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ダンジョンに転生者が来るのは間違っているだろうか

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手合わせ

 
前書き
オラトリアを少し立ち読みしてみたのですが、あれだね。前回の戦闘、簡単に終わらせ過ぎたという実感がわいた。物足りないと思ったかたは申し訳ありません。
オラトリアの方では、関節光っての薙ぎ払いとか、スパルトイの呼び出しとか、6Mくらいの剣を新しく作ったりとかしてたのに、もうあれだね、やっちまった感が半端ねぇ。
なんか、中途半端にオラトリアに絡んでいるせいで、変な感じになっているかもですが、これからも応援よろしくお願いします。 

 
アイズとリヴェリアさんを乗せた一行は、一度ウダイオスの残した大剣を預けるため、リヴィアの街へ進路を進めた。
俺達が送るのはここまでとしているため、荷物となるのは置いていくそうだ。アイズも大剣は使えないらしいからな。

「それじゃ、行こうか」

大剣を預けたアイズとリヴェリアさんが戻ってくると、ハーチェスさんは徐にそう言った。
どうやら、この二人も連れてパディさん達が野営する東の森へ向かうようだ。

「ん? 街で宿を取っていないのか?」

「ああ。ここの宿代はバカにならないからね。それは君達も知っているだろ? それに……」

「それに?」

「……いや、この話はあとでにしよう」

リヴェリアさんの問いに言葉を濁したハーチェスさんはそのまま直ぐに野営地へと歩を進める。
俺やリリアさん、エイモンドさんもこれに続き、他の二人は互いに顔を見合わせながらも俺達に続いた。



ーーーーーーーーーー



「団長、お帰りなさいませ」

「うん、ただいま、パディ。お客さんが二人いるんだけど、大丈夫かな?」

「問題ありません」

野営地について早々、パディさんが執事らしく一礼して出迎えてくれた。
パディさんの後ろでは、鍛練でもしているのか、アルドアさんが筋トレ中。スウィードもこれに付き合わされているようで、頑張ったいた。デルガさんはこれの傍らで酒を片手に座り込んでおり、ヒルさんは暇だと言いたげな様子で木の根本に寝転がっていた。

「お! 団長! 帰ったんすね。おかえりっす」

「お、おかえり、な、なさぁっいぃっ!」

「あ、ああ。うん、帰ったよ」

必死な形相で出迎えてくれたスウィードに、顔を引きつらせるハーチェスさん。
いったい、何回やればこんなんになるんだ……

「魔石とドロップアイテムの換金、やっといたぜ」

「ありがと、ヒル。どうだった?」

「一〇〇〇万ヴァリスを少し越えたくらいだ。やっぱ買い取り額が安すぎるぜ」

ほらよ、とどこにおいていたのか、金貨で一杯になった袋をこちらに投げ渡すヒルさん。
慌てて落とさないように俺がキャッチした。

「で? 何で【ロキ・ファミリア】の、それも第一級冒険者の二人がいやがる」

「一緒に帰ってきたんだよ。せっかくだし、ご飯もどうかと思ってね」

「……ま、団長の意見には逆らわねぇよ」

フンッと鼻を鳴らして再び目を閉じるヒルさん。その様子に、ごめんねとリヴェリアさんとアイズに謝るハーチェスさん。

「それはいいが……いいのか? ここまで連れてきてくれたあげく、食料まで……」

「構わないよ。うちの執事は優秀だからね。……ま、自慢みたいなものだよ」

「……ハーチェス、貴様、何を考えている」

リヴェリアさんの目がスッと細められた。
何かを怪しむような、警戒するような、そんな疑惑の眼差し。
ただ、ハーチェスさんはそんなリヴェリアさんの目に臆することなく、まぁまぁと軽く手を振った。

「少し、君達に聞きたいことがあるだけだよ」

「聞きたいこと? 何だ、それは」

「ま、今じゃなんだし、それは食事の時にしようよ」

パディ、あとどれくらい? と只今二人分の料理も追加で作っているパディさんへと声をかける。

「もう少し、お待ちください」

「今日はシチューとパン。それに雲菓子(ハニークラウド)っすよ!」

「ゲッ!? 俺苦手だぞあれ……」

元気よく跳び跳ねて今日の献立を伝えるアルドアさんに、いつの間に起き出していたのか、顔をしか目ながらも食器を並べていくヒルさん。

そろそろ準備が整っているようなので、俺達帰還組も座りこむ。
ちなみに、森とは言ったが、ここは少し開けた場所だ。俺達はそこにシートを広げて食事をする。

「リヴェリアさん達も座ってください」

「ああ、すまないな。では、御一緒させてもらおう」

「……ありがと」

俺に促されて、二人も座る。二人分、俺とパディさんの間に空けたところで、ちょうどアイズが隣にきた。
……うむ、やっぱ神様とか他の冒険者が言うだけあってまさに美少女!といった感じだな。
騒ぐのも無理はないわけだ。
なお、俺はリューさんがいい。リューさん可愛い

