FAIRY TAIL 友と恋の奇跡
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第202話 妖精は再び―――――。
前書き
更新遅れすぎてスミマセンでしたァ!そしてお久しぶりです!紺碧の海でございま~す♪
FT友恋、今年初の更新でございます。
今回は妖精VS悪魔の本格的な戦いの始まりです!
ナレーション風に書いていきます。
それでは、第202話・・・スタート♪
―クロッカスの街 南側―
ガン!と鈍い音が辺りに響く。
キィン!と金属同士がぶつかり合う、無機質な音が辺りに響く。
エ「はァアアアアア!」
威勢の声を発しながら、エルザは妖刀・紅桜を目の前にいる敵―――――“極悪の悪魔”アンファミーの頭上に振り下ろした。妖刀・紅桜の白銀の刀身に映ったアンファミーの口元が弧を描いたのと同時に、刀身はアンファミーの指先の中にあった。
エ「くっ・・!」
エルザは刀を持つ両手に力を籠めるが、刀は悪魔の指先の中でピクリとも動かない。
アンファ「せぃヤァ!」
エ「うわァアアア!」
指先で弾く時のような手つきで、アンファミーはエルザを遥か彼方に弾き飛ばした。エルザのボロボロの身体は瓦礫の中に突っ込み、砂煙を巻き上げた。
悲鳴を上げる体の痛みに耐えながら、刀を杖代わりに立ち上がろうとするエルザの目に最初に映ったのは、固く握り締められた自分の身体よりも大きな悪魔の拳だった。
アンファ「せぃやァアアア!」
エ「ぐァアアアアアアアアアアアア!」
瓦礫に、地面に、悪魔の拳の下敷きになったエルザの身体がめり込む。バギ!ボギ!と鈍くて嫌な音が数回、同時にした。
アンファ「ハッハッハッハッハーッ!どーやら何箇所か骨が折れたようだね。これでアンタはもう動けないよっ。大人しく、奈落のどん底に堕ちちまいなァ!」
口から鋭利な刃物のような牙と、濃い紫色をした長い舌を覗かせながらアンファミーは狂ったように、高らかに叫んだ。
アンファミーが言うとおり、エルザは左腕と右足の骨を折っていた。あんな拳をまともに食らったというのに、これだけで済んだのは奇跡、とも言えるだろう。それでも動く事はもちろん、その場に立ち上がる事も出来ない。
エ「・・・くっ!・・・っぁあ!」
身体がもう限度を超えていた。じっとしててもエルザの身体は悲鳴を上げっぱなしだった。
アンファ「“妖精は悪魔には勝てない!”その事を肝に銘じるんだよ!」
エルザの身体をすっぽり包み込むように、アンファミーの巨大な足の黒い影が地面に映る。
エ「(ここまでか・・・!)」
覚悟を決めたエルザは右手に妖刀・紅桜の柄をしっかりと握り、ギュッ!と目を固く閉じた。
アンファ「死ねェエエエエエエエエエエエエエエエ!」
黒い影はどんどんエルザのボロボロの身体に迫り、どんどん大きくなり、エルザの頭上スレスレの位置まで届いた―――――その時だった。
「流星!」
―――――刹那、淡々とした、だがよく通る声が聞こえた。それと同時に、
アンファ「ぐあっ!」
アンファミーが顔を歪ませながらバランスを崩し、エルザを踏み潰そうとしていた足は狙いから大きく外れてしまった。
アンファ「どこの誰だいっ!?妖精を奈落におとそうとし―――――!・・・こ、これは!?」
キーキーと甲高い声で喚きながら邪魔した人間を探す暇はアンファミーには無かった。
なぜなら、いつの間にかアンファミーを取り囲むように、空中に7つの巨大な金色の立体魔法陣が描かれていたからだ。
「立体魔法陣!?いつの間に、誰がっ!?」
アンファミーは慌てて辺りを見回すが時既に遅し。
「七つの星に裁かれよ。」
7つの立体魔法陣が一斉に光り出した。
「七星剣!!!」
「ギィイィヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
