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魔法少女リリカルなのは!?「Gの帝王」

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三匹目《初めての友達と行進》

 
前書き
ども〜

ではよろしくお願いします。 

 
「え、えっと……落ち着いた? 」

「うん……ありがとう」

隆文は何の因果か、空から舞い降りた金髪の少女と出会った。そして友(ゴッちゃん)の死によりなかなか泣き止むことができないでいた。しかし、そんな隆文を彼女は一生懸命慰めるというよく分からない状況になっている。元はと言えば彼女、フェイト・テスタロッサの所為ではあるのだが、それを一般的な常識でどうこう出来るほど状況は深刻ではない。隆文の位置はいつだって少数派である。例えGが友達でもそれで誰かを責め、償わせる事など出来る事ではないのだ。だがそれでも彼女は隆文の友達を踏んでしまった事を悔いており、ちゃんと謝ってくれているのだ。だから隆文も彼女に対して悪い印象は持っていない。

「その……どうしてって言い方はおかしいかも知れないんだけど……どうしてゴキブリが友達なの? 」

「……それは……信じるかは分からないけど。僕はゴキブリの言葉が分かるんだ」

「ゴキブリの言……葉? 」
「やっぱり信じないよね。誰一人だって、こんな事信じない 」

「う〜ん……私は信じる……かな」
「え? 」

「君が一匹のゴキブリにそこまで涙を流して悲しんでるんだ。だからそれが嘘だとは思わない」

「僕がおかしいとか、幻聴を聞いてるとは……思わないの? 」
「あ! そ、そうだよね……そういう可能性だって……ある筈だよね……で、でも!? 私は君のその優しさを信じたいな? 」

隆文はこの時、初めて人の優しさ、温もりを感じた。母親とかから感じる温もりではない。また別の物だ。隆文は初めてこの話を信じて貰えた。最初に疑う事もなく。だからだろう。隆文は彼女今ある笑顔がとても眩しく見えていた。独りでいた今の隆文に光をくれるようなそんな感覚、隆文はそれを感じているのだ。
またフェイト・テスタロッサ、彼女も隆文に対して不思議な感情を抱いていた。むず痒く、彼に対してもっと知りたいと言う好奇心、興味。他の人間とは違い、彼女は隆文がG達と仲がいいというのを大した問題に感じていない。これまでの人間は隆文にGが纏わりつくというだけで隆文を避け、嫌悪感を抱く物ばかりであった。悪く言えば外見で人を嫌い中身は見ていない。しかし彼女は隆文の力、それに関する事を知っても彼に惹かれているのだ。だからこの出会いは隆文にとっても彼女にとっても運命といってもいいのかもしれない。

「もう行かないと」
「あ! また会える!? えっと……テスタロッサさん? 」

「……会えたら……私も嬉しいかな。『またね』、隆文」

そう言い残し、フェイトは去って行った。隆文は彼女がいなくなってもしばらくその方向を眺めていた。時間はとっくに深夜を回り、母親が心配しているのにも関わらず隆文は固まっている。それ程までに彼女との出会いは隆文にとっては衝撃的だったのだ。突然空からやって来て、事故でもゴッちゃんを殺害し、自分を嫌わずに受け入れてくれたのだから。

【何や〜? 隆文? 惚れたんか? 惚れたんか? いいねぇ〜? 甘酸っぱい恋。羨ましい青春やなの? デュフフ、いいな? いいな? これから楽しみや】

「うん……綺麗な子だったね? 天使みたいな…………」

【あちゃ〜こりゃ〜重症やな? 俺の存在にも驚く素振りも見せないとは……と言うか……もう既に隣で嫉妬してる子がいるで? 人間じゃないけど…………】

【ぬぐぐぅぅ……隆文お兄ちゃんの心がぁぁ……心が奪われた!? あんな見ず知らずの女に!? むきー! 】

ゴキ兄と花は隆文を心配して探しに来た。しかし見つけた時には丁度隆文とフェイトが別れるところだったのだ。ゴキ兄は隆文に春が来たと嬉しがっていたが、その隣では花が嫉妬に狂っていた。花はGだ。人間ではない。だが花は夢見ているのだ、隆文とそう言う関係になれる事を。でもそれは一生叶う夢ではない。人間とG達が仲良くする事すら普通はできない事。にも関わらず、Gと人間が添い遂げる事などあり得ない事。花もそれは分かっているのだが嫉妬せずにはいられないのだ。そして花は隆文の足から肩へとよじ登る。普通なら寒気がしそうな光景だが隆文はそんな事何にも感じない。

