FAIRY TAIL 友と恋の奇跡
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第201話 藍色の妖精と桜色の妖精と夕日色の妖精
前書き
紺碧の海です☆
今回も前回と似たような内容で、10頭の悪魔の紹介みたいなお話です。ですが今回でやっと最後です・・・!
ナレーション風に書いていきます
それでは、第201話・・・スタート☆
―クロッカスの街 北側―
ドガァン!ゴオォン!ガコォオン!という鈍くて大きな破壊音が響き渡る、瓦礫化とした夜のクロッカスの街。
街を無残な姿に変えてゆくのは、突如姿を現した悪魔が持つ鎖に付いた赤黒い巨大な鉄球。砲丸の10倍もある大きさの鉄球を悪魔は軽々と振り回し街を破壊していく。悪魔が振り回す巨大な鉄球により、建物が次々と破壊され、木々が倒され、地面に亀裂が入り、花々が儚く散り行く。
ハマ「これ以上!街を破壊するのはお止め下さい!花弁の弾丸!」
ツツ「ナックルプラント!」
幸福の花の魔道士、ハマナスが鋼鉄のように硬い花弁の弾丸を悪魔に向かって放ち、ツツジが地面に投げた秘種が急成長して育った拳の形をした蔦が悪魔に殴り掛かる―――が、2人の攻撃は悪魔には痛くも痒くもないらしい。
リキ「アイアンメイク、槍騎兵ッ!!」
カリ「クリスタルメイク、鷲ッ!!」
月の涙の魔道士、リキとカリンが鉄の槍と硝子の鷲を悪魔に向かって同時に放つが、この2人の攻撃も悪魔には痛くも痒くもないらしい。
バッ「ヒッ・・ク、おぅおぅおぅ・・なかなかやるじゃねーか、あの化けモン・・・うぃ。」
トビ「って、いつまで酒飲んでんだよーっ!」
ユウ「戦えない俺等がそれ言っても意味ねェだろ・・・」
地面に胡座を掻いて酒を飲んでいる四つ首の猟犬の魔道士、バッカスに蛇姫の鱗の魔道士、トビーがキレながらツッコミを入れ更にユウカもトビーにツッコミを入れる。
なぜトビーとユウカが戦えないのかと言うと、トビーの魔法は近距離専門なのだが、巨大な鉄球を振り回している悪魔には敵う訳が無く、ユウカの波動も、鉄球は魔法ではないので消し去る事が出来ず無意味に等しいからだ。酷く言えば、2人はこの場で役立たずという事だ。
バッ「ぷはぁ。役立たずは黙って見てろ・・ヒッ。」
トビ「うっ・・!」
ユウ「・・・・・」
酒を飲み終えたバッカスがふらふらぁ~と立ち上がりながら言う。その言葉にトビーは内心傷つき、ユウカは何も言えずに黙っていた。
バッカスは赤みを帯びた顔をニヤつかせ、その場で妙なポーズを構えると、
バッ「うォらァア!」
巨大な一撃を悪魔の腹部に食らわせた。
さすがの悪魔でも、バッカスの一撃は効いたみたいで足元がふらついた。
バッ「へへっ、どーんなもん・・・ぐハァ!」
ツツ「バッカス様!?」
カリ「キャーーーーーーーー!」
バッカスが油断したほんの一瞬の隙を突いて、悪魔は巨大な鉄球をバッカスの背中に命中させた。
鉄球の反動と重さで遠くまで吹っ飛ばされたバッカスはそのまま気絶。
悪魔9「我輩にちょっとダメージを加えただけで、調子に乗りすぎてこんな攻撃も避けきれぬとは・・・情けすぎて涙が出る。」