「それじゃ、食べようか。エイモンド、食事前だから光らないで」

「フッ、何やら、僕の存在が薄かったような気がしてね。どうだい? この僕を見て食べるなんて、最高のディナーだと思わないかい?」

「ねーよ。モンスター寄ってきたらどうすんだ」

やれやれといった様子で引き下がるエイモンドさん。頼むから絶対光らないでくださいね?

「……おお、見たことがあるとは思っていたが、あの時のエルフか」

「フッ、僕の美貌は万人の瞳に焼き付けるほどのようだね……」

「リヴェリア様、あれは【バルドル・ファミリア】(うち)の恥なので、相手にしてはいけませんわ」

そうなのか? と、こちらに視線を向けるリヴェリアさんに、俺は苦笑いするしかなかった。
……まぁ、恥なんだけども、他人にはっきりいうのもなぁ……

そんなやり取りをしつつ、食事が始まった。
リヴェリアさんが、パディさんの料理を誉めたり、俺がアイズと話したりなど、割りと場は和み、お互いの会話も弾んでいた。途中エイモンドさんが光りそうになったのをリリアさんが縛って食い止め、それを見て笑うリヴェリアさんという何ともカオスな光景を目撃することになるのだが……

「さて、本題に入ろうか」

食事を終え、ハーチェスさんがそう切り出した。
そうか、とリヴェリアさんも視線真正面に座るハーチェスさんに向けた。

「で? 何を聞くつもりだ? ハーチェス。話によっては話せないこともある。場合によっては敵対行動とみなすかとしれんぞ?」

やだ、この人怖い

「別に【ロキ・ファミリア】の内部について聞くつもりもないし、そういうこともないと思う。聞きたいのは…………先日、この十八階層での事だ」

「……知っているのか?」

少しだけどね、と間を置いて続ける

「本当は、宿を取ることも考えてはいたんだ。でもリヴィアに行ったときに気付いた。冒険者が少なすぎたんだよ。ボールスとかに聞いてみれば、なんでも殺人事件が起きた、とか」

「おまけに、その調査の途中で新種のモンスターも出た、てな。聞いてみりゃ、【ロキ・ファミリア】が関わってるって話だ」

ハーチェスさんに続けて、ヒルさんも言葉を繋げた。
ヒルさんは、俺達が深層へ向かっている間、換金と情報収集を行っていたのだ。

「僕らは、そのことについての情報が欲しい」

「……それを話して何になる? お前たちも関わるつもりか?」

その問いにハーチェスさんは、まさか、と言葉を溢した。

「だけど、僕らは冒険者だ。そして命を張ってる以上、手持ちの情報が多いに越したことはないからね。もしかすると、僕らがそれに出会う可能性もあるんだ。そうなったとき、判断ができないようじゃリーダー失格だ」

「……そういえば、【バルドル・ファミリア】(そちら)には、怪物祭(モンスターフィリア)の時の借りがあるんだったな」

チラリと、隣のアイズに目をやったリヴェリアさんは、次にはその隣に座る俺を見た。

「殺人について知っているなら話は早い。お前たち、誰が殺されたかは知っているな?」

「……聞いた話じゃ、【ガネーシャ・ファミリア】の野郎だって話だったな」

「ああ。その殺された男なんだが……Lv4の冒険者だ」

「なっ!?」

その言葉に、ハーチェスさんが驚きの声をあげる。

「フィンが言うには、首を折られたらしい。油断したところを殺られたのだろう」

「そいつは男なのか?」

「いや、女だ」

その言葉に、一同が黙り込む。
Lv4の冒険者の殺害。つまり、犯人の女はそれ以上の強さを持つということになる。
それは同時に、ハーチェスさんやエイモンドさんよりも強いということと同義だ。
下手をすれば俺よりも強い、という可能性もある。

「……そうとうヤバイやつみたいっすね」

「……ですね。ちょっと想像がつきません…」

「ちなみに、アイズも私も、これとは交戦した」

「っ! ……仕留めたのかい?」

「いや、残念だがな。アイズは苦戦、フィンと私の二人係りで漸く退かした」

Lv6が二人でって……それに、あの【剣姫】が苦戦?

