ロザリオとバンパイア〜Another story〜
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第32話 真夜中の戦い
ジャックは限りなく気配を殺し、男達に近づいていった。そして、距離をおよそ30m程つめた時だった。
「………む?」
後方を歩いていたリーダー格の男が急に立ち止まったのだ。
「……兄貴?」
「どうしたんです?」
突然立ち止まったのを見て、不審に思った二人も足を止めた様だ。
「……誰か…いるな。間違いない。そんな気配だ」
ジャックは限りなく気配を消し近づいていったのだが。男は僅かな気配を察知し後ろを向いたのだった様だ。
「別に何にも感じませんぜ?」
どうやら、他の男達は、掴めない様だ。その気配が。
「……いいから黙ってろ」
男は、静かだが、有無を言わさぬ迫力で、2人の男達を黙らした。そして、背後の木の陰に向かって。
「……誰だ? 俺達をつけているのは? 来ないなら こちらから行くぞ」
まだ姿が見えないが、完全に確信した様で、気配のした方へ声を上げていた。 位置は間違いなかった。
そこにジャックは身を潜めていたからだ。
(ふ……ん… 中々やるな……? あいつ…… 気配を殺しても何かを感じ取ったか……)
とは言っても、ジャックは尾行等はこれまでした事のない。見よう見真似……とまでもいかない。ただ、妖気のコントロールはできる為、その応用で、気配を消す事は出来た、と自己判断をしていた。
それでも気づかれた。……ジャックは バレたなら仕方ないと、姿を見せることにした。
木々の向こうから…1人の男が姿を現す。それを見た男たちは一気に激昂しながら前に出てきた。
「ああ! だれだ? てめぇ!」
「俺らの後を、尾行けてたのかァ? ああ!!?」
「……」
主に激昂したのは、部下の2人だけであり、反対にリーダー格の男は後ろでじっと見ていた。
『いやなに… 温泉にゆっくりつかってたかったんだけど、そこに物騒な声が聞こえてきたもんでね、気になったから見にきて、後をつけただけだ』
ジャックは両手を広げながら、経緯を説明をした。バカ正直過ぎる、とは思う。でも、未知数なのはリーダー格だけの男のみであり、この前に出てきている男達は、申し訳ないが大したことないから。
所謂雑魚キャラと言うヤツだから。
(あの気配を感じれたのは、偶然だ……。風向きが変わったのにも幸いした。普通ならば気づかない…まったくな。……それだけで分かる…。 この男只者じゃない。まずは出方を……)
男は冷静に…対処しようと考えていたのだが。当然といえば当然。
「なめてんのかてめぇ!」
「ぶっ殺すぞ!!」
血の気が多い部下たちは黙っちゃいなかった。尾行されていた事を簡単にバラした事、そして見下している様な態度、それらの全てが癇に障ったのか、ジャックに掴みかかるように詰め寄ってきた。
(まったく……あいつら、マジで軽率すぎだ… だが 泳がせるか……。出方を探るって言うのに好都合だ)
リーダー格の男は、加わる事はせず、傍観に徹するのだった。
男達が迫る中で、ジャックはゆっくりとした動きで視線を動かした。
『ん… 俺は基本的に争いは好まんのだが……』
「なんだ? あ? 怖がってんのか? コラ!」
男の内の1人が、更に詰め寄り、胸ぐらを掴もうとしたが。
『……あんな幼気な女の子を乱暴するような輩を見逃すほど人でなしじゃないんでな』
男が掴みかかった手は空を切る。まるで、目の前からいなくなった様な感覚に見舞われてしまった。
そして、ドボッ!! と言う変な音、鈍い音が響いたか、と思った瞬間だ。腹部に言いようのない痛みが走った。 そして、ボキボキボキッ………と 何かが折れる様な音も。
「がッ はッ!!」
ジャックは、身体をコマの様に回しながら、回転。男の腕を躱し、遠心力を利用し、脇腹に回し蹴りを喰らわせたのだ。勿論、その衝撃をいなしたりする事は出来ず、まともに受けた男は。夜の闇へ吹き飛んでいった。
「て、! てめぇ!! よくも やりやがったな!!!」
もう1人の男は、完全に人間形態を解き、妖の姿となって襲い掛かった。
『…この姿は…。 半漁人……か? 山の中でご苦労な事だな』
男の正体を把握した。青っぽい姿に、鱗の様な肌、それらが示すのは、ジャックの言うとおり、半魚人だ。その妖の特性を考えたジャックは攻撃態勢に入った。
迫る右手の爪を、最短の動きで躱すと。 人差し指に魔力… 雷の力を集中させる。
『迸れよ……雷洸』
指先を密着させ… 纏わせた雷の力を解放した。
「ぎゃああああ!!!」
雷の力は、一瞬で男の体内の隅々まで走る。その雷撃は、体の内から焦がし……倒した。身体から、ブスブスブス~~っと、焦げて煙を上げながら倒れ伏す。
(……まあ、妖だし? これくらいじゃ死なんだろ。(多分だけど)……これだったら指先だけの魔力ですむ。自然界の力を使うのは少々…ってか、結構疲れるからな)
そして、焦げて倒れている男の体を蹴っ飛ばしてどかせると、最後の1人の男の方に向いた。そう、リーダー格の男の方に。
その男は…仲間がやられたにもかかわらず、不敵に笑っていた。
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