悪魔は涙を拭う振りをした。あくまでも振りだという事をお忘れなく。
悪魔9「貴様等はあの男のようにすぐ調子に乗るようなバカではないはずだと信じよう。さぁ、正々堂々と掛かって来い。そして地獄に突き落としてやろう。」
静かな声で、だが迫力のある声で悪魔は鉄球を構えながら言葉を紡いだ。
ハマナス達もその場で身構えた、その時だった。
ウェ「皆さぁ~ん!」
この場の雰囲気とはかけ離れた声が遠くの方から聞こえた。
ハマナス達はもちろん、悪魔も声の主を探す為辺りを見回す。が、声の主はドコにもいない。
リキ「・・・気のせいか?」
ハマ「確かに聞こえたと思ったんですけど・・・」
声の主には心残りがあるが、ハマナス達は再びその場で身構え悪魔と向かい合った、その時だった。
ウェ「皆さぁ~ん!上です!上~!」
今度こそハッキリと鮮明に聞こえた。
「上」という声の主の言うとおり、ハマナス達はもちろん、悪魔も揃って上を見上げた。そこにいたのは、背中に黒い羽が生えた、藍色の髪の毛をした妖精が1人―――――。
カリ「ウェンディさん!?」
リキ「そ・・空、から・・・?」
トビ「いったいどうなってんだよーっ!?」
ユウ「キレんなよ。」
カリンとリキが驚嘆の声を上げ、なぜかキレているトビーにユウカがツッコミを入れる。
驚いている彼等の事をスルーして、ウェンディは黒い羽を羽ばたかせながら地面に降り立った。
ウェ「ありがとうございます、てんぐさん。」
ウェンディの背中から生えていると思われていた黒い羽の正体は、トーヤが一番最初に契約を交わした妖怪―――てんぐだったのだ。
そしてよく見ると、ウェンディの腕の中に赤い着物を来た小さな女の子―――座敷わらしが抱えられていた。
ウェ「怖くなかった?ざしきわらし?」
座「うん!うち、ぜーんぜん怖くなかったよ。」
怖い、というよりむしろ楽しかったという感じで座敷わらしはウェンディの腕から飛び降りた。
ツツ「ウェンディさん、なぜあなたがここに?」
ツツジが白髪のツインテールを揺らしながらウェンディに問うたが、答えたのはなぜか座敷わらしだった。
座「あのねあのね、トーヤに言われたの。他の悪魔と戦ってる人間を安全な場所まで避難させろって。」
て「こらこら。」
勝手に口を開く座敷わらしの事をてんぐが抱き抱える。
ウェ「私もここに来る途中この2人と会ったからここまで一緒に来たという訳です。」
ハマ「・・・飛んで、ですか?」
ウェ「はい。」
妖怪、という存在を初めて目にするハマナス、ツツジ、リキ、カリン、トビー、ユウカはまじまじとてんぐと座敷わらしを交互に見つめる。てんぐは緊張気味だが、座敷わらしはこんなに大勢の人間を見た事が無いらしく、違う意味でハマナス達の事を交互に見つめていた。
カリ「1人で大丈夫ですか?」
カリンが心底不安そうに問うと、ウェンディは困ったような笑みを浮かべた。
ウェ「・・・正直言うと、すごく怖いです。でも、違う場所で妖精の尻尾の皆さんが戦っているんです!私だけ逃げたら、情けないし、街も命も平和も守れませんから。だから、皆さんはてんぐさんと座敷わらしと一緒に、一刻も早くこの場から離れて安全な場所まで非難して下さい!お願いします!」