視線を隣にやれば、下を向いて黙り込むアイズの姿。
どうやら、本当のことらしい。だがそうなると、かなりヤバイことには違いない。

「……少し、お茶を入れて参ります」

パディさんが立ち上がり、場を離れた。スウィードも、手伝おうと一緒に立つ。上級冒険者とはいえ、Lv2のパディさんには荷が重い話なのだろう。それはスウィードも同じだ。

いつになく真剣な面持ちで話を聞く団員達。
そらは俺も同じだ。もしかすれば、出会うことになるかもしれないのだから。

「その女についてはそれくらいだ。あとはモンスターだが……これは【ロキ・ファミリア】(わたしたち)が以前行った遠征の五十階層で出会ったものに酷似していた」

「……五十階層で出現するモンスター……って訳じゃ無さそうっすね…」

「ああ。詳しいことは分からない。が、これらにその女が関わっているのは間違いない」

「確証は?」

「そのモンスターを含めて、植物のモンスターもいてな。あの女が操っていた」

「……調教師(テイマー)か? オラリオで指折りの調教師(テイマー)は【ガネーシャ・ファミリア】のとこだが……」

「自派閥の冒険者を殺すのは考えづらいっすよね」

「それは我々も同意見だ」

「……本格的にヤバイことにはなってるわね」

「……」コクリ

その後、ハーチェスさんやお茶を入れて戻ってきたパディさんからリヴェリアさんへの質問が行われた。
そんな中、俺は一人隣で未だに俯いたままのアイズに話しかけた。

「なぁ、聞きたいこがあるんだが、構わないか?」

「……zzz」

「おい」

俯いてると思ってたのに、寝ちゃってたよこの人

「……ん……何?」

うっすらと目を開けてこちらを向いたアイズ。

「いや、聞きたいんだが、お前がウダイオスに一人で挑もうとしたのは……その女に負けかけたからなのか?」

我ながら直球過ぎる質問だとは思う。
アイズは、一瞬目を伏せた。が、両膝を立て、そこに顔を埋めるとコクリと頷いた。

「……そうか」

本気で強くなろうとしていたのだろう。俺とみたいな軽い気持ちではなく、その女との戦いでの悔しさとかを含めて挑もうとしていたのだろう。
その背に背負った重みが違う。そう思わされた。

だからだろうか

「アイズ。一つだけ、頼んでもいいか?」

「……?」

不思議そうな顔でこちらを見上げるアイズに、俺は言葉を続けた。

「明日の早朝、おれと手合わせをしてほしい」



ーーーーーーーーーー



結果から言えば、アイズはOKを出してくれた。
お互い、リヴェリアさんやハーチェスさんに何を言われるか分からないため、黙っていることになったのだが、まぁそれはいいだろう。

「…………」

皆が寝静まった中、俺は一人で考える。
はたして、勝てるのか、と。【剣姫】と並ぶなんて、オラリオでは言われているようだが、何てことはない。
俺は普通ではないのだ。
神から授かったこの力のおかげ。彼女とは根本から違うと言ってもいい。
何の力もない元の俺だったのなら、今頃まだLv1で燻っていたに違いない。
もしかしたら、ということを考えると、つい笑ってしまった。何とも情けない

けど、そんな自分が好きだったりする。エイモンドさんではないが、こな自分も含めて自分。なら、受け入れる。

矛盾しているんじゃないかと、誰かが聞いていればツッコミが入りそうな考えだが、それでいい。
支離滅裂? 結構。ならそれが俺、と答えておこう。

「クク、何を言ってんだか」

とりあえず、明日は早い。
あの【剣姫】との一騎討ち。ここまでこんなこと言っておいてなんだが、楽しみであったりする。
ほんと、いつから戦闘狂になったんだかね、俺は



ーーーーーーーーーー




「……おう、来たか」

約束通りの早朝、アイズは現れた。
俺が指定した場所は俺達が野営している場所から離れた森の中。
といっても、直径十五M程の野営地と同じように木のない開けた場所であるが。

