魔法少女リリカルなのは!?「Gの帝王」
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二匹目《犠牲と出会い》
前書き
どうも〜
ではよろしくお願いします。
ある日の放課後、隆文は妙な胸騒ぎを覚えた。何故か周りのGが騒ついている。Gの言葉が分かる隆文には周りから聞こえてくるGの話し声が何となく聞こえているのだ。そして隆文が帰ろうとした時、一匹のGが隆文の下駄箱で待っていた。隆文は首をかしげるがGはそんな事をお構いなく言葉を続ける。生徒が何者かに誘拐されたらしいと言っているのだ。しかし何故Gがそんな事で隆文に報告するのか。人間など自分達を殺す相手でしかないのにも関わらず。だがそれは隆文クラスメイトだからという理由がある。人間は好きではないG達だが隆文の事は大好きなのだ。だから隆文の周りが壊れる事をG達は良しとしない。
「その場所……案内出来る? 」
【おうよ。だが隆文だけじゃ危ないぜ? 警察に連絡するのがいいと思うぞ? 】
「……僕の言葉何て……信じないよ。ゴッちゃんだって知ってるでしょ? 」
【それは……はぁ……人間て冷たいよな? 】
「みんながみんなじゃないよ。君達だってよく言ってるじゃないか、みんながみんなそうじゃないって? 」
【フフ、ちげぇね。よし! 行くか隆文? 】
「うん! 」
隆文はゴッちゃんの案内で誘拐犯が向かった場所へと向かった。しかし場所が少し遠かった所為もあり、すっかり日は落ちてしまった。恐らく母親は心配しているだろうと隆文は感じている。だが誘拐された子を隆文は放っておけなかった。何故なら誘拐された生徒とは隆文と同じクラスの女の子、月村すずかであるからだ。では何故か放っておけないか、それは彼女が唯一隆文を最後まで庇っていたからだ。教室にGが出るのは隆文の所為じゃないと。勿論今となっては彼女も隆文を君悪がる1人なのだが隆文は今までの行為が嬉しかったのがあり放っておけなかったのだ。
「ここ? 」
【ああ、ここだ】
「廃墟じゃん…………」
【何だ隆文? 怖いのか? 】
「怖くないわけないじゃん…………」
【それはそうだな。だが安心しろ! お前には俺達がついている】
ゴッちゃんがそう言った瞬間、辺りが騒ついた。隆文は暗くてよく見えてないが感覚でわかった。今自分の周りには足の踏み場のない程の仲間(G)に囲まれていると。だから隆文は一気に心強くなる。踏み出せずに止まっていた足を動かし、隆文は廃墟の中へと入っていった。
「ん? 何だお前? どうしてこんな所に入ってきた! さっさと出て行け! ここは子供の来るところじゃない」
「……つ、月村さんは何処? 彼女を返して下さい! 」
「何? ちっ、仕方ない。知っているのならこのまま帰せないな。悪く思うなよ? ん? ……お前……君悪いな? 」
黒服の男は隆文から何かを感じ取った。雰囲気がおかしかったのである。子供がこんな所に来れるだけでも不思議なのに、自分が隆文に近づいても怖がる素振りも見せない。まさに黒服の男からしてみればとにかく君が悪いのだ。しかし黒服の男はもう一つ疑問があった。目の前には子供が1人、だが周りが騒がしい気がするのだ。しかし暗い廃墟の中は隆文しか認識することが出来ない。
「お前……1人で怖くない……のか? 」
「怖いよ? でも……1人じゃないから! 」
「何? っ!? ひっ!? な、なんだこいつら!? うわ!? 気持ち悪い!? やめろ!? 嫌だ!? あがっ!? ひ、ひっ!? うわぁぁぁぁあああああああぁぁぁ…………」
【たわいもない。俺達一匹では太刀打ちできなくても万なら何とかなる。隆文? これがお前の優しさが生んだ人徳ならぬG得だ! ここにはお前を慕わない同士は一匹もいない! 】
「助かるよ、行こう! 」
黒服は気絶してその場に倒れ込んだ。何故そうなるのか。それは身体中をGが這い回り、黒服の男を埋め尽くしたからだ。自分を這い回る物がゴキブリと分かった人間が普通正気でいられるわけがない。しかもそれが自分を包み込んだとなれば意識など簡単に消し飛ぶのだ。
そして隆文は見張りを片付けながら階段で上へと上がっていく。でもしばらく上がった所で隆文は足を止めた。話し声が聞こえて来たからだ。その声の中には月村すずかの声も聞こえる。隆文はここだと思い慎重にその階にある部屋を覗き込む。すると数人の黒服の男達と縛られて寝かされている月村すずかの姿を確認した。
