僕のサーヴァントは魔力が「EX」です。
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一八〇秒の攻防
「反撃開始!」
アヴェンジャーは叫ぶとランサーの槍を受け止めていた骸骨の人形を操作し、復讐者の英霊の指示を受けた人形は光の槍を払い除けると両手に持つ二本の刀で槍兵の英霊に切りかかった。
「……!」
アヴェンジャーの人形はランサーの腕を切りつけたのだが与えた傷はそれほど深くはなく、ランサーは空中を蹴って距離をとると宙に浮かんだまま体勢を立て直した。……というか宙に浮かぶランサーってってもう完全に元が人間の英雄じゃないよな。十中八九、人間の姿に化けた精霊とかが英雄と同一視されたサーヴァントだろう。
「へぇ……。偶然とはいえランサーの槍を止めるなんてやるじゃないか? でもまだまだこれからだよ。ランサー! 続けて攻撃だ!」
「ッ!」
レーベンの命令を受けてランサーが再び雷光を纏いながらこちらへと突撃してきた。
「来るぞ! 何とか耐えてくれ!」
「任せて!」
アヴェンジャーがそう言って右手の指を僅かに動かすと、骸骨の人形は彼女の手と指の動きに合わせるように縦横無尽に動き回ってランサーの光の槍が繰り出す猛攻を防ぎ、それを見たレーベンが驚愕のあまり目を見開く。
「馬鹿な……偶然じゃないのか? 何故『キャスター』がランサーと互角に戦えるんだ!?」
キャスター? ……ああ、なるほど。
どうやらレーベンはアヴェンジャーのことをキャスターと勘違いしているみたいだ。考えてみたら彼女の姿や戦い方を見たら戦士には見えないし、まさか彼女がエクストラクラスとは思わないだろうから、間違えても仕方がないよな。
そしてレーベンの驚きはもっともだ。キャスタークラスのサーヴァントと当のアヴェンジャーは、筋力や耐久といった肉弾戦に関係するステータスが最低ランクで、普通に考えたら槍を使った戦いを得意とするランサーと互角に戦えるはずがない。
……でもそれはサーヴァント自身の話だ。ランサーが今実際に戦っている骸骨の人形はアヴェンジャーの魔力によって操られているので、その力も速さも彼女の魔力次第。
そしてアヴェンジャーの魔力はこの聖杯戦争でも最高の「EX」ランク。つまりあの骸骨の人形はサーヴァント並の戦闘力を持っているということで、人形の守りを突破されない限りは一方的にやられたりはしないだろう。
「……!? ら、ランサー! もっとだ! もっと速く攻め立てろ!」
レーベンは自慢のランサーの攻撃がキャスター(と思い込んでいるアヴェンジャー)に防がれたのがよっぽどショックだったのか、悲鳴のような声で命令をだした。クソッ! まだ速くなるのかよ!
「もうそろそろ一分経つから強制中止まで後二分くらいか。このまま持ちこたえてくれ!」
「了解!」
もし読み間違えて一度でも直撃をくらったらそれだけでアウトだと、自分が一番理解しているのだろう。アヴェンジャーは真剣な表情となって精神を研ぎ澄まし、ランサーの攻撃を防ぐべく人形を操作した。
槍の刺突がくれば人形が両手の刀を交差させて受け止め、槍が横薙ぎをしようとすれば人形が刀を縦に降り下ろして動きを止める。
人形の刀と光の槍。
ぶつかり合う度に火花が飛び、強風が吹き荒れる。
長いようにも短いようにも感じられた一八〇秒の攻防。それの終わりがやってきたのは、そろそろアヴェンジャーに余裕がなくなってきた時だった。
ガカッ!
アヴェンジャーとランサーが戦っている最中、突然目の前が光ったかと思うと二体のサーヴァントの間を光の壁が遮っていた。
「くっ! ここまでか……」
「……」
光の壁の向こうでレーベンが悔しそうな顔をして、ランサーも構えを解いて光の槍を消した。
「……どうやら君達を甘く見ていたようだね。だが私は負けない。天に認められて彼女、ランサーを与えられた私が負けるはずがないのだから……」
レーベンはそう言うとランサーと一緒にアリーナから姿を消した。多分自分達のマイルームに帰ったのだろう。やれやれ、やっと行ったか。
「……………ふぅ。つっっっかれた~」
今まで精神をはりつめていたアヴェンジャーが一気に脱力して肩を落とす。やっぱりいくら彼女がサーヴァントといってもあの戦闘は精神的にキツかったか。
「お疲れ様、アヴェンジャー」
「うん。本当に疲れた。……ねぇ、マスター? 今日はもうマイルームに帰らない?」
「それもそうだな。じゃあ帰ろうか」
流石に今日はもう戦闘訓練をする気分ではないので、僕とアヴェンジャーはマイルームに帰ることにした。
それにしてもこれが聖杯戦争か……。予想以上に激しい戦いになりそうだな。
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