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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三十五話 夏休み前その十一

「音楽の本を買いに行くなんて」
「そうなりますか」
「はい、そう思います」
 この時も微笑んでいることが自分でもわかった。
「早百合さんはピアノで、裕子さんは歌で」
「そのピアノの曲をです」
 早百合さんが早速言ってくれた。
「勉強する為に」
「本をですか」
「そうです、楽譜を」
「そうした本も売ってるんですね」
「歌の本もあるのよ」
 裕子さんも話してくれた。
「オペラのアリアとかのね」
「アリア、独唱ですね」
 僕はここでも親父が教えてくれたことを思い出した、親父は遊びの中で色々なことを教わったらしい。その知識を僕に教えてくれた。
「オペラの見せ場の一つで」
「そう、そのアリアの本をね」
「買ってそうして」
「勉強しますか」
「それで買いに行くの」
 そのアリアの本をというのだ。
「少し以上に高いけれどね」
「そうですね、クラシック関係の本は」
 早百合さんは裕子さんのその言葉に頷いた、その通りだと。
「どうしても高いですね」
「作曲家の資料とかの本も」
「どの本も」
「高いのなら」
 それならとだ、僕はお二人に提案した。
「図書館や八条荘の書斎で」
「いえ、それは」
「違いますか」
「やはり自分で買いますとずっと手元にありますので」
 図書館や書斎でのものは借りるものだ、借りるということはそれだけで自分のものでないということだ。けれど買うとだ。
「ですから」
「それで買われるんですね」
「そのつもりです」
「わかりました、それじゃあ」
「お金は実家から仕送りがあるますので」
「私もね」 
 お金のことはお二人共だった。
「ですからご心配なく」
「そちらのことはね」
「だといいですけれど」
「そういえば義和君って」
 裕子さんは僕にふと気付いた様にこうも言って来た。
「お金はあるのね」
「はい、管理人としてお給料を貰ってますから」
 バイト料ということでだ。
「ですから」
「それで、なのね」
「はい、お金はあります」
「それは何よりね」
「お金には困っていません」
 また言った僕だった。
「というか貯金が出来ています」
「それだけ貰ってるのね」
「有り難いことに」
「それはいいわね、私もね」
 ここでだ、裕子さんは少し先を見る目になった。そのうえで僕にこんなことを言った。
「本を何十冊一度に買っても困らない様になりたいわ」
「何十冊ですか」
「ええ、それだけのお金が欲しいわ」
「いつもそんなに買われてるんですか」
「そうなの」
「歌ってそんなに勉強しないと駄目ですか」
「歌のことだけじゃないの」
 勉強しなければならないことはというのだ。
「これがね」
「オペラの歌を歌おうと思いますと」 
 ここで早百合さんが僕に話してくれた。 
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