ハマナス達は目を見開いた。
こんな小さな少女のドコに、そんな強い想いがあるのだろう?そして、自分達はなんて情けないのだろうと―――――。
リキ「・・・ここは、ウェンディさんに任せた方が良いと思う。」
ウェ「!」
ツツ「確か、ウェンディ様の魔法は天空の滅竜魔法。“滅”だから、悪魔も簡単に滅する事が出来るかもしれませんからね。」
ユウ「本来滅するのは“竜”だけどな。」
カリ「細かい事は気にしない気にしない。」
トビ「気にしろよっ!」
ハマ「それに、私達の魔法はあの悪魔には痛くも痒くもないみたいですし、バッカスさんもあの様子じゃ、何の力にもなりませんからね。」
ウェンディはハマナスの言葉でバッカスが伸びている事を初めて知った。
ハマ「ウェンディさん、後はお任せしますね。」
ウェ「はい!皆さんもどうか気をつけて。」
ハマナス達はてんぐと座敷わらしに連れられてこの場を去っていった。座敷わらしがツツジのお腹を気に入ってしまった為、ずーっとツツジのお腹に抱き着いていたのは余談だ。
ウェンディはハマナス達の姿が完全に見えなくなったのを確認し、視線を悪魔に移した。悪魔は口を一文字に固く結び、巨大な鉄球を構えたままウェンディの事を黙って見つめていた。
悪魔9「・・・先に言っておくが、我輩達悪魔は、貴様等人間が倒せるような存在ではない。」
まだウェンディは一度も悪魔に攻撃をしていない。それなのに、鉄球を持つ悪魔は既に勝利を確信している。
ウェンディは両手を固く握り締めた。
ウェ「いいえ、どんな手を使ってでも、何が何でも必ず勝ちます!」
握り締めた拳を開くのと同時に、ウェンディは両手に風を纏い腕を横に大きく広げた。
ウェ「私があなたを倒さなければ、この街も、多くの命も、平和も、私の大切な人達も、全て消えちゃうから・・・だから!私が動けなくなるまで・・・いいえ、命が尽きるまで足掻きます!私は必ず、あなたを倒します!」
ウェンディと悪魔は、しばらくお互いの視線から目を離さなかった。
すると、悪魔の口元に薄く笑みが浮かんだ。
悪魔9「我輩は人間ではないが・・・貴様のその勇敢さは素直に認めよう。そして、その勇敢さに我輩も応えてやろう。我輩の命か貴様の命、どちらかの命が尽き、地獄に堕ちるまで、この場からは離れぬと約束しよう。」
悪魔の言葉にウェンディは目を見開いたが、すぐに頷いて見せた。
お互い、その場に身構え戦闘体勢を取る。
エア「我輩の名は“野望の悪魔”エアガイツ。貴様は?」
ウェ「魔道士ギルド、妖精の尻尾の魔道士―――ウェンディ・マーベルです。」
エア「ウェンディ・マーベル・・・良い名だ。」
“野望の悪魔”エアガイツが短く呟き終わったのとほぼ同時に、2人は小さく地を蹴り駆け出した。
今、勇敢なる、傷だらけの藍色の妖精が、“野望の悪魔”に立ち向かう―――――。
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―クロッカスの街 東側―
この戦いは、いったい何時まで続くのだろう―――――・・・?
仲間は皆、無事だろうか―――――・・・?
今はいったい、何時だろう―――――・・・?