魔法陣から一斉に放たれた7つの金色の光の筋が、一斉にアンファミーの身体を容赦なく貫いた。地面を震わすほどのバカデカい悲鳴が轟く。
エ「・・・・・」
今までの光景を黙って見ていたエルザの目は大きく見開かれ、開かれた口からは言葉を失っていた。
そして、アンファミーに強烈な攻撃を食らわせた七星剣―――――天体魔法を使う人物をエルザはよく知っていた。不意に、脳裏にその人物の顔が過った。
エ「(近くにいるのか!?)」
エルザは辺りを見回そうとした、その時だった。
『立て、エルザ。』
エ「!」
頭の中で淡々とした、だがよく通る声が響いた。
『お前は、今まで何度も転んできた。だがお前は、その度に立ち上がる強さも持っている。立ち上がらせてくれる仲間も、お前には存在する。その仲間の為にも立ち上がるんだ。』
自然と、エルザの口元には笑みが浮かんでいた。
『俺が手を差し伸べられるのはこれっきりだ。だが、お前ならもう、1人で立ち上がれる。“光”が“闇”を打ち消す事を、ただ祈っている―――――。』
エ「・・・あぁ。」
声が途切れた。
エルザは慎重に左足を曲げ口元に近づけると、晒しの裾を口と右手を上手く使って引き裂いた。そして周りにあった手頃な瓦礫を掴むと、折れた左腕と右足を引き裂いた晒しで固定した。
刀を杖代わりにし、歯を食い縛りながらエルザは立ち上がった。その強さで―――――。
アンファ「妖精を奈落におとせなかっただけでも屈辱だってのに、どこかの馬鹿者に盛大にやられるわ、妖精は立ち上がっちゃうわ・・・今日のアタイは恵まれていないみたいだねぇ・・・」
不吉な色をした体に多少の傷を刻んだアンファミーは苦虫を潰したような顔をしていた。その傷からは少量だが、青黒い血が流れ出ていた。
エ「あの攻撃を食らって・・・よくまともに立っていられるな。」
アンファ「そんな傷だらけ血だらけのボロボロの体をしたアンタに言われたって意味無いね。どこにそんな力が残っているかは知らないけどね、その根気だけは素直に認めてあげようじゃないの。で~も~、今度こそ奈落に突き落としてやるからね~?」
皮肉をたっぷり交えながらアンファミーは不気味に笑った。
アンファ「アタイは往生際が悪い奴は嫌いなんだ。さっさと諦めて奈落に堕ちた方がうんっと楽だよ?」
アンファミーの言葉に、エルザの耳がピクッと反応した。そしてエルザの口元に薄い笑みが浮かんだ。
エ「「諦めろ」・・・だと?笑わせるな。愚者が言う言葉を容易く口にするほど、私は軟弱ではない。この身体が動かなくなるまで・・・いや、消えて無くなるまで私は立ち上がる!そして貴様に刀を振るい続ける!」
言い終わる前に、エルザは妖刀・紅桜を構え、地を思いっきり蹴り駆け出した。対峙するように、アンファミーも地を蹴り駆け出した。
アンファ「お望みどおり、その自尊心と一緒にアタイがアンタを奈落のどん底に突き落としてやるよっ!」
エ「奈落に堕ちるくらいなら・・・貴様をこの手で!この刀で!この力で!葬り去ってから堕ちてやるっ!」
地に堕ちたはずの妖精が、“闇”を滅する為に再び刀を振りかざす―――――。
―クロッカスの街 西側―
よろよろと立ち上がりながら、トーヤは目の前にいる敵―――――“絶望の悪魔”ディスペアを赤い瞳で睨み付ける。だが、ディスペアは動じる事も怯む事も無く、口元に不敵な笑みを浮かべながら見下すような目付きでトーヤを見据えていた。
トーヤは右手に黒い邪気の渦を纏った。
ディス「これはこれは。先程言ったように、わしはお主の魔力を3分の1ほど吸い取ってやったんじゃ。にも拘らず、お主は魔力を使って邪気を纏うとは・・・自ら奈落に飛び込むような行為じゃぞ?」
ト「そんな些細な事をわざわざ気にしていたら埒が明きません。まずは全身全霊であなたを倒す事を第一に考える事が大事です。」
ディス「これはこれは・・・もし魔力切れになってしまったら、どうするんじゃ?お主等魔道士という存在は、その魔力は命と同じようなものと聞いておるんじゃが?」