「どうしよう…………」
【そうだな? 相手は1人じゃないから……ここが潮時じゃないか? 流石にこの人数は俺達でも辛いものがあるぞ? 俺はお前が死ぬ所なんて見たくない】
「で、でもそれだと月村さんが…………」
【それはそうだが……っ!? おい、隆文逃げろ!? 】
「何をしてるクソガキ! 」
「え!? あぐっ!? は、離して!? 」
【マズイぞ…………】
隆文はたまたま部屋の外で用を足していた黒服に捕まり部屋の中へと連れ込まれてしまった。G達も隆文の命がかかってるが故に中々手が出せない。そして隆文は月村すずかの横へと投げ落とされ、彼女も今初めて隆文の存在を認識した。しかし月村すずかは自分も隆文を君悪がり始めた手前、どう話していいか分からない。でも隆文を見た月村すずかは不思議な感覚に襲われた。どうして隆文は怖がっていないのかである。そう、隆文は今の状況を恐れていない。これは異常であり、他の同じ境遇にある月村すずかにとっては意味の分かたない心情だ。
【文ちゃん、文ちゃん? 大丈夫か? 】
「あ……」
【喋らなくていい。だからそのまま聞いて。あと少ししたら僕らが隙を作る。だから隆文はその子と逃げるんだ。いいね? チャンスは一回だ。僕らも不死身じゃない。何匹かは死んでしまう覚悟だ。だから絶対逃げて】
「そんな!? 」
「おい、うるさいぞ! 」
【文ちゃんダメだって。それじゃ行くよ? 今ぶしっ…………
「あ! なんか踏んだ……げっ!? ゴキブリじゃねぇかよ!? まったく、どうしてこういう所はゴキブリがいるんだろうな? ん? どうしたクソガキ? 」
「ゴッさん……ゴッさん……ゴッ……さん…………」
隆文は拳を思いっきり握り締める。今、目の前で自分を助けようと動いてくれた仲間が潰された。それにより、隆文は怒りに支配される。しかし黒服の男達や隣にいる月村すずかから見ればそれは意味がわからない。と言うより何に怒りを感じ、怒っているのかが他には分からないのだ。
「本当に君の悪いガキだな? まぁ、どちらにしてもお前には用があるわけじゃないし……殺すか」
「やめて!? 蟲黒君は関係ない!? 」
「なんだ、知り合いか? なるほどな? だから助けに来たのかこのクソガキは」
「え…………」
「何を驚いてるんだ? 友達か何かなんだろう? 下の階で伸びてた奴が言ってたぞ? お前を助けに来たんだってよ? 」
「蟲黒君が私を助けに? そんな事あるわけ…………」
月村すずかは信じられなかった。自分にはそんな事をして貰う理由も資格もないからだ。何故なら自分は隆文を君悪がった人間の1人。彼から見ればろくな人間じゃない筈と月村すずかは思っていた。しかし隆文は自分を助けに来たと聞かされ、彼女はまだ信じられない。するとその時だった。隆文が口を開く。ただし、様子がおかしい。
「よくも……ゴッさんを殺したな…………」
「ああ? ゴッさん? ゴッさんって誰だ? 」
「殺したな…………」
「だから誰だってんだよ!? マジで気持ち悪いぜこいつ? もういい、殺せ! 」
「やめて!? 」
「へへっ……へへへ……もうこれはただ月村さんを助ける為のものじゃなくなった…………」
「あ゛あ゛? 」
「ゴッさんの……とむらい合戦だ! 」
隆文がそう言った瞬間、廃墟の窓という窓、ドアというドアからG達が雪崩のように入り込んだ。だがおかしな事に最初に集まったGの数を遥かに超えているのだ。月村すずかはあまりの光景にショックで気絶してしまい。黒服の男達はGの群れに呑み込まれた。しかしそれを睨みつけながら見ている隆文におかしな変化があったのだ。隆文の瞳、元は黒である筈のそれは何故か緑色に輝いている。
【隆文……怪我がなくてないよりだ。だが…………】
「ゴッちゃん……ごめんゴッさん死んじゃった…………」
【気にするな。親友を失ったのは俺も悲しいが、人に踏まれるのは俺らの宿命よ。人間はそんな事何とも思わないかもしれないがお前が気にしてくれただけで俺らは嬉しいぜ? さぁ〜帰ろう? その子も送ってかなきゃな? 】
「うん…………」
ゴッさんはゴッちゃんの親友だ。だから悲しまないわけがない。だがそんな事を気にしていてはG達はキリがないと切り替えも早い。人間と違い、この世には数え切れない程の同士がいるのだから。