そんな小さくもあれば大きくもある疑問が脳裏を過ってしまうほど時はいつの間にやら随分と経っていた。
“クロッカス”という名があるこの街は、既に“街”という面影を失くしてしまっている。“建物”と呼べる建造物も、“木”や“草”と呼べる植物までも、その面影を失くしてしまっている。酷い所では、更地になってしまっている場所まである。
そんな面影が全て消え失せてしまったクロッカスの街中をナツは歩いていた。ナツの背中にはマヤがすっぽりとその大きな背中に納まって背負われていた。
マ「・・ね、ねぇナツ・・・もう下ろしても大丈夫だよ?ナツももう疲れて」
ナ「なんかねーよ。」
マ「答えるの速ッ!」
「疲れているんじゃ・・・?」と言おうとしたマヤの言葉を最後まで聞かずに遮るようにナツは口を開いた。もちろん、その言葉どおりマヤの事は下ろさない。
マ「・・・あーもう!さっきも言ったけど私これでももう18歳なんだよォ!?恥ずかしいし重いし、だから早く下ろ」
ナ「やだね。」
マ「だから答えるの速い!」
「下ろして」と言おうとしたマヤの言葉を、再び最後まで聞かずに遮るように否定の言葉をナツは口にした。
ナ「あのなー、お前ホントに18歳なのか?って俺が変に思うくらいお前軽すぎ。」
マヤが必要以上に体重が軽い理由の約9割が、18歳にしては小柄な体型だからだろう。その事に気づかないのもまたナツらしいっちゃ、ナツらしいのである。
ナ「それに、誰かが見てる訳でもねェのにそんなに恥ずかしがる事ねーだろ?誰かいたら、すぐに下ろしてやるからよ。」
口ではそう言いつつも、内心では「誰も来るな、誰も来るな」と必死に願うのは、ナツの本心だという事はお見通しである。
だが、そんなナツの本心を見抜いてくれない意地悪な神様は、ナツの本心とは真逆の現状を見せてしまう。
隊1「うわぁっ!」
隊2「ヒィ~!だ、誰か~!」
悲鳴が聞こえた。どうやらすぐ近くに、突如姿を現した悪魔と、その悪魔と対峙している魔法部隊の者達がいるらしい。
マ「ほ、ほらナツ!人が近くにいるから下ろして!」
ナ「・・・しゃーねェな。」
マ「?」
不貞腐れるように唇を尖がらせるナツを見てマヤはこてっと首を傾げた。
マヤを地面に下ろすと、ナツはすぐにマヤの左手首をガシッ!と力強く掴んだ。
マ「ふぇ?」
ナ「行くぞーーーっ!」
マヤの返事を聞かずに、ナツはマヤの左手首を掴んだまま悲鳴が聞こえた方に向かって走り出した。マヤも引き摺られるようにナツの歩幅に合わせて走り出した。
悪魔10「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
夜になってから何度も聞いてる悪魔の雄叫びは、何度聞いても残酷で、悲痛で、酷く耳障りである。1頭1頭の悪魔の雄叫びは皆、天を貫き、地を轟かせ、海を黙らせるほどの迫力があり嫌でも耳に残る。
悪魔10「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
悪魔は狂ったように叫びながら、ゴツゴツした腕や足を振るい建物を破壊していく。破壊された建物の残骸が、隊員達の頭上に雨ののように降ってくる。既に怪我人も出ており、彼等にとってそれを避けるだけでも精一杯なのだ。
隊3「くそっ。思うように近づけねェ・・・!」
隊4「このままじゃ、俺達何も出来ずに全滅しちまうぞ!」
隊5「他の部隊から応戦出来る部隊はいないのかっ!?」
隊6「無理です!全部隊、他の悪魔と対峙中です!」
怪我人が続出している中で、悪魔の暴れっぷりは更に激しくなっていき、被害は徐々に拡大していく。
隊7「何か、何か手段はないのか・・・!?」
戸惑いの表情を浮かべ、頭を360度回転させるが隊員達の中で誰一人としていい考えが浮かぶ者はいない。