「……式さん、その服装……それに、昨日の刀は?」

アイズの視線は、俺の手に握られた二本の槍に注がれた。

「……あれもあれで本気なんだが……アイズ相手ならこれだと思ってな」

右手に【破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)】、左手には【アレルヤ】を構え、紫の袴を脱ぎインナーと軽装のみとなっている。

「まぁ、そんなことはいいんだ。さっさと始めようぜ」

「……うん、分かった」

ヒュンと腰のサーベルを抜き放ち、正眼に構えるアイズ

「【目覚めよ(テンペスト)】」

そして、アイズの体を風が覆った。
渦巻く風の余波が離れた俺の肌にも感じられた。

「【騎士は徒手にて死せず】」

「【ナイト・オブ・オーナー】」

黒い瘴気が左手に握られた短槍、【アレルヤ】を覆った。
やがて吸収されるようにしてそれが消えると、手に残ったのは赤黒く染まった【アレルヤ】

お互いの戦闘準備が整った。
彼我の距離は五M。

先に動いたのは……俺だった

「シッ!!」

「っ!」

突き出した右手の槍を弾かれる。が、それだけでは終わらない。
弾かれた勢いを利用して、今度は左手の短槍を薙ぐ。
続けざまに放たれた槍の二撃を、アイズはその剣捌きで防いだ。

「そらぁっ!」

「クッ……!!」

サーベルと短槍がぶつかり合うなか、俺は空いた右手の長槍をアイズの左半身に叩き込む。
ギリギリ、短槍を弾いてバックステップで距離をとるアイズ。
その腕には槍を掠めた一筋の傷


「……風が……どうして……」

「考えてる暇はねぇぞ!」

「っ、ハァッ!!」

バックステップで開けられた距離を一気に詰め、長槍で足を薙ぐ。
タイミングよく飛び上がった彼女だったが、続けて穿たれた短槍を飛び上がった勢いを利用して弾く。
再び、今度は魔法の力も使用して飛んだ。
場所は……俺の背後!

「シッ!!」

「こんのっ……!!」

第六感によって、素早く反応した俺は間一髪、短槍で斬りつけられたサーベルを防いだ。
槍の弱点は距離を詰められると弱いこと。上手いこと弱点を突いた攻めかたであった。

「けど甘ぇ!!」

「っ!?」

だが、あちらは一本、こちらは二本。手数では上手。
ならそれを有効に使わない手はない。
左手の短槍で突くと同時に、長槍を持った手を後ろに大きく反らした。
アイズが短槍を見切り、回避を見せたその直後

紅い軌跡が描かれた。

金属同士がぶつかり合う音が辺りに響き渡り、サーベルと長槍が交わる。
その後、何合も長槍とサーベルが打ち合わされ、お互いがバックステップで距離をとった。


「へぇ……お高い武器を使ってるじゃねぇか」

ここまで、サーベルと【破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)】が打ち合った回数は計十七合。
普通の武器なら刃毀れでもしていいくらいなのだが、その様子もない。てことは、不壊属性(デュランダル)
才能ある鍛冶師(スミス)でなければ作れない第一級特殊武器(スペリオルズ)

「……式さんは……風を斬ってるの?」

対して、アイズから返ってきたのは疑問の声。
そりゃそうだ。打ち合う度に、サーベルに纏った風が解ければそう思うに決まっているだろう。

「さぁ、どうだろう……な!!」

「クッ!」

ガキィンッという音が再び響く。
短槍と長槍を操り、連撃で相手に攻め込む。
隙を与えず、隙を突く。

そさて右手の長槍、【破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)
その名前の通り、いかなる魔力での防御も無効にする魔力を断つ破魔の槍。

フィオナ騎士団最強と謂われた英雄、ディルムッド・オディナの持つ魔槍である。

「ハァッ!!」

「チィッ!」

上段から振り降ろされたサーベルを槍を交差することで防ぐ。
少しの間拮抗するが、二槍でこれを弾き、アイズの胴に蹴りを入れる。が、失敗、左腕で防がれた。

「簡単には取らせないってかっ!」

お返しとばかりに、大振りの大上段から長槍を振降ろす。
サイドステップで回避したアイズのすぐ横の地面を叩き割り、体勢が崩れたところを狙って突っ込んでくるが、させじと短槍で迎え撃つ。
強化された短槍と風を纏ったサーベルが都合三合、金属音を響かせた。

