八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三十六話 終業式その五
「それで起きるから」
「しかし冬はか」
「暑くて体力を消耗して」
またこう言うのだった。
「十時間」
「暑いとどうしても目が覚めないか」
「別に」
エリザさんは井上さんにあっさりとした調子で答えた。
「そうしたことはないから」
「そうなのか」
「夏休みの間もお家にいるから」
また言ったエリザさんだった。
「よく寝るわ」
「お昼寝は」
僕はエリザさんにこのことも尋ねた。
「されてますか?」
「しないわ」
「夜だけですか。寝られるのは」
「昼は起きているもの」
エリザさんはlこう言われる理由はというと。
「お祖母ちゃんに言われたから」
「だからですか」
「そう」
それ故にというのだ。
「私は守っているの」
「お昼には寝ない」
「昼は自然の気を感じるの」
「自然の、ですか」
「あらゆる気配を」
「何かそう聞くと」
僕はふとあの人達のことを思い出して言った。
「アボリジニーの人達ですね」
「実際に私は」
「そうですよね」
「そう、だから」
「自然の気をですか」
「お昼は受ける様にしているの」
起きてそのうえで、というのだ。
「そうしているの」
「そうなんですね」
「そして夜は寝て」
「お身体を休めておられるんですね」
「そうなの、その意味もあるの」
「成程」
「今日も寝るわ」
それもじっくり、というのだ。
「そういうことで」
「わかりました」
僕はこの日の朝は皆とこうした話をした、そのうえで登校してその終業式にも出席した。それが終わってからだ。
クラスに戻るとだ、皆やれやれといったそれでいてうきうきとした顔になってそのうえでこんなことを話した。
「ホームルームの後は」
「これでね」
「夏休みだな」
「そうよね」
「いや、待ったな」
「ずっとね」
そのうきうきとした感じ、皆の中のそれが大きくなってきていることをだ。僕は皆を見てそのうえで察した。
けれど今は何も言わず皆を見ていた。皆はその僕の傍で話していっていた。
「夏休みに入ったら」
「部活に旅行に」
「あとたっぷり寝て」
「ゆっくり出来るわね」
つまり羽根を伸ばせるというのだ、こう話してだった。
皆で楽しく話していた、そして。
これまで自分の席で静かにしていた僕にもだ、声をかけてきた。
「それで大家はな」
「夏休みどうするの?」
「やっぱり部活か?」
「あと旅行?」
「それともあれか?」
男子生徒の一人進藤君が少しスケベそうに笑ってこんなことを言って来た。
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