ト「その時は、根気で戦うまでです。それにお忘れになられたんですか?僕は半幽人・・・既に死んでいるのと同然ですよ?」
ディス「これはこれは・・・お主に一本とられましたわい。」
ト「一本とってさしあげました。」
バトル中だという事を忘れているのか、人間と悪魔が交わすような会話で無い事を2人は話し続けている。いや、そもそも死んだ者と悪魔が話せること事態ありえない話なのだが、そこは敢えて目を瞑っておこう。
ディス「おっと、これはこれは。少々無駄話に花を咲かせてしまったようじゃな。」
ト「そのようですね。では早速・・・」
前置きをした後、トーヤは邪気の渦を纏った右手を右斜め上から左斜め下に薙ぎ払うように振った。
ト「邪気螺旋風ッ!」
黒い邪気の風が、螺旋を描きながらすごい勢いでディスペアに襲い掛かる。が、ディスペアは右手を固く握り締めると、その拳を風の中に突っ込み反動で跳ね返した。
ト「!?」
思いもしなかった事態にトーヤは反応に遅れたが、その場で地面を強く蹴り空中に避難した。
ディス「絶拳!」
ト「うぐぁ!」
空中に避難したのはいいが、その直後に固く握り締められたディスペアの巨大な拳がトーヤの小さな身体に直撃した。真下から食らったので、トーヤの身体は空気抵抗も無しに空高く浮き上がる。
すぐさまディスペアが追いつき、今度は頭上で組んだ両手をトーヤの身体に叩きつけた。
ディス「うぉらァアアア!」
ト「ぐァアアアアアアアアアアアア!」
叩きつけられたトーヤの身体はものすごい速さで落下し、ものすごい勢いで地面に叩きつけられた。叩きつけられた反動で、地面がへこんだ且つ亀裂が入った。
ディス「これはこれは。少々やりすぎてしまいましたかのぉ?」
地面に降り立ちながら、ディスペアは嫌らしい口調でトーヤに語りかける。
ト「・・・ぅ・・・・ぅぐ・・・!」
ディス「ほぉ、これはこれは。まだ奈落に堕ちるのを免れただけでも大したものだわい。じゃが、身体にはかなり堪えたじゃろうな。」
ディスペアの言うとおり、トーヤは激しく咳き込みその度に口から赤黒い血を吐き出していた。地面に叩きつけられた衝撃で、角が1本折れてしまっていた。
ディスペアがまた、トーヤを見下すような目つきになった。
ディス「やはり、こんな小童相手にしても身体が温まりもしないわい。さっさと奈落に突き落として、次の獲物を探しに行くとするかのぉ。」
その言葉に、トーヤの耳がピクッと反応した事にディスペアは気づかず、左足にドス黒い紫色の魔力を纏った。
ディス「絶破粉砕!」
魔力を纏った左足でトーヤの身体を思いっきり踏み潰した。砂煙が舞い上がる。
ディス「これで半幽人は奈落に堕ち―――――ん?」
「堕ちたわい」と言おうとしたディスペアは首を傾げた。
ディス「(手応えが無い、じゃと・・・?)」
確かにディスペアは左足でトーヤの身体を踏み潰した。だが、その踏み潰した時の手応えが一切無いのだ。
まさか、と不安を覚えながら恐る恐るディスペアは足を退ける。そのまさかが的中した。踏み潰してぺちゃんこになっているはずのトーヤが、地面にもディスペアの足の裏にもいないのだ。影も形すら残っていなかった。
さすがのディスペアもこれには戸惑いを隠さずにはいられなかった。
ディス「い、いったい・・・どうなっておるんぐォア!?」
「どうなっておるんじゃ・・・?」と言おうとしたディスペアの後頭部を強い衝撃が食らった。
ト「確かに僕は、ナツさん達と比較したら魔力も体力も能力も十分衰えています。ですが―――――」
声が聞こえ後ろを振り返ると、固く握り締められた右手に黒い炎を纏ったトーヤが空中に佇んでいた。下を向いていて顔がよく見えないが、その声色が殺気立っている事にディスペアはすぐに気づき、思わず喉がゴクリと大きな音を立てて鳴った。
ト「僕も、妖精の尻尾の魔道士です。あなたを倒す力は十分持っています。」