【隆文お兄ちゃん! 隆文お兄ちゃんってば!? 】
「え? ……な、何? 花ちゃん? 」

【むぅ〜! 今何考えてるの!? あの女でしょ? そうなんでしょ!? 】

「い、いや……その……うん」

【むぅぅ、むぅぅ、むぅぅ! 馬鹿!? 隆文お兄ちゃんの馬鹿!? 嫌い、嫌いだもん! ふんだ! 】
「あ! 花ちゃん!? 」

【はぁ〜。泣かすなよ隆文。花だって女の子なんやで? と言うか早く帰るぞ? お前の母ちゃんが心配してるんやで? 早く顔見せてあげな? 】

「そうだね……ごめん。ありがとう……そ、それと【言わなくていい! 】ゴキ兄? 」

【言わなくてええ。分かっとる。あいつら……逝ったんやろ? 】

ゴキブリと言う身体では表情という物は隆文にも読めない。しかしその声色や雰囲気でG達の気持ちが隆文には分かるのだ。今ゴキ兄は二匹の親友、戦友を失った。だからゴキ兄の声色からは人間に対する怒りと友を失った悲しみを隆文は感じている。でもそれに対して隆文は何も声をかける事が出来ない。その二匹の友を殺してしまったのは隆文と同じ人間なのだから。
その後家に帰った隆文は母親に大層怒られたが、それ以上に母親は隆文の無事を喜んでくれた。その事に隆文はとても嬉しく感じる。そして次の日もまた、隆文はいつもと違う光景に戸惑った。学校で月村すずかが隆文に対して謝罪とお礼をして来たのだ。さらには今までにないお誘いもして来た。よって隆文は戸惑う。どうしたらいいか分からなくなってしまった為だ。

「で? どうかな? 蟲黒君……私とお昼一緒に食べない? 」
「え、えっと……僕とで……いいの? ほ、ほら? 僕って……G呼ぶし。みんなよく思ってないよ? 」

「そんなの関係ないよ。私は蟲黒君とご飯食べたいんだよ? 」

「い、いや……その……僕で……いいなら」
「本当!? じゃ〜行こ? 蟲黒君」

隆文は月村すずかに連れられ、彼女が親友とよくお昼をしている屋上へと赴いた。しかし隆文達が食事を始めてすぐ後の事、隆文達のところに2人のクラスメイトが現れた。その2人とは月村すずかの親友であるアリサ・バニングスと高町なのはである。でもアリサの方はムスッとして隆文とすずかを見ている。単純に不機嫌。だがその理由は簡単だ。それはすずかがアリサ達とのお昼を断り、隆文とお昼食べている事にある。

「すずか? どうしてそんな奴とお昼食べてるのよ。私達とじゃ嫌だって言うの? 」

「え? ち、違うよ!? 私は別にそんなつもりで!? 」
「なら私達も入れろ!? 」

「え…………」

「ひ、酷いじゃない……私達がすずかがそいつと食べたいって言ったからって断ると思ってるの? そんな事するわけないじゃない。ねぇ、なのは? 」

「そうだよすずかちゃん! へへ、私達もお昼一緒してもいいかな? 」

「アリサちゃん……なのはちゃん……う、うん! 勿論だよ」

すずかが2人とのお昼を断った理由は単に隆文と食べたいからじゃない。クラス……と言うより学校で嫌われている隆文と食べたいと2人のに言ったとして断れるかと思ったからだ。しかし2人はむしろすずかの言葉を喜んで聞いてくれるようだ。だからすずかは改めて思う。この2人と友達になれて自分は幸せだと。
対して隆文は少し不安になっていた。あれだけ自分を嫌っていたアリサと同じところでお昼をしている。自分が場違いな、そんな気持ちになっていたのだ。隆文は人に迷惑や嫌な気持ちにさせるのを基本的にはよく思わない。だから自分がいる事で彼女達を嫌な気持ちにさせるかもしれないとそこを気にしていた。しかし隆文の気遣いはいらない物だったと気付かされた。

「ね、ねぇ? この間は……悪かったわ。化け物なんて言って……ごめんなさい」
「え……う、うん。気にしなくても……いいよ。もう気にしてないから」

「はい! もうお終い。辛気臭いのよ! あんた! 私の事はアリサと呼びなさい? 私も隆文と呼ばせて貰うわ! これでもう友達よ? いいわね? 」
「友……達? 」

「あ! アリサちゃんずるい!? 蟲黒君? 私もすずかでいいからね? 私も……隆文君って呼ぶね? これで私も友達! 」

「ああ!? 私も私も! よろしくね隆文君? なのはって呼んでいいから……え!? ど、どうしたの!? どこか具合でも悪いの!? 」

3人は戸惑った。友達になろうと言った瞬間、隆文は泣き出してしまったからだ。しかし隆文は別に悲しくて泣いているわけじゃない。嬉しかったのだ。今まで、G達と話せるようになってから隆文と友達になりたいと言ってくれた人はいない。だから隆文は嬉しかった。この学校に入って出来た初めての友達に。

