冬からしかもらえなかった、あたたかい愛を。スコールからは得られるはずのない、家族としての、愛を。

スコールは私に深く、キスをした。

私は、スコールを求めた。あたたかいものが欲しくて。

でも、何をされても、私の心があたたかくなることはなかった。

*

・・・俺が『私』と会ってからどれくらいたったのだろう。なにせこの空間では、眠くならない、おなかが減らない、朝も夜もないのだから時間の感覚がすっかりなくなってしまった。

この空間について分かったことといえば、想像したものをなんでも産み出せることくらい。精神の世界なのだからそうできたとして、なんだと言うことなのだが。

そんなことより、問題は私だ。

あいつは何をするか解らない。もしかしたらもう、取り返しのつかないことをしているのかもしれないのに、『私』はその危険性を全くといっていいほど理解していないのだ。

*

それにしても、この空間からはどうやったらでられるのでしょうか。

俺君は主人格の『私』が鍵なんじゃあないか、と申しているのですが、『私』にも、どうすればよいのかわかりません。

なにせ、『私』は初めての沢山の人格をもったのですから、どうしたらいいのか知らないのです。

皆様は普通、どうやって人格を変えているのでせうか?そこのあなた、教えてください。

*

とても広い部屋のなか、私は大きなベッドに腰かけていた。

童話『アリス』のアリスのような格好をしてベッドに座っている。

まるで、きせかえ人形。あるときはメイドのような格好をし、またあるときはタキシードを着ていたりする。

私に意思はある。だが、逆らおうとしないだけだ。

一種の奴隷状態。逆らおうという考えが生まれないほど、私の心は衰弱していた。

私はただ、戦うだけ。スコールの命令に従い、破壊を繰り返していた。

命令に忠実に従い、無機質の愛を貰う。

私は、考えていた。私が求めるものと何が違うのか。

たしかにスコールから貰う愛は、あたたかい。でも、心には穴が空いたままなのだ。

今の私は、戦い、愛を求めるだけの機械。でも、必要以上の破壊をすることはなかった。いつも命令された破壊を最小限で完璧にこなしていた。

その為、スコールも、私も、織斑一夏という半ISが、規格外の力を持っていることに、気づいていなかった。












 
 

 
後書き
いやー、やっと物語も後半なのですよ!
この後の展開は、私の中にもないので、どう進むかは自分にも解らないのです(´・ω・`)
まぁ、第四話辺りからずっと考えてなかった展開なんだけどね。 
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