顔を上げたトーヤの赤い瞳には、熱意と殺気が宿り揺らいでいた。
頭から流れ出た血でトーヤの顔の左半分が血塗れになっており、揺らいでいる殺気を更に不気味に思わせた。
左手を顔の前に掲げ青い炎を纏うと、
ト「外見だけで全てを判断するのは浅はかです。程度が知れます。」
空中に黒と青の火の玉を出現させ、ディスペアに向かって一斉に放った。
ディス「ぐァアアアアア!」
轟々と燃え盛る“魂の炎”と“妖の炎”の中でディスペアは呻く。
ト「漆黒の“魂の炎”と青藍の“妖の炎”は、地獄の業火よりも激しく燃え盛りその身を全て焼き尽くす事が出来ます。例えその身が、悪魔だとしても―――――。」
殺気立ったトーヤの声が耳鳴りのように響くのをディスペアは感じた。
ディス「ぐっ・・・!絶覇道!」
眉間に深く皺を刻んだディスペアは、黒い覇道を身体から放出し“魂の炎”と“妖の炎”を吹き飛ばした。
ディス「・・・お主を見下していた事は素直に謝るわい。じゃが、お主の2度目の攻撃を食らう前に奈落のどん底に突き落としてやるわい。お主に、最大の絶望を―――――。」
ト「絶望に落ちるのはあなたの方です。僕は“希望”を夢見ます。そして僕を・・・いいえ、妖精の尻尾を敵にまわした事をあなたは一生後悔するでしょう。劫火の中で―――――。」
か弱かったはずの妖精が、“希望”に向かって再び飛び立つ―――――。
―クロッカスの街 北側―
ル「開け!魔喝宮の扉・・・カプリコーン!」
スロ「うげっ!」
姿を現したのは、燕尾服にサングラスという出で立ちの星霊―――――カプリコーン。
カプリコーンは召喚されたのと同時に“恨みの悪魔”スロークの後頭部を目にも止まらぬ速さで肘で殴りつけた。ほんの一瞬の隙を突かれたスロークは呻く。
ル「流石ね、カプリコーン。」
カプ「ルーシィ様、この化け物はいったいなんでございましょうか?おまけに街がすごい事に・・・」
今までの大規模な大事件の経緯を一切知らないカプリコーンは主であるルーシィを庇うように前に立ち、戦闘体勢を維持したまま問い掛けた。
ル「うーん、話せばものすごく長くなるんだけど。とにかく、アイツは確か・・・“料理の悪魔”の・・・ステーキとか言ったかしら?」
スロ「“恨みの悪魔”スロークだいっ!全然違う名前になてるじゃないかーっ!」
噛みつくような勢いでスロークは訂正をする。
スロ「ていうか「化け物」って言ったけど、そこのよく分からない奴だって「化け物」みたいじゃないかーっ!」
持っていた包丁の刃先を、そのよく分からない「化け物」に向けた。
カプ「私はルーシィ様の星霊、カプリコーンでございます。」
カプリコーンは「化け物」扱いされたにも拘らず、恭しく一礼をした。
カプ「それと・・・」
カプリコーンのサングラスが月明かりに反射してキラリ、と光ったのと同時にカプリコーンの姿はルーシィの前から消え失せていた。
カプリコーンは光のような速さでスロークの前に迫り足でスロークの右手を蹴り飛ばした。蹴り飛ばされたのと同時に、スロークの右手から放れた包丁はくるくると空中で弧を描きながらザクッ!と遥か彼方の地面に突き刺さった。
カプ「刃物をルーシィ様に向けるとは、礼儀に反する故に・・・私に喧嘩を売った、という解釈でよろしいでございましょうか?」
スロ「!ぐほぉっ!ガハッ!」
避ける暇もなかった。
高々と上げたカプリコーンの左足が前に突き出たスロークのお腹と二重顎を蹴り飛ばした。顎を蹴り飛ばした反動でスロークの口から折れた歯が1本飛び出す。
カプ「売られた喧嘩を、私は倍の値段でお買い上げ致しましょう。」
その言葉どおり、カプリコーンは高く買った。
ル「す、すごい・・・!」
その強さに、主であるルーシィさえ感嘆の声を漏らした。
ル「カプリコーン!その調子でアイツをやっつけちゃって!」
カプ「承知致しました。」