絶体絶命!と誰もが思った、その時だった。
ナ「火竜の・・・咆哮ッ!!」
悪魔10「ぐォオオ!」
その場で立ち尽くしていた隊員達の間を灼熱の炎が通過し、悪魔の左頬に直撃した。悪魔は炎の反動で右側に倒れ込んだ。悪魔が倒れたのと同時に砂埃が舞い上がり、隊員達の視界を妨げた。
隊8「ゴホッゴホッ!」
隊9「ケホッ、ケホッケホッ・・い、いったい・・・ケホッ、誰が・・・?ケホケホッ。」
咳き込みながら、隊員達は目を凝らして炎を繰り出した人物を探す。
徐々に砂埃が消え、炎を繰り出した人物の姿が確認出来た。桜色のツンツン頭に、白い鱗柄のマフラーを首に巻いた妖精が1人と、夕日色の髪の毛に、同色の大きな瞳を持った妖精が1人―――――。
隊10「ナツ様とマヤ様!」
隊11「な、なぜお2人が、こんな所に・・・?」
目の前で暴れまくっている悪魔と同様に、突如姿を現した妖精の尻尾一の問題児であるナツと、年中無休テンションMAXな事で有名なマヤの姿を見て隊員の1人が問うた。が、
ナ「おうおう、随分と暴れまくってくれてんじゃねーかよォ。」
マ「あーあ、せっかくの綺麗な街が台無しじゃん。これじゃあ“観光スポット”じゃなくて、まるで“戦争記念スポット”じゃん。」
隊員の問いが聞こえなかったのか、それとも敢えてスルーしただけなのか分からないが、ナツは目の前で盛大に暴れている悪魔を見て指の関節をポキポキ鳴らし、マヤはこんな状況だというのにも拘らず、思った事を正直そのまま述べている。悪魔は2人の姿に気づいていないのか、腕や足を振るい建物を破壊し続けている。
瓦礫化としたクロッカスの街を見て、呑気な感想を述べていたマヤがゆっくりと目を閉じ言葉を紡いだ。
マ「我と契約をした全ての動物達よ、ここに姿を現せっ!」
呪文のような言葉を紡いだ後、ピィーーーーーーーーっ!とマヤは指笛を吹いた。繊細で、透き通るような音が響き渡る。
すると、遠くの方で砂煙が上がっているのが見えた。隊員達が目を凝らしてよく見てみると、ライオンや大熊、鷲や犬、猿や鹿、狼やうさぎ、馬や狐、地上にはいないはずのイルカまで!マヤと契約を交わしている、数え切れないほどの動物達がこっちに向かって全力疾走で駆けていた。
隊12「な、な、な・・・何だアレはーーーーーっ!?」
隊13「ど・・動物・・・?」
隊14「な・・何で、イルカまで・・・?」
隊15「つーか、何て数だ・・・」
目を見開いたり、言葉を失ったりしている隊員達を押し退け、駆けつけた動物達はマヤとナツを取り囲んだ。
犬のジョンはマヤの頬を舐め、ライオンのキングはナツの頭に噛み付き、大熊のドランは大きな手でマヤを包み込み、猿のノズはナツに飛び掛る。
ナ「お、おいマヤ・・・お前、こんなに契約してる動物達、こんなにいたのか・・・?」
マ「うん。あまり戦闘には呼び出さない動物達の方が多いから、ナツ達が知らない動物達がいっぱいいると思うよ~♪」
マヤの言うとおり、ナツが初めてお目にかかる動物達は山ほどいる。
虎や羊、たぬきや豹、ペンギンやホッキョクグマ、ロバやゴリラ、猫やあらいぐまなど・・・
ナツが初めてお目にかかる動物達ばかりなのに、なぜこうも動物達がナツにも懐いているのか・・・?
それは恐らく、マヤが動物達にナツの事をたくさん話しているからであろう。
思う存分大好きな動物達とじゃれ合うと、マヤは抱いていた犬のジョンとうさぎのミナを地面に下ろし立ち上がった。
マ「キングとバーン、ドランとノズ、クロウとルリ、ラズとケイ、オスキーとマムは怪我人を運んで!後の皆はキューとジョンを先頭に、隊員さん達を安全な場所まで案内してあげて!」
