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炎の中の笑み

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第八章

「私はここから出るつもりはありません」
「何故ですか?」
「私は神に仕える者です」
 だからだというのだ。
「ですから」
「貴方が犯人だな」
 同行を拒むシスターにだ、役が問うた。
「そうだな」
「穢れを清めたことが」
「既に全てわかっている」
 役は既にその手に自身の拳銃を持っている、コートの前のポケットのところに入れてあるそれを握っている。
 何時でも抜ける、そうして身構えつつの言葉だった。
「誰を何時どうして殺したのをな」
「全てなのね」
「調べさせてもらった」
「だからもう逃げられないぜ」
 本郷は既に小柄を出している、何時でも投げられる様にしてそのうえでシスターに対してこう言ったのだ。
「言葉でもな」
「動きでも」
「そうさ、だから聞くぜ」
「私が何故穢れを清めたか」
「何で風俗嬢の人達を殺してきたんだ?」
「知れたことよ。彼女達は身体を売ってきているわ」
 悪びれずだ、シスターは答えた。
「それ自体がね」
「キリスト教だと罪だよな」
「そうよ、そしてこの町の教会にいると」
 歌舞伎町、ここにだ。
「風俗嬢が多いのよ」
「だからか」
「そう、それでね」
「懺悔を聞いてたんだな」
「告解のね。そこで彼女達が何故身体を売っているのかも聞いたわ」
 その全てをというのだ。
「そこでわかったのよ」
「風俗嬢の人達の心がかい?」
「全てね。誰もがお金、そして快楽の為にね」
「それを聞いたからかい」
「彼女達の穢れがわかったわ、そのおぞましいまでに浅ましい醜い心」
 それを知ったからこそというのだ。
「私は彼女達が憎くなった、それで」
「そのうえでか」
「殺していったのよ、幸い刃物を使うのは得意だから」
「ナイフやメスなりか」
「そうしたもので切っていたのよ」
 そして殺していったというのだ。
「そうだったのよ」
「そうか、全部わかったよ」
「それは何よりね」
「話は全て聞かせてもらいました」
 高篠もここで言った。
「それでは」
「私を逮捕すると」
「そのお話を取り調べ室でも話してもらいます」
 是非にというのだ。
「では」96
「言ったわね」
 シスターはその高篠に悪びれないまま返した。
「それなら」
「じゃあどうするつもりだい?」
 強い声でだ、本郷は身構えつつシスターに問うた。
「これから」
「知れたことよ、ここでね」
 シスターは懐からあるものを出した、それは。
 刃物ではなかった、それはライターだった。シスターはそのライターを出してからそのうえでこう言ったのだった。
「この礼拝堂はいつも奇麗にしていて」
「それでか」
「床にいつも油を塗っているわ」
「確かにな、滑りやすい感じだな」
「滑らない様にはしているけれどね」
 それでもだというのだ。 
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