「そう言えば隆文? さっきから気になってたんだけど……あんたさっきから後ろで何もぞもぞやってるの? 」

「え!? い、いや……なんでもないよ? 」

「そんな訳ないでしょ? 目が泳いでるわよ? 見せなさい! 」
「ダメ!? 見ない方が3人の為だって!? ちょっ!? 」

「うるさいわね!? 気になるのよ! ……あ……ご、ゴゴゴ……ゴキゴキゴキ…………」

「だから言ったのに…………」

隆文は定期的に手を後ろに回していた。お昼中そんな事をやっていれば気にならない訳ない。しかしそれはお昼には絶対に見たくない物だった。よって止めた隆文を無視し、それを覗いたアリサは言葉を失い。静かに自分のいた場所へと戻るとお弁当箱の蓋を閉じた。でもまだアリサの弁当は残っている。アリサは完全に食欲をなくしてしまったのだ。顔は引き攣り、ブルブルと寒気を感じている。

「アリサちゃん? どうしたの? 隆文君の後ろに何があったの? 」

「聞かないですずか。思い出したくない。食欲が消え失せたわ」
「うん……何となく分かったよアリサちゃん。ドンマイなの」

「ご、ごめん…………」

そして放課後、隆文が帰ろうとした時の事。またもや下駄箱でGが待っていた。しかしそのGは隆文がよく知る個体。隆文にとっては家族と言ってもいい。そう、隆文を待っていたのは花だ。それもすごく申し訳なさそうな雰囲気を出している。でも隆文はそんな花に笑いかけた。

「花ちゃん、一緒に帰ろうか? 僕は何も気にしてないから、ね? 」

【本当? う、うん! ごめんなさい隆文お兄ちゃん……嫌いなんて嘘だよ。好き、大好きだから! 】

「うん、ありがとう花ちゃん。それじゃ〜帰ろう」

花は隆文の肩に乗り、通学路を歩く。花と楽しく話をし、すっかり仲直りした花と隆文は終始笑顔だった。しかしその時、隆文達は道路の隅っこを歩くGの群れを見つけたのだ。しかも先頭になって歩いているのはゴキ兄である。

【俺達ゃ汚れた地球の兵隊や〜! 】
【【【【俺達ゃ汚れた地球の兵隊だぁ〜!】】】】

【ゴミ箱、下水に住み込んで〜】
【【【【ゴミ箱、下水に住み込んで〜】】】】

【人が残した食事を貪るぞ〜】
【【【【人が残した食事を貪るぞ〜】】】】

【地球の為! 】
【【【【地球の為!】】】】

隆文はまるでどこぞの兵隊のように並んで歌っているその隊列の後ろに並んで隆文もそれについて行く。側から見たらおかしな光景だが隆文はいたって真剣だ。ただゴキ兄に付き合っているだけ。花も隆文の肩でノリノリで歌い始める。ゴキ兄もいつの間にか後ろに並んだ隆文達の存在に気づいたようだがそれを嬉しそうにし、さらに歌を続け歩く。

【俺達ゃき〜ん(菌)の伝道師〜】
【【【【【「俺達ゃき〜ん(菌)の伝道師〜」】】】】】

【だ〜れに言われた、わ〜けじゃ、な〜いけど〜】
【【【【【「だ〜れに言われた、わ〜けじゃ 、な〜いけど〜」】】】】】

【か〜らだに、き〜ん(菌)が大量や〜】
【【【【【「か〜らだに、き〜ん(菌)が大量だぁ〜」】】】】】

【嫌われ者!】
【【【【【「嫌われ者!」】】】】】

隆文はしばらくゴキ兄達と行進して楽しんでいたがゴキ兄達が街の下水遠征に行くと言うので途中で別れた。しかし花は一緒に帰るといい、隆文と家へと帰る。そして隆文は花を自分の部屋に連れ込むと残っていたお菓子を砕き、花の前に差し出した。隆文はこうしてよくG達にお菓子をあげている。お昼の時は弁当を。アリサが昼時に食欲をなくしたのは隆文がG達に弁当を分けていたのを見たからだ。確かに食事をしている最中に五、六匹のGが群がってるところを見れば食欲など消し飛ぶだろう。

【隆文お兄ちゃん? これ美味しいよ? 】

「そう? まだあるからいっぱい食べていいよ」
【本当!? やったぁ〜モグモグ…………】

隆文とG達の絆は深い。そう思える瞬間である。しかしその裏では母親の苦労が絶えないと言うのを忘れてはいけない。
 
 

 
後書き
次回もよろしくお願いします。 
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