主であるルーシィの指示に従う前に、カプリコーンはわざわざルーシィの方に向き直り一礼した後、スロークに向かって一直線に駆け出した。
よろよろと立ち上がりながら、スロークは自分の方に向かって駆けて来る敵をドス黒い緑色をした2つの目で睨み付ける。
スロ「こんなところで・・・終わってたまるかァアアアアア!」
空に向かって一声叫んだ後、スロークは背中に背負っている赤黒い風呂敷から包丁を取り出しカプリコーンに投げつけた。
カプリコーンはそんな物に怯む事無く、手で弾き飛ばした。弾き飛ばされた包丁はくるくると弧を描きながらガッ!と鈍い音を立てて瓦礫に突き刺さった。
――――――だが、それで終わりではなかった。
スロ「うおぉぉおおおおおおおおおおっ!」
カプ「!?」
スロークは次から次へと風呂敷から何本もの包丁を取り出しカプリコーンに投げ続ける。
ル「あ、あんなに・・入ってたの・・・?」
包丁のあまりの多さにルーシィは震え上がり驚嘆の声を上げた。
最初は驚いていたカプリコーンだが、持ち前の冷静さをすぐに取り戻し、飛んで来る包丁を1本1本素早い動きでかわしていく。
カプ「っ・・!」
上手くかわしていたつもりだが、1本の包丁の刃先がカプリコーンの頬を掠め血が流れ出た。
スロ「おらァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
それがまるで合図だったかのように、包丁の数が更に増え、投げる速さが増し、必死にかわし続けるカプリコーンの腕、腰、膝を切りつけた。
カプ「くっ・・!」
痛みに顔を歪ませながらも、カプリコーンはスロークの目の前まで迫り固く握り締めた拳に渾身の力を籠め振るった―――――が、その拳は悪魔の身体に届く前に、空中で止まってしまった。
カプ「ぬっ!?」
スロ「イエ~イ♪これでお前は、もうそこから1歩も動けないよ~♪」
不敵な笑みを浮かべながらスロークは嫌味っぽく、勝ち誇ったように言った。動けなくなったカプリコーンの足元には、赤黒い魔法陣が浮かび上がっていた。
ル「あの魔法陣は・・・!」
スロ「相手の動き、能力を封じる事が出来るのさっ♪」
動きを封じられたカプリコーンの横を通り過ぎ、スロークはじりじりとルーシィに迫って行く。
ルーシィは魔喝宮の金色の鍵を取り出すと、
ル「戻ってカプリコーン!」
カプリコーンを星霊界に帰らせた―――――が、金色に光り出すはずの鍵は光らず、カプリコーンも星霊界に帰っていない。
ル「え?ウソ・・・どうして・・・?」
スロ「アイツの動き、能力を封じているんだ。その星霊界っていう所に帰れないのは能力を封じているからさ。」
ル「そんな・・・!」
戸惑うルーシィにスロークは不敵な笑みを浮かばせながら言った。そしてスロークは風呂敷から包丁を2本取り出すと、それを両手に持ち更にルーシィに迫って行く。ルーシィはそれに対抗するかのように星の大河を構えた。
カプ「ルーシィ様!私以外の星霊を召喚して下さい!」
動けない身体でカプリコーンは拳を振ろうとする体勢のまま、主に向かって叫んだ。
ル「他の星霊を呼んでも、またアイツに動きと能力を封じられるだけ!それなら私が・・・コイツを倒すっ!」
そう言うと、ルーシィは星の大河を大きく振るった。が、スロークに包丁の背で受け止められた。
スロ「その心意義はすごく良いと思うよ~♪だけど、俺が奈落におとしてやったらその心意義も水の泡なんだけどね。」
月明かりに照らされ、包丁の刃がギラリと不気味に光った。
スロ「でも、奈落に落とす前に・・・俺が美味しく調理してあげるから♪」
ル「結局それが優先なのかいっ!」
場違いなスロークの言葉にルーシィは透かさずツッコミを入れた。
スロ「えりゃァア!」
ル「キャア!」
カプ「ルーシィ様!」
刃を下にして、スロークはルーシィの頭上に包丁を真っ直ぐ振り下ろした。小さく悲鳴を上げながらルーシィは何とか避けた。狙いを外した包丁は地面に突き刺さる。
