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僕のサーヴァントは魔力が「EX」です。

作者:小狗丸
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屋上での会話

「まったく……。呆れて開いた口が塞がらないわよ。よりによって人が集まる食堂で、試合とは全然関係無いサーヴァント戦をしようだなんて」

 食堂から場所を代えて屋上。そこで凛は腕を組んで呆れ果てたといった表情で言う。……うん。僕でもそう思う。

「ごめん。本当に反省している」

「うん。すまなかった、凛」

「ごめんなさい~」

「うう……。すみませんでした」

 そんな凛の前で正座をして謝る僕に北斗、そしてアヴェンジャーとキャスターの四人。あの時凛が来てくれなかったら本当にサーヴァント戦が始まっていた為、彼女には頭が上がらなかった。

「はぁ……。もういいわ。それにしても二人とも、無事に一回戦を生き残れたみたいね」

 凛は一つため息を吐くとすぐに優しい笑みを僕達に向けてきた。その表情は皮肉でも何でもなく、純粋に僕達が生き残ったのを喜んでいるものだと分かった。

 そうだよな。凛ってば、口では色々言うけど根は優しいんだよな。

「それで青野君? 平和君じゃないけど一回戦を生き残ったにしては元気がないじゃない? ……もしかして間桐君を殺してしまったことを悔やんでいるの?」

「……!」

 凛の言葉に北斗が僅かに体を震わせる。

 ああ、それで北斗は元気がなかったのか。僕の場合は「強敵との戦いに生き残った」という安堵が勝って感じなかったけど、普通は相手を殺してしまった罪悪感を感じるものだろう。

「まあ、それもあるんですけど、ご主人様が元気がないのは、次の対戦相手のお爺ちゃんに言われたのが響いているんですよ」

 北斗のサーヴァント、キャスターが言うところによると彼の次の対戦相手は歴戦の戦士といった雰囲気を持つ老人で、そしてその老人に「戦う覇気を感じられない」とか「そんな感じでは生き残れない」とか言われたのだが、全く言い返せなかった上に気圧されてしまったらしい。

「随分キツいことを言う老人だな。なんていう名前の人なんだ?」

「ダン・ブラックモアって名前だったけど……」

「ダン・ブラックモア? ……もしかして『サー』ブラックモアか!?』

「ちょっと!? 超一流の軍人じゃない!?」

 思わぬところから聞いたビックネームに僕は思わず声を上げて、凛もまた表情を強張らせていた。

「え? え?」

 そしてそんな僕と凛をキョトンとした顔で見る北斗。……この反応から見るにコイツってばダン・ブラックモアを知らないんだろうな。

「……もしかして有名な人なのか?」

「やっぱり知らなかったか……。ああ、軍人としても霊子ハッカーとしても一流の、その筋では知らない者はいない有名人だよ」

 僕はそう前置きをすると北斗にダン・ブラックモアの知っている限りの情報を話した。

 ダン・ブラックモアは元は英国の軍人で、今は退役をしているが現役時代は優秀な狙撃手であり霊子ハッカーでもあったらしく、現実世界と電脳世界の両方で数多くの戦功を上げたダン・ブラックモアは軍人でありながら英国の女王陛下から騎士の称号である「サー」の称号を与えられたそうだ。

 特に狙撃手としての力量は凄まじく、現役の軍人であった頃は敵陣を匍匐前進で一キロ以上進み、たった一人で敵軍の指揮官を狙撃するなんてのは日常茶飯事だったとか。

 全くもってデタラメな経歴だと思う。一体どこのコードネームに十三がはいっている狙撃手だ。

「そ、そんな凄い人だったんだ。あの人……」

 僕の話を聞いてようやく相手の力量を理解した北斗が冷や汗を流し、凛が頷いてから口を開いた。

「そういうこと。強靭な精神力はそのまま強さにと繋がるわ。青野君、いくら貴方のサーヴァントの宝具が強力でも、それだけではダン・ブラックモアには勝てないわよ?」

「宝具? 何それ?」

「………………!」

 凛の言葉に北斗は本日二回目のキョトンとした顔をして、その隣では彼のサーヴァントであるキャスターが一瞬体を震わせて明後日の方に顔を向けた。

 ……え? 何? この反応?

「何それって、宝具よ。宝具。アーサー王のエクスカリバーのような、その英霊を象徴する武器や特殊能力。言わばサーヴァントの必殺技。青野君だってサーヴァントの宝具を使って間桐君に勝ったんでしょ?」

「いや……。俺は一回戦で宝具を使っていないよ。というより宝具って言葉も今初めて聞いた」

「そういうこと。キャスター、貴女わざと宝具の説明をしていなかったでしょ?」

「~~~♪」

 凛と北斗が話している途中でそれまで黙っていたアヴェンジャーが口を開き、その言葉にキャスターは口笛を吹くふりをして誤魔化そうとしていた。

「アヴェンジャー? どういうことだ?」

「どういうことも何も、今までの様子からキャスターのマスターは全くの戦いの素人なんでしょ? そんな素人に宝具のことを教えていたらどこで情報を漏らすか分からないから、このキャスターはわざとマスターに何も教えなかったってわけ。この分だと真名の方も教えていないんじゃない?」

 何てことはないといった風に説明をするアヴェンジャーの言葉はある意味納得できるものだった。確かにサーヴァントの情報の漏洩はこの聖杯戦争では致命的だが、最初から知らなければ漏れようもないからな。

 そして明後日の方を見たままでこちらを見ようとしないキャスターの様子から、アヴェンジャーの予想は当たっているのだろう。

「宝具も使わずに間桐君を倒したって……青野君、それは本当なの?」

「え? ああ、本当だけど?」

「……間桐君は戦いの素人だけど、ウィザードの才能は高くて、聖杯戦争の優勝候補の一角だったのよ? だから私はてっきり貴方のサーヴァントの宝具が強力で、それ頼みで倒したんだとばかり……。でも……そっか、ちょっと見直したわ。青野君」

「遠坂……?」

「「………」」

 凛は驚いた後で相手の力量を認める笑みを北斗に向けるのだが、僕とアヴェンジャーはこの時の二人を直視することができなかった。

 言えない……。実は宝具頼みで対戦相手を倒したのは僕達だったなんて、とても言えない……。

 一回戦のサーヴァントは正体が天使でそれしか勝つ方法がなかったんだけど、ここでそれを言ったら、色んな意味で負けなような気がする。

 この話題が僕達にふられない内に何とか別の話題にしなければと僕が考えていると……。

「そこの雑種共。一体誰の許しを得て我の特等席でさえずっておるか?」

 頭上からひどく高圧的な声が降ってきた。 
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