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インフィニット・ストラトスGM〜天空を駆ける銀狼〜

作者:
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オマケ
  志真埜雪乃の憂鬱

 
前書き
*ネタバレがあるかもしません 

 
「ふぅ……。もう、那珂様は……」

薄暗い部屋の中、一人の少女がパソコンを開き その中で流れる映像を見て 苦笑している。少女の格好はラフなものでブカブカしたTシャツを一枚着ているくらいである。ルームメイトは居らず、その広い部屋の中少女のベッドだけがぬいぐるみなどが置かれていた。しかし、そのぬいぐるみ達もボロボロで所々縫い付けているのを見ると年季が入っているのだろう。そんなぬいぐるみ達の中でも一つだけ違う色のぬいぐるみが有った。少女はパソコンを閉じて、ベッドに横たわるとその色が違うぬいぐるみを抱きしめる。そのぬいぐるみをギュッと抱きしめて、そのぬいぐるみにキスを落とすと少女は目を閉じた。

「おやすみなさい。優理様」

☃☃☃

那珂優理とワタシが出会ったのはワタシがまだ赤ちゃんの時でした。生まれてすぐ捨てられたワタシはある日心優しい若い夫婦に拾われました。その夫婦には双子の赤ん坊が居て、大変でしたのにワタシをここまで育ててくれました。その双子の赤ん坊も元気に育って、私を姉妹の様に扱ってくれたのです。ワタシは心からこの家族に恩返しをしようと思いました。自分のその気持ちに気づくまではーー

「雪乃?早く起きないと学校遅刻しますよ?」

「ふん?優理様?」

「寝ぼけているんですか?相変わらずですね」

そう言って、笑う彼女にいつから心惹かれていたのかわかりません。気づけば彼女が隣に居てくれたし、彼女の隣に居ました。彼女の隣で自然と笑っているワタシに気づきました。今までおじさんやおばさんにも見せたことのないその笑顔にワタシも戸惑いました。そして、気づいたのです。彼女ーー那珂優理を好きになってしまったと。気づけば彼女の後ろ姿を探したり、今まで何とも思ってなかった“手を繋ぐ”という行為にも心臓が破裂しそうなほどドキドキしました。でも、怖かったのです。彼女に自分の気持ちを知られたらと思うと。彼女がワタシの傍から離れて行ってしまうのではないかと思って……怖かったのです。こんな邪な気持ちで彼女を見ると自分が許せませんでした。でも、許せないと思うほどワタシは彼女に惚れていきました。

「…優理様?」

突然、立ち止まった優理様に驚くワタシ。

「もう、優理様はやめて下さいって言ってるじゃないですかっ」

「いえ、でも。そんな、恐れ多いですの」

「恐れ多いって、私と雪乃は姉妹ですから。大丈夫ですよ、私が文句言った奴を懲らしめてやりますよ」

「………本当、優理様は優しいですの」

ボソッと呟き、苦しい胸を握りしめる。優理様は振り返り、ワタシを見ると小首をかしげる。

「何か言いましたか?雪乃?」

「いいえ。なんでもないですの」

「そうですか。なら、急ぎましょう。授業が始まってしまいます」

差し出す手に重ねる左手。それだけでワタシは幸せだったのです、本当に。でも、幸せは長くは続かないものです。それが自分にとって大事なものであるほど。
ある日、おじさんに呼び出された時にはその幸せが崩れ落ちるとは思いませんでした。

「雪乃。優理が好きって本当か?」

「…………おじさま。どこからそれを?」

「君の友達の男の子達がそう言っていた」

顔から血の気が引きました。ついにバレてしまったと思いました。そう思ったら、居ても立っても居られずその場を逃げ出しました。後ろから聞こえるおじさんの声が怒声に聞こえてーー

「………」

一日じゅう走り回り、気づけば知らない街を彷徨ってました。トボトボと歩いているワタシの肩をトントンと誰かが叩きます。振り返ると髪の毛を色とりどりに染めた感じの悪い青年達が立っていました。

「ねぇ、君。もしかして、家出?良かったら、お兄さんが泊めてあげようか?」

「えぇ〜、ズル〜。俺も俺も、お前ん家泊まる」

「じゃあ、決定。お前ん家に今すぐレッツゴー!!君もね」

嫌がるワタシを青年達はニコニコ笑いながら、その青年の家へと連れ込みます。そのあとは皆さんの想像通りの事をされました。無理矢理、ベッドへ押し倒され 強引に行為を結びました。青年達から解放されたのはその日から一週間が過ぎた頃です。その出来事から男性恐怖症になったワタシは満足に学校にも通えなくなりました。部屋にこもるワタシを誰より心配してくれたのは優理様だったのです。

