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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三十七話 大阪に行ってその十三

「あそこで徳川家康の本陣に攻め込んだんだ」
「本陣にでござるか」
「それで家康を追い詰めたんだ」
「奮闘したでござるな」
「本当にあと一歩だったんだ」
 家康の首を取れた、家康は死を覚悟したという。その時に実は家康は死んでいて影武者がその後家康を演じていたという説もある位だ。
「惜しかったけれど」
「討ち取れなかったでござるか」
「残念なことに。それで力尽きて」
「亡くなられたでござるか」
「動けなくなって討ち取られたそうだよ」
「無念でござる」
 完全に幸村さんの立場に立ってだ、マルヤムさんは言った。
「まことに」
「マルヤムさん本当に幸村さん好きだね」
「大好き、いや尊敬しているでござるから」
 その域に達しているからというのだ。
「討ち取られたこと、無念でござる」
「最後は凄く潔かったらしいよ」
 このことも伝わっている。
「首を取って手柄にしろって言ったらしいんだ」
「左様でござるか」
「死んだというのが事実ならね」
「けれど影武者とも言われているでござるな」
 マルヤムさんはそのことに希望を見出しつつ語った。
「そうでござるな」
「だから死んだのが事実なら」
「それは事実ではござらぬよ」
 マルヤムさんは微笑んでこの説を主張した。
「真実はアッラーのみがご存知でござる」
「そこでアッラーなんだ」
「この世で絶対の真実はアッラーの御教えのみでござるから」
「じゃあ本に書かれていることでも」
「コーランに書かれていることは絶対でござる」
 それこそがまさに絶対の真実だというのだ。
「けれど他のことはでござる」
「絶対じゃないんだ」
「そうでござる、拙者は武士であり忍者でござるがまずムスリムでござる」
 イスラム教徒、それだというのだ。
「だからこう思うでござる」
「コーランで真田幸村が死んだと書かれていないから」
「生きているかも知れないでござるよ」
「コーランって凄いね」
「コーランに間違ったことは書かれていないでござる」
 このことは学園の他のムスリムの人も言う、マルヤムさんだけでなくイタワッチさんもこのことは言っている。
「だからでござる」
「幸村さんが死んだかどうかは」
「絶対でないでござるよ」
「生き延びていたら」
 僕は天王寺を見つつ言った。
「嬉しいね、秀頼公も」
「生きているでござるよ」
 マルヤムさんは笑顔のまま僕に答えてくれた、そして。
 僕にだ、今度はこう言ってくれた。
「それでは次はでござるな」
「うん、大阪城の次は」
「幸村さんの像を観に行くでござるな」
「そうしよう」
「何処にあるでござるか?像は」
「三光神社、真田丸があった玉造の方にあるんだ」
 僕はマルヤムさんに像のある場所も話した。
「そこにね」
「そうでござるか」
「だから今からね」
「玉造に行くでござるな」
「そうしよう、あそこも面白い場所だよ」
「玉造もでござるな」
「商店街でね」
 丁渡駅前がそうなのだ。
「中々楽しめるよ」
「大阪の商店街でござるか」
「庶民的でいいよ」
「八条町には二つの商店街があるでござるが」
「そうだね、八条町の商店街と同じだけ面白い場所だから」
 こうマルヤムさんに説明した。
「食べるものも美味しいし」
「左様でござるか」
「じゃあ行こうね、これから」
「わかったでござるよ」
 マルヤムさんはまた僕の提案に頷いてくれてだった、大阪城から今度は玉造の方に向かった。そこまでは地下鉄だった。
 その地下鉄の中でだ、僕達は二人並んで座っていた。その時にマルヤムさんは周りのお客さん達を見つつ僕に言って来た。 
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