飼い主のマヤの指示通り、ライオンのキングとワシのバーン、大熊のドランと猿のノズ、狼のクロウとシカのルリ、ホッキョクグマのラズと馬のケイ、ロバのオスキーとゴリラのマムは怪我人を抱えたり、背中に乗せたりし始めた。
隊16「えと・・マヤ、さん・・・これはいったい・・・・?」
きょとんとした表情をマヤに向けて隊員の1人がマヤに問うた。マヤはニコッと満面の笑みを浮かべると、
マ「動物達に手伝ってもらって、皆さんを安全な場所まで連れて行くからついて行ってね。あ、いくら私と契約してる優秀な動物達でも、怪我の手当てまでは出来ないから、そこんとこヨロシク~♪」
怪我の手当てをする動物がいたらそれもそれで驚きだが、凶暴なライオンや大熊、狼やホッキョクグマが怪我をした人間を運ぶ事事態で既に驚きである事を、能天気少女のマヤは気づいていない。
隊17「あの悪魔はどうするんですか?」
ナ「心配すんな。アイツは俺達がボッコボコにしてやっから。な、マヤ?」
マ「うん!」
1人の隊員の問いに、ナツはマヤの右肩に腕を回しながら答え、ナツに同意を求められたマヤも大きく首を縦に振った。
ナ「ところでマヤ、魔力は大丈夫なのか?」
マ「それも大丈夫!動物達にお願いして、半分くらい自分の魔力で来てもらっているから。」
軽く流すように言うマヤだが、呼び出している動物達は数え切れないほどたくさんいる。その動物達1匹1匹の魔力の半分を自分が消費している事になるのだから、かなりの負担が掛かるはずだ。
マヤの頑丈さに驚くと同時に心底不安になるが、ナツはそれ以上何も言わなかった。
避難する準備が整った。最後に犬のジョンがマヤの足元に縋りついた。マヤは優しくジョンの頭を撫でると、
マ「落ち着いて、ゆっくり行動する事!何かあっても、私の所には来ない事!ドムス・フラウの前で、再会しようねっ。」
マヤが笑顔で言い終わったのと同時に、ジョンとキューを先頭に魔法部隊の隊員達は1人残らず動物達と共にこの場を去って行った。マヤは動物達の姿が完全に見えなくなるまで手を振り続けていた。
ナ「!危ねェ!」
マ「わっ!」
動物達の姿が完全に見えなくなりマヤが腕を下ろしたのとほぼ同時に、悪魔がこっちに向かって足を振るおうとしていた。それに逸早く気づいたナツは、マヤを抱えるようにして庇いながらその場から距離を取った。悪魔の蹴りはブン!と音を立てて空気を切り裂いただけだった。
悪魔はマヤを庇いながら自分の蹴りをかわしたナツを見て「ヒュゥ~」と短く口笛を吹いた。
悪魔10「meの蹴りをいとも簡単にかわすなんて、youなかなかやりますネ!」
ナ「ア?」
言葉に英語を交え、語尾の文字をカタカナで喋るこの悪魔が“悪魔”という存在に見えなくなってきたのは気のせいだろうか?
悪魔10「youとっても気に入りましたネ!meとっても嬉しいデス!」
1人はしゃいでる悪魔を無視して、ナツはその場にマヤを下ろしながら尋ねた。
ナ「お前、アイツ等を危険な目に遭わせたくなかったから、無理して全員呼び出して避難させたんだろ?その序に、魔法部隊の奴等を連れて、一緒に避難させたんだろ?」
マ「!」
図星だったのか、マヤの両肩がビクッ!と大きく震えた。
マ「だっ、だって!皆をこんな化け物と戦わせちゃったら、絶対怪我じゃ済まないと思ったし、怖い目に遭わせたくなかったし・・・それに私、いつも皆に迷惑かけて」
ナ「おっと!」
マ「ほわぁ!」
話の途中で、再び悪魔がこっちに向かって足を振るおうとしていた事に逸早く気づいたナツが、「迷惑かけてるから」と言おうとしたマヤを再び抱えるようにして庇いながらその場から距離を取った。悪魔の蹴りは、再びブン!と音を立てて空気を切り裂いただけだった。
悪魔10「無視しないで下さいネ!meとっても悲しいデス!」
口ではそう言いつつも、全く悲しそうに見えないのはなぜだろうか?
