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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三十七話 大阪に行ってその十一

「けれど違うみたいなんだ」
「悪い僧侶ではなかったでござるか」
「そうだよ」
「拙者の誤解でござったな」
「確かに謎の多い人だけれどね」
 そもそも百二十歳まで生きていたこと自体が尋常じゃない、今でもそこまで生きている人は極めて稀なのにだ。
「仙人みたいな感じで」
「百二十歳まで、でござるか」
「生きていたというし」
「そこまで生きる人は滅多にいないでござるよ」
 マルヤムさんもこう言った。
「どれだけ長生きだったでござるか」
「だから怪人なんだ」
「それだけでもでござるな」
「うん、普通の人じゃなかったよ」
「崇伝はただの悪い奴で」
「僕も崇伝はそう思ってるよ」
 目の前にいたらすぐに嫌いになっていたと思う、こう思うのは僕が関西人で豊臣贔屓なところがあるからだろうか。
「けれど天海は違っていたみたいだよ」
「わかったでござる、それにしても」
 マルヤムさんは展示されている太閤さんの資料を読んでこうも言った。
「いや、素晴らしい方でござるな」
「太閤さんはだね」
「そうでござる、庶民から天下人でござるか」
「そうなったんだよ、まさに一介の足軽からね」
「一兵卒からでござるな」
「天下人になったんだ」
 太閤、それにだ。
「凄い人だよね」
「しかも気さくで気前がよかったでござるか」
「そうした人だったんだ」
「まことの意味での大人物だったでござるな」
「だから天下人になれたんだ」 
 織田信長の跡を継ぐ形でだ、もっとも実際は織田家から天下を簒奪したと言った方がいいかも知れないけれど。
「色々な政治もしてね」
「偉大な方でござるな」
「本当にね」
「太閤さんも好きになったでござる」
 マルヤムさんは肖像画の太閤さんの顔も見て言った。
「決して美形ではないでござるが」
「けれど結構もてたらしいよ」
「その人柄で、でござるな」
「うん、そうだよ」
 その通りだとだ、僕も答えた。
「小柄で体格もよくなかったけれど」
「もてるのは人間性でござるよ」
 マルヤムさんはこのことは強く言った。
「幾ら美形でも性格が悪いと駄目でござる」
「女の人にも人気が出ないね」
「拙者も顔だけの殿方は嫌いでござる」
 マルヤムさん自身もというのだ。
「むしろ殿方は顔ではないでござる」
「心だね」
「秀吉殿もそうだったでござるな」
「天下無双の人たらしって言われていてね」 
 その魅力で多くの家臣を引き寄せたのと共にだったのだ。
「女の人にももてたんだ」
「そうした人でござったな」
「そうだよ、やっぱりここまでの人は違うね」
「顔なぞものともしないでござるな」
「その通りだね、それじゃあね」
「ここは見たでござるから」
「最上階に行こうね」
「七階ではなかったでござるな」
「御免、もう一階あるんだ」
 僕も勘違いしていた、そのことは。それでマルヤムさんに謝ってからそのうえで正しいことを伝えたのだ。 
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