ロザリオとバンパイア〜Another story〜
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第33話 御伽の国・第8支部
一先ず、半魚人である妖を2人を倒し、残り1人となった男(おそらくリーダー格)の方へと、ジャックは 向きなおした。男は、微動だにせず……唯笑っている様だった。
味方を始末されたと言うのにも関わらずだ。
『で……? 君はどうする? 尾行けていた時に聞いてた感じ、君はその子の扱いもそこまで酷くなかった。……争いをあまり好まない身とすれば、これで終わりにしてその子を離してもらいたいんだが。聞くところによれば、売買関係らしいな。金の問題なら考えもある』
金の問題の考えと言うのは、もちろん御子神頼りだ。あの男も今や学園の長である理事長だ。それくらい、何とかしてくれるだろう、と判断をしたのだ。……何言われるかは判らないけれど。
(まあ、いいや。とりあえず 出世払いで……)
正直根拠のないことを考えている事は判っているが、現状では人身売買を出来る程の金額は持ち合わせていないから。……相場は判らないけれど、相応のもの、闇取引だから、相応の金額と言う事は判るから。
それを訊いた男は。
「はは。ウチの身内をボコボコにしといて争いを好まないといっても、正直、全然説得力無いと思うがな」
皮肉を交えながら、そう言っていた。確かに、それもそうだ。相手が仕掛けてきたとは言え、相手の攻撃は効くとは思わなかったし、それなりに手加減する事も出来たのだが……、あの少女にしていた仕打ちを考えたら、感情が入ったのだ。
「あいつらは良い… 軽率すぎるしあそこまで出来が悪いと思わなかった。むしろアンタに興味がある」
男はそう言うと、不敵に笑ってそう言っていた。そして、当然だがジャックの反応は。
『……オレは、男に興味を持たれても、嬉しくないがな』
絶対ゴメン、と首を振っていた。BLと言う属性は自分には持ち合わせていないから、絶対無理で反対だと言う事だ。……アカーシャやモカの様な美しすぎる女性達を見てきたから、男に興味など持つわけも無い。
「まあそういうなよ。アンタみたいな男が仲間になってくれたら、助かるんだ」
『オレが仲間に…? さっきも言ったが、俺は女の子に乱暴するような輩の仲間になるのは御免なんだが? まぁ君はそこまでひどくなかったけど』
勧誘をしてきている様だった。確かに、仲間を2人、あっという間に退治して 減ったから、と言う理由と、それなりに力を見せたから、と言う理由があるだろう。
「まあ、そういわず聞いてくれ、アンタも見た所 妖だろ? 正体は判らないが。まあ、あいつらを一瞬でボコった実力を見れば一目瞭然だ。そして、強さも相応のモノ。 ……それに、オレはこの子にはもう乱暴はしないさ」
『……とりあえず、話くらいは聞こうか』
ジャックは、腕を組みながら、そう言っていた。
(さっきの会話。そして仲間になれ、と言う所を見ると、おそらく、コイツは一枚岩じゃないだろうな…… そこそこデカイチーム……組織的な奴らと見た)
ジャックは、この男の背後には何かが居る。組織的な連中だと感づいた。そして、この男の雰囲気を見ると、かなりの使い手だ。故に……、大きな組織だと言う事も理解した。
そこについてを聞くことにしたのだ。
『お前らは何なんだ? まあ…仲間を募ってる所を見ると…単純なことじゃないことはわかるがな……』
「……そう、その通りだ。俺達は妖の敵である人間社会の転覆を目論み闇で活動してる御伽の国って言う組織なんだよ。ご察しの通り…。そしてこの子の名前は《燦》って言うんだけど。この子も素晴らしい力を秘めていてね。来るべき目的のために優れた仲間が欲しいってわけさ」
男はそういって自分達の組織についてを語っていた。そして、ジャックはその名前について、勿論心当たりがある。
(御伽の国か。成る程、ここで出てくるのか。正直創立とか詳しいことは知らんし、あっても不思議じゃないか)
「オレは御伽の国 第8支部長 神無木 聖司だ。あんた程腕の立つ男なら、VIPとして歓迎するがどうかな? それなりに成果を見せれば、地位も得られる」
そう、ジャックに問いかけた。ジャックは考える時間を殆どかけずに答える。
『まあ、こんなのに焦らしても意味はないな。答えはNOだ』
そういった途端、男は眉を潜めた。
「ほう……、 してその理由は?」
『俺は 人間を敵と思ってない。むしろ最近仲が良いんだ。この山にある温泉宿も良かった。最高にな。……そして 何か組織の名前が気に食わない。御伽の国と書いて、フェアリーテイル、妖精の尻尾?? 妖が組んでるチームのどの辺が御伽なんだ? どの辺が、妖精……っと、見方を変えたら、妖精も妖だな。 まぁ 御伽はおかしい。ネーミングセンスを疑うぞ? お前ら……』
ジャックは、思ったことをはっきり微塵も曲げず話した。名前に関しては思う所があるから。創設者には色々と考えはあるんだとは思うけれど、どうしても。
「……へぇ 妖しなのに人間の味方をすんのかよ。 じゃあ アンタは、ただの敵ってことになるな。妖にとっては裏切りも同然だろ? ……後、組織の名前については大きなお世話だ」
静かな口調で話していたが……、その言葉、口調には怒気が含まれていた。。
(ん……あれ? コイツひょっとして人間の味方で仲間になるの拒否した事より、御伽の国を馬鹿にしたこと怒ってんのかな? そんなに気に入ってんのか? まあ…なんにしても…だ)
ジャックは名前については、少し悪かったかな? と思いつつ苦笑いし。そして、表情をすぐに変えた。戦闘態勢に入ったのだ。
『そうだ…。その人間達を滅ぼすって言うのなら… 俺がお前らを滅ぼしてやるよ。ふぃあり……なんたら』
怒ったのは、ジャックの方も同じだった。 人間の世界。
それは、前世とはいえ、故郷みたいなものだ。その世界を壊す、と訊いて憤怒が湧き上がってくるのみ不思議ではないだろう。
「……面白いな。なら、支部長の力、それを見せてやる」
男の方も、臨戦態勢に入っていった。
この2人の影響だろう。夜の闇の中、強大な妖気が渦巻き、立ち上っていくのだった。
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