EFFECT
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ホグワーツ魔法魔術学校 2-2
身支度を終え、部屋の隅にある鏡の前に立つ。
黒いシャツに白のズボン。どこにも属さないという意味で、白いネクタイの首に巻く。
マダム・マルキンの暴走で出来上がった制服である。
「普通でいい」と言った俺の注文など一つも耳に入っていなかったようだ。...まあ、他の生徒と区別がつく分には、悪い事だけではないということにしておこう。
さて、そろそろ新入生の組み分けが始まる頃だろうか。
リズに留守番を頼んで、隠された部屋を後にする。今からなら、全員の組み分け後に登場出来るだろう。
「今年度から新たな制度を設ける事になった。グリフィンドール、スリザリン、ハッフルパフ、レイブンクローのいずれの寮にも属さない...言うならば《インディペンデント》じゃ。......おお、来たようじゃの。彼が、そのインディペンデント生...トール・オルフェウスじゃ!」
扉を開いたのと同時に、全生徒と全教師の視線が集中する。
その視線の中を進み、教師側のテーブルへ向かう。爺様は《インディペンデント》についての補足条項を語り始めた。
「インディペンデント生は、他の寮生とは違って得る得点は存在せん。代わりに、毎週一番得点が良かった寮に属し、インディペンデント生が取った得点はそのままその寮の得点となるのじゃ。...もし、この中に《インディペンデント》になりたい者がおるのなら、我々教師全員の推薦状と、森の番人と城の番人の推薦状が必要となる事を付け加えておこうかの」
「御紹介に預かった、トール・オルフェウスだ。新入生一同は、俺と同級生という事になる。せいぜい頑張って勉強に励んでくれ。
ーーさて、ここで俺からの贈り物だ。清聴してもらえるとありがたい...」
鼻から大きく息を吸い込み、喉を震わせて音を奏でる。
雑談に湧いていた者、一人だけの思考に浸っていた者、批難の声を上げていた者。この場にいる全ての者は、俺の歌声に惹き付けられていた。
静寂の中で響くのは、異なる世界で神に捧げるモノとして祝いの場でよく歌われていた曲。曲名は覚えていない。
彼らには、聞いたことのないリズムとメロディと言語が一度に耳に入って行く。全ての意味を理解する事など不可能だろう。それでも、静寂が崩れる事はなく歌い切った。
色々な表情の者達がいる中、役目を終えた俺は「御静聴、感謝する」とだけ告げてその場を離れ、爺様が特別に用意したインディペンデント生用のテーブルに着いた。目の前に並ぶ料理の数々に舌鼓を打ちながら、各寮の監督生との雑談を楽しんだ。
翌日。少し早く教室に向かおうとしていた俺を足止めしたのは、眼鏡を掛けた男子だった。背丈、顔付きからして俺と同じく一年生と見ていいだろう。...あのローブの色からするに、グリフィンドール生か。
「おい!」
「そんなに怒鳴らなくても聞こえている。それに、俺は『おい』なんて名前ではない」
「うるさい! お前、いい気になるなよ。あんな歌で、僕の心が動かされたと考えるなよ! いつか、お前を超えてやるからなっ!!」
「......そうか。頑張れよ」
威勢のいい少年だな。...さて、どこの教室だったかな?
眼鏡の少年をその場に残して、教室のある棟へと急いだ。
「おーい、ポッター! 早く行こーぜ!」
「あ...ブラック」
「シリウスでいいって! 今の、昨日歌ってたオルフェウスって奴だろ? どうしたんだ?」
「......絶対に、超えてやるっ...!」
去って行くトールの背中を睨み付けながら呟いた一言に、全てを察したシリウスは気まずそうに「あー」と声を漏らした。
「女子の目がハートになってたもんなぁ。ほら、あの子も...えーと、リリー・エバンズだっけ?」
「絶対に負けないんだからな!」
「じゃあ、この後の飛行訓練で勝負したらどうだ?」
「それだ!! 僕の事はジェームズと呼んでくれ、シリウス!」
ガッチリと交わされた握手。その後、彼らの関係が友人から親友という悪友になるとは誰も思わなかった。たった一人を除いて...。
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