「雪乃?少しご飯食べませんか?もう三週間ほどご飯食べてないでしょう」

「………」

「雪乃、私の事を嫌いになりましたか?」

「………なんで。なんで、貴女はいつも自分のことばかりなんですの!!」

「雪乃」

「ワタシの事なんでほっとけばいいじゃないですの。貴女にとっては汚らわしい存在なんでしょう。ワタシなんて」

「…………」

優理様がその場を立ち去ったのは分かりました。ワタシはその場にへたり込みます。そして、膝を抱えて 落ち込むのです。好きな人になんて態度を取ってしまったのかと。落ち込むワタシの背後で再度ドアが叩かれます。そして、好きな人の優しい声。

「雪乃?まだ寝てませんか?聞いて欲しいことがあるんです。ここを開けてくれませんか?」

立ち上がり、半ばヤケクソでそのドアのカギを開けます。優理様がワタシを見て、微笑みます。そして、ドアに鍵を閉めるとテーブルに手を持ったものを置くと突然ワタシを抱きしめます。驚きとパニックで彼女を引き剥がそうとするワタシを更に強い力で抱きしめてくれる優理様。そして、耳元で囁くのです。

「雪乃、私も貴女が好きです。付き合ってくれませんか?」

「えっ………」

ポロポロと涙が無意識に流れます。それを優理様は笑いながら、拭いてくれます。その後は優理様が作ってくれた料理を食べさせてくれました。

「優理様……」

「もう、優理様じゃなくて優理と呼んでくださいと言ってるじゃないですかっ。ほら、言ってみて下さい。優理って」

「……ゆう……り」

「小さくて聞こえません〜」

「っ。優理様と意地悪っ」

どちらともいわず。笑い声が部屋に響き渡ります。しかし、すぐそこまで優理様の闇が迫っていたのです。その日、優理様の姿が見つからず、家じゅうを探し回りました。そして、知らないところに隠し階段が有ることに気づきました。その隠し階段を降りていくと信じられない光景が広がっていました。

「くそっ!なんでダメなんだ!!」

「………お父さん……もう、やめて……下さい……」

十字架に括り付けられているのは間違いない無く、優理様でその隣の十字架に繋がれているのは優理様の妹の早優ちゃんでした。なんで……、おじさんはなんでこんな事をしてるの……。

「リサは生き返られないのか!?くそっ!お前らが役立たずのせいだ!!」

「あぁああああっ!!!」

電流が優理様の十字架に流れます。優理様は顔を顰めて、耐えます。

「お、お姉ちゃん……」

「なんだ?その目は、優理」

「貴方は間違っている、お父さん。そんなことで生き返ってもお母さんは嬉しくないと思います」

「うるさいっ!!」

「あぁああああっ!!!っ……」

「やめてくださいですの。おじさん」

「雪乃!?」

おじさんはワタシを見るとニコッと笑います。その薄気味悪い笑顔に後ずさりしかけますが優理様を助けるためです。

「雪乃、逃げてください。私の事はどうなってもいいですから」

「嫌ですの!!優理様を置いて逃げるなんて」

そう言って、優理様のロープと早優ちゃんのロープを切る。パタンと地面に落ちた二人はワタシの手を掴んで走り出します。後を追ってくるおじさんにがむしゃらに物を放りながら、しかし早優ちゃんが捕まってしまいました。

「雪乃!!私の枕の下に貴女へのプレゼントがあります。それを持って逃げてください」

「優理様は?」

「私も後から追いかけます。心配しないで下さい」

「分かりましたの」

その後、優理様と早優ちゃんがどうなったかは分かりません。風の噂では二人はワタシが逃げ出したその日に亡くなったという事です。

「優理様……優理様……」

泣いても泣いても次から次へと涙が止まりません。大雨の中、ワタシは泣き続けて 優理様から貰った紫苑色の扇を胸に抱きます。

【もう一度、やり直したいか?君のその人生を】

「誰?」

【やり直したいならこう唱えるといい。山中暦日とな】

「山中暦日………?」

【君の願い。聞き届けた】

私の周りを眩しい光が包んで行きます。そして、気が付くと見慣れた土地に居ました。

「雪乃?大丈夫ですか?」

声がした方を向くと小学生くらいの見慣れた人物が居た。そして、ワタシに手を伸ばしてニコッと笑います。

「雪乃、行きましょう。授業が始まってしまいます」

☃☃☃

あの始まりからもう何回同じ事を繰り返してきただろう。その度、見たくない最期を見届け ループへと手を伸ばす。でも、今回の世界線は何かが違う気がする。

「ののさん、授業が始まってしまいますよ。急ぎましょう」

「ええ、那珂様」

そう言って、差し出された手を握ると何故か胸が高鳴る。
(優理様じゃないですのに……)
小さい背中に視線を送る。

(優理様。今回の世界線は何かが起きるかもしれませんの、それにこの世界線の那珂様は貴女と似過ぎていて心配ですの。貴女みたいに無茶をしないか。すごく心配ですの。だから、嫉妬しないで下さいの。ワタシが那珂様に近づきすぎても)

 
 

 
後書き
ののさんと優理様との思い出話です。そして、この話を最後にこの小説を終わりとします。シリーズはゆっくりと書き続けるのでそちらも良ければよろしくお願いしますペコリ 
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