地面から包丁を抜き取ると、土で汚れた刃をスロークは青紫色をした長い舌で、刃で舌を切らないように舐めた。それを見たルーシィは思わず顔を背ける。
スロ「逃げないでよ。焼くなり煮るなり揚げるなり蒸すなり、ちゃんと美味しくしてあげるからさ~♪」
ル「さっきも言ったけどどれもヤダし、私絶対美味しくないし、それ以前に絶対に食べれヒャア!」
「食べれないから!」と言おうとしたルーシィの頭上にスロークはまた包丁を真っ直ぐ振り下ろした。ルーシィは何とか避けるが、足を滑らせて盛大にこけ、地面に頭と腰を強く打ちつけた。
ル「いったぁ~・・・わっ!」
顔面目掛けて包丁が振り下ろされ、間一髪のところで首を左に動かして回避した。
スロ「えい!えい!えい!えい!」
ル「ちょっ・・!うわっ!い゛っ!ギャア!」
両手に持った2本の包丁を交互に動かしながらルーシィの顔面目掛けて振り下ろす。包丁が振り下ろされるのと同時に、ルーシィは地面の上をゴロゴロゴロゴロと転がりながらかわしていく。
ゴロゴロゴロゴロと転がっていくうちに、進む方向が瓦礫で塞がれていた。
背後には包丁を持った悪魔、目の前は瓦礫で行き止まり・・・起き上がって逃げてたらその間にやられてしまう。
ルーシィは断崖絶壁に立たされた―――――!
スロ「これで・・・終わりだァアアアアアアアアアアアアアアア!」
狂ったように叫びながら、スロークが包丁を振り下ろす。
ル「(もう、ダメだ・・・・・!)」
目尻に涙を浮かばせながら、ルーシィはギュッ!と固く目を瞑った。
スロ「ぐひゃぁあ!」
悪魔のなんとも情けない声が聞こえた。そして、いつまで経っても包丁を振り下ろされない。ルーシィは恐る恐る目を開けると、目の前の光景に目を見開いた。
ル「ロキ!カプリコーン!」
そこにいたのは、獅子の鬣のように逆立った髪に青いレンズのサングラスに黒いスーツ姿をした星霊―――――獅子宮のロキと、身動きを封じられていたはずのカプリコーンだった。
ロキは固く握り締めた右手を、カプリコーンは固く握り締めた左手の間には、左右から頬を殴られたスロークの顔があった。
ロキ「大丈夫だったかい、ルーシィ?」
カプ「怪我はございませんか?」
ル「大丈夫。ありがと、2人とも。」
ロキが差し伸べてくれた手をとり立ち上がる。
ロキは星霊界と人間界を繋ぐ入り口―――――門を自由に通る事が出来る為、ルーシィの身に危険が迫ったら、こうして勝手に出てくる事が出来るのだ。今回もそれだろう。
カプ「申し訳ございませんルーシィ様。少々、あの魔法陣を破壊するのに予想以上の時間が掛かってしまいまして、援護に向かうのに遅れてしまいました。」
ル「破壊したの!?」
スロ「そ、んな・・・バカ・・な・・・」
さらっ、とすごい事を口にしたカプリコーンの言葉にルーシィは驚嘆の声を上げ、スロークは目を見開いた。
ロキ「で、どうするルーシィ?」
ロキの問いの意味は聞かなくても分かっていた。ルーシィは口元に笑みを浮かべると、星の大河を構え直した。
ル「もちろん!コイツを倒すまでが勝負よっ!」
星々に加護されし永久に輝き続ける妖精が、再び新たな眩い輝きを放つ―――――。
後書き
第202話終了~♪
無事書き終える事が出来ました!・・・久々の更新でしたので誤字などがありましたら遠慮なく報告して下さると幸いです。
そして読者の皆様には本当にご迷惑をお掛けしました。スミマセン・・・
ですが、私の中学校の3学年夏の3大イベント(修学旅行、中間テスト、陸上競技大会)がようやく終わり、もうすぐで夏休みに入るので、挽回したいと思います!ですが、相変わらずの更新速度亀以下の私ですが、温かい目でFT友恋共々応援して下さればとても感激です!
次回も妖精VS悪魔の戦いを書いていきたいと思います。
それでは、また次回でお会い致しましょう~♪・・・次回、ちゃんと書けるよな私!?
ページ上へ戻る