一度だけ体が開き、短槍で突いたのだが風に阻まれて往なされた。
強化しても反らされるのだ。なんちゅー風や

「ダラァアア!!」

「ッゥ!!」

短槍での打ち合いの間に構えていた長槍でアイズの横っ腹を薙いだ。
一瞬、入ったと思った一撃だったのだが、手応えは軽い。アイズが軽い訳ではない。
飛ばされる方向に飛んで、衝撃を逃がしたのだ。

そして、飛ばされたアイズは風で体を制御。空中で見事に体勢を捻った彼女は飛ばされた先、フイールドとなっている場所の外の木に着地した。

そして、俺の脳裏に昨日の一撃が浮かんだ。

あれがくる……!?

咄嗟に槍を前方で交差させ、身構える。
瞬間、アイズは宙を駆けた。

「ハァアアアアアアアアッ!!」

『リル・ラファーガ』
そう言っていた攻撃の威力は間近で実感している。
風を纏い、風による突進。


「アアアアアアッ!!」

「クゥッ!?!?」

突き出されたサーベルの切っ先を何とか受け止めるが、そな威力と衝撃に腕が悲鳴をあげた。
いや、腕だけではなかった。
防ぐ二槍のその片割れ、強化し、赤黒く染まった【アレルヤ】からもギギギギィッ!!という嫌な音が鳴っていた。
どんだけなんだよこいつっ!!

「っっ…!!! ラァアアッ!!!」

「ッ!?」

意地で耐え、後ろへと往なした。だが、その際に彼女は俺の左腕を斬りつけていく。
通過した際の風で吹き飛ばされそうになるのもなんとか耐えた。

「ッフゥ……流石【剣姫】。ほんと、簡単には取らせてくれねぇ……」

「……負けるつもりは、ない」

「そりゃどうも。こっちもな!」

両手の槍を再び構えると、アイズもサーベルを構えた。
そした、同時に駆け出す。


「ラァアアアアアアアッ!!!」
「ハァアアアアアアアッ!!!」


アイズとの手合わせ……という名の死闘はその後、三十分以上続けられた。


ーーーーーーーーーー


「「で? なにか言うことはある?」か?」

「「…………」」

現在、アイズとともに正座中。
足が痛いです

途中、リヴェリアさんとハーチェスさんに見つかった俺達の手合わせは強制的に終了。そのまま説教にGO!となった。
俺も戦闘が終わって初めて気付いたのだが、どちらもお互いボロボロとなっていた。
傷なんかは、回復薬(ポーション)高等回復薬(ハイポーション)によって治療されたが、服ばかりはどうも……
俺はともかく、元々の生地が薄いアイズは、少々エライことになっていた。
流石【破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)】。いい仕事をしてはります。

……って、いかんいかん。俺はリューさん一筋一筋

「式、聞いてるの?」

「イエス!!! ユアハイネス!!!」

ハーチェスさんの背後に鬼がいた。
いや、正確にはハーチェスさんの話を聞かない俺を睨むリリアさんだった。

……え?なにそれ怖い


「すみません。うちの副団長が……」

「……いや、いい。うちのアイズも受けた時点で同罪だ」

まるで子供の喧嘩を謝る保護者のようである。

「おとうさーん」

「……式」

「り、リリアさんはお母さんですよ?」

「ウフフ……分かってるじゃなぁい!」

なにそれチョロい

一瞬で上機嫌となったリリアさんを無視して、俺はリヴェリアさんと話を続けるハーチェスさんの方に目をやった。
その奥では、野営地の片付けを行う六人の姿。尚、内一人は光っているだけだ。
……あ、ヒルさんに蹴られた


「それじゃぁ、僕らはそろそろ」

「ああ。世話になったな」

「いえ。僕らもその分の話は聞けたので」

みんな、そろそろ帰るよーというハーチェスさんの合図にすっかり準備を終えてしまった俺達【バルドル・ファミリア】は二人に別れを告げ、十八階層を離れた。
俺? 正座での移動という苦行の最中ですがなにか?





 
 

 
後書き
感想で、ウダイオスとの戦闘だけではアイズさんLv6ならねぇんじゃね?的なものがあったので、今回の戦闘で調整するつもりです。無理矢理ですがご容赦を。
ニシュラは戦闘描写が苦手ですので変な文になったりとかよくわかんない部分とか出てくるかもです。
盛り上がりに欠けてたらごめんなさい。 
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