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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三十七話 大阪に行ってその六

「それもかなりの」
「そうなるんだね、そういえばね」
 剣豪の話をしていて思い出した、僕は土の橋を渡りそのうえで如何にも攻めにくそうな大阪城の門、傍に櫓があり門の上の窓からも攻撃が来そうなその門を潜った。そこで一緒にいるマルヤムさんに話した。
「大坂の陣は宮本武蔵も参加していたよ」
「武蔵殿でござるか」
「知ってるよね、この人も」
「吉川英治殿の小説を読んだでござる」
 その宮本武蔵を主人公にした小説だ。
「全巻読んだでござる」
「全巻なんだ」
「あれは名作でござる」
 マルヤムさんは瞑目さえして言った。
「武蔵殿は真の武士でござるな」
「そうだね、ただね」
「ただ、でござるか」
「あの宮本武蔵はね」
 吉川英治の小説のあの人はというと。
「実際とはかなり違うみたいだよ」
「ああした人ではなかったでござるか」
「爽やかで清々しいけれど」
 けれどなのだ。
「実際のあの人はね」
「どんな人だったでござるか」
「勝利の為には手段を選ばずね」
「卑怯だったでござるか」
「ううん、卑怯っていうよりかは」
 言葉を選びつつマルヤムさんに話した。
「荒々しい、飢えた獣みたいな」
「そうした人だったでござるか」
「そうみたいだよ、あと佐々木小次郎も」
 武蔵のライバルのこの人もだ。
「実在にしても実は巌流島の時お爺さんだったって説もあるんだ」
「ご老人だったでござるか」
「そうした説もあるしお通もね」
「お通殿は悲しいでござるな」
 両想いなのに武蔵と結ばれなかった、武蔵もあえて拒んだ。どうも吉川英治という人の好みが出ている。
「剣に生きるが故に」
「あの人実在じゃないから」
「いなかったでござるか」
「そうなんだよ」
「何と、武蔵殿の恋はなかったでござるか」
「実際はね」
「それは知らなかったでござる」
「本当に違うんだ」
 実際とはとだ、僕は話した。
「あの小説と実際はね」
「驚きでござるな」
「そうだよね、僕もずっと思っていたんだ」
「あの小説が真実だったとでござるか」
「実際の話を聞いて驚いたよ」
「そうでござるか」
「で、その武蔵さんも大坂の陣に参加していたんだ」
 このことは本当のことらしい、ただし小説では巌流島で終わっているので大坂の陣のことは書かれていない。
「それで負けて何とか逃げたんだよ」
「そうだったでござるか」
「そこから九州に行って最後はある大名に仕えて亡くなったんだ」
「左様でござるか」
「あの人は二刀流だね」
 二天一流という。
「両手に一本ずつ刀を持つ」
「あれでござるな」
「マルヤムさん二刀流は」
「いや、拙者は一刀でござる」
 マルヤムさんはこのことははっきりと答えた、ここで僕達は本丸に出た。緑の多いそこにはあの見事な天守閣もあった。
 その天守閣を見つつだ、僕にはっきりと答えた。 
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