そんな悪魔をまた無視して、今度はマヤを抱えたまま、視線だけを悪魔に向けたままのナツは口を開いた。
ナ「アイツ等は迷惑だなんてこれっぽっちも思ってねーよ、絶対。大好きな飼い主の頼みなら、どんなに些細な頼み事でも、アイツ等は嬉しがるに決まってら。それに・・・」
そこまで言うと、ナツは視線を自分の腕の中にいるマヤに移した。マヤの大きな夕日色の瞳と目が合った。
ナ「分かってるはずだぜ、アイツ等も。マヤが自分達の事を思って取った行動だったって事をな。もし分かっていなかったら、1匹残らずこの場に残って、マヤを命懸けで守ってるはずだからな。」
マ「・・・ナツも、いつも命懸けで私の事、守ってくれてるよね?」
ナ「なっ・・/////////////////」
思っても考えてもいなかった言葉に不意を突かれたので、ナツは顔を赤らめずにはいられなかった。
悪魔10「隙アリデス!」
ナ「!ぐァア!」
マ「キャアアアアア!」
隙だらけだったナツの足元を狙って、悪魔は蹴りを放った。見事にナツは反応に遅れ体を瓦礫に強く打ちつけ、ナツに抱えられていたマヤも地面をゴロゴロと転がった。
悪魔10「ラブラブタイムは終了デス!もう無視はさせないデス!」
鋭く尖った爪が生えた指先でナツとマヤを指し示した。ナツとマヤはよろよろと立ち上がり、マヤはショーパンのポケットから火炎石を取り出し固く握り締めた。
ディ「meは“欲望の悪魔”ディザイアというデス!地獄に堕ちるまでの間だけでも、覚えててくれたら嬉しいデス!」
“欲望の悪魔”ディザイアの名前を聞いたマヤの肩が小刻みに震え始めた。
マ「・・・よ、欲望・・・・」
マヤの脳裏に蘇るのは、不死鳥の欲望を発動させた自分の姿―――――。
この力で、どれだけたくさんの人を傷つけ、どれだけ苦しみ、どれだけ悲しみに陥った事か・・・思い出すだけで、激しい頭痛がマヤを襲う。
ナツは小刻みに震えているマヤの右肩に手を回し、マヤの体を自分の方に引き寄せた。
ナ「安心しろ、不死鳥の欲望は二度と発動しねェ。万が一発動したとしても、必ず俺が、止めてやる。・・・だから、怖がるな。」
マ「・・・うん。・・・ありがとう。」
目を細め、マヤは心から感謝の気持ちを述べた。
ディ「不死鳥の欲望・・・?今、you達はそう言いましたよネ?」
ディザイアは“不死鳥の欲望”という言葉を聞くと反応して来た。
ナ「確かに言ったけど、お前には一切関係ねェ事だ。」
ナツは特に疑問を抱く事も無く言い返した。
ディザイアは目の前にいる2人の妖精の内、夕日色の髪の毛に、同色の大きな瞳をした妖精に視線を巡らせた。
ディ「(“不死鳥の欲望”・・・もし“元締め様”が言ってた事が真実ならば・・・あのgirlが、例の・・・・)」
ディザイアは目の前に2人の妖精に気づかれない程度で、口元に不敵な笑みを浮かばせた。
悪魔が不敵な笑みを浮かべている事を知らないナツは右手に竜を滅する灼熱の炎を、マヤは左手に鳳凰から授かった紅蓮の炎を纏った。
ナ「行くぞマヤ!」
マ「全力全快フルパワーでいっくよーっ!」
今、炎のように熱い精神を持つ、傷だらけの桜色の妖精と、動物をこよなく愛する、傷だらけの夕日色の妖精が、“欲望の悪魔”に立ち向かう―――――。
後書き
第201話終了です☆
“欲望の悪魔”ディザイアの意味深な言葉の意味とは―――?“元締め様”とはいったい何者なのか―――!?
・・・終わった。10頭の悪魔の紹介みたいなお話が終わったぞーーーっ!ハァ、長かった。
次回からようやく本格的な妖精VS悪魔のバトルを書く事が出来ます。ですが、2014年のFT友恋の更新はこれで最後です。
それでは皆さん、よいお年をお迎え下さい☆
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