その後だが隆文は月村すずかをおぶさり廃墟を出た。そしてまずは彼女を家へと送る。しかし隆文は彼女の家を知らない。でもその辺は問題なかった。何故なら彼女の家はG達が知っていたからだ。ゴッちゃんに連れられ、隆文は月村邸を目指す。するとその途中で月村すずかは目を覚ました。
「あれ……ここは? 」
「ああ、起きたの? 多分もう少しで月村さんの家だからもう少し休んでていいよ? 」
「う、うん……重くない? 」
「え? いや、重くない」
「そうなんだ……そ、その……ありがとう……助けに来てくれて。……ごめんね? 私蟲黒君の事避けるようなってたんだ? 」
「いいよ。気にしてない。それに月村さんは最後まで僕の事を庇ってくれたでしょ? これはそのお礼。だから気にしないでいいよ? 」
月村すずかは何を思うのか。何を感じたのか。隆文に対するイメージを少し変えつつあった。君が悪いのは変わらない。しかし確実に分かることが彼女にはあった。それは隆文がただの優しさしい少年だということである。
【隆文ここだ】
「ついたみたいだね? それじゃ……また明日」
「え? う、うん…………」
月村すずかを下ろした隆文はすぐに自分の家へと向かう。それを月村すずかは見えなくなるまで見ていた。疑問が絶えないのだ。何故か彼は自分の家を知っていて、どうして彼のいる所にGが現れるのか。彼女の頭の中は疑問でパニックになっていた。しかし彼女がまずした事は自分の無事を家族に知らせる事である。当然だが彼女の帰りを彼女の姉は涙を流して喜んだ。彼女を思いっきり抱き締め、一体何があったのかを詳しく尋ねる。でも月村すずかは隆文について詳しくは話さなかった。彼女は単純に助けてくれた隆文に迷惑をかけたくなかったのだ。また明日、改めて隆文にお礼を言おうと決意する。そしてもう避けるのは止めようと心に決めたのだった。
【遅くなっちまったがお前の母親心配してるんじゃないか? 】
「うん…………」
【ああ〜それと花の奴もな? あいつはお前に対して好感持ち過ぎてるからよ? あんまり心配かけないでやってくれ? 】
「分かってるよ」
【ここまで来れば後は分かるだろ? それじゃまたな? 隆文? おやすみ】
「うん、おやすみゴッちゃん」
【ああ〜そうそう、ゴキ兄の奴がよ? 今度街の下水遠征行こうって言ってたんだが……返事が来ないで困ってるんだ。だからお前から言っといてくれなぶしっ…………
「あれ? 何か……踏んだ? あ!ゴキブリ!? ん? 君…………」
ゴッちゃんが足を止めたその瞬間の事だった。上から金髪の少女が降ってきたのだ。そしてそれが運悪くゴッちゃんを踏みつける形で着地した。それによりゴッちゃんは絶命した。何の過程もない。一瞬で消えたのだ。しかしそれがG達の宿命。気付かれず踏まれてしまう事故である。
勿論隆文はそれを唖然と見て固まっていた。また目の前で普段話をしている仲間が踏まれてしまったのだ。けどそれを目の前の少女が理解できる筈がない。でもそれは隆文も理解しているのだ。今のは事故で目の前の少女には何の罪もない。偶然だ。隆文はそう言い聞かせて取り敢えず落ち着く。そして目の前の少女を見た。
「君は誰? 」
「え、えっと……フェイト……フェイト・テスタロッサ。君は? というか……どうして泣いてるの? 」
「僕は……うっ……ひぐっ……蟲黒 隆文。その……君が踏んだのは……うっ、うっ……僕の……友達で…………」
「え…… 友達って……え? 友達? え? 」
フェイト・テスタロッサは信じられなかった。今自分が踏んだGが目の前の少年の友達であると言う事を。だから自分の踏んだ所を何度も見直す。しかしどうにも答えが出ない。自分が目の前の少年にどう接していいのか分からないのである。彼女から見れば意味も分からず涙を流し、自分が踏んだGに対して友達だと言うおかしな少年というかイメージだ。
「あ、あの……ごめんね? その……えっと…………」
「ゴッちゃん……ひぐっ……うっ、うっ……ゴッ……ちゃん…………」
彼女はうろたえた。少年は悲しみに歯止めが効かなくなってきたのか本気で泣き始める。だから彼女も謝るしかない。こんなカオスな状況で少年と少女は出会ったのだ。運命……そう言ってしまえば聞こえはいいかもしれない。しかしその出会いにはゴッちゃんという尊い犠牲があった事を忘れてはいけない…………
後書き
次回もよろしくお願いします。
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