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イタリア男

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第三章

「同性愛者ではありませんし」
「そうだね」
「しかしです」
「自分から積極的に声をかけることは」
「苦手です」
 こう弟に告白するのだった。
「昔から」
「兄さん奥手だからね」
「イタリア男が誰でも積極的なのか」
「そうかというとね」
「違います」
 難しい顔でだ、ザンカリーノは言った。
「そうではありません」
「誰もがそうじゃないのに」
「何故かそう思われます」
「日本でもだね」
「もっと言いますと」
 ザンカリーノはスパゲティをフォーク、スプーンまで使ってそのうえで食べながらジャコモに対して話した。
「このスパゲティ、いえパスタ自体が」
「パスタ全体がだね」
「確かにイタリアのソウルフードですが」
「けれど誰もが好きかというと」
「違います」
「そうなんだよね」
「中には好きでない方もいます」 
 パスタが嫌いなイタリア人もいるというのだ。
「ごくごく稀にしても」
「そうだよね」
「歌が好きでないイタリア人もいます」
「それがどうしてかね」
「イタリア人であるなら」
 まさにだ、この国で生まれ育った人ならばというのだ。
「女性に自分から積極的に声をかけパスタと歌を愛する」
「そしてワインは手放さないね」
「カプチーノも好きで」
「先入観があるね」
「日本でもそれが強くて」
「困っているんだ」
「そうしたイタリア人になってみせることについて」
 ザンカリーノは実際にやや疲れている顔で話した。
「疲れを感じています、ただ」
「ただ?」
「かくいう私もです」
 ザンカリーノ自身もというのだ。
「日本人といえば」
「ああ、兄さん話していたね」
「忍者がいると思っていました」
 今度は少し苦笑いになってだ、弟に話した。 
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