異世界系暗殺者
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自己紹介の時間(2016/06/22 一部修正)
前書き
まえがき(2016/03/22)
イッキの基本口調をタメ口系に変更しました。
【視点:烏間】
「あー、何か邪魔しちまったみたいだな。俺、すぐに出て行くんで。お邪魔しました」
暗殺対象の頭上――正確には、この3-Eの教卓真上に現れた、影の様な黒いナニかから落下してきた彼は、落下時の衝撃に反して無傷で黒板を破壊したかと思えば、そう言いながら何事も無かったかの様に教室から出て行こうとした
「「「「「「「「「「ちょっと待てーーーーー!!ってか、何で窓から出て行こうとするーーーーー!!?」」」」」」」」」」
そして、そんな彼を俺達教師より早く止めたのは3-Eの生徒達だった。
「俺のことなら気にすんな。そして、窓から出て行こうとするのは、そこに窓があるからだ」
「「「「「「「「「「いや、気になるから!あと、窓から出て行く理由を登山家の山登りみたいに言うな!!」」」」」」」」」」
「おおっ!見事なツッコミだな。ここは優秀なツッコミニストが揃っているみたいだ。コメディアン養成所か何かか?」
確かに、彼の言う通り見事なまでに息の合ったツッコミだ。この阿吽の呼吸を暗殺にも活用できれば、暗殺成功率も格段に上がるだろう。
それにしても、彼は随分と変わった感性の持ち主の様だな。ここの生徒は大人びていても、精々高校2年生程度の見た目だ。その上、全員が制服を着用している。どこをどう見れば、ここがコメディアン養成所に見えるんだ?
「ヌルフフフ。ここは中学校の隔離校舎で、彼らは中学生です。コメディアン養成所ではありませんよ」
「ああ、中学校。なら、授業中だったよな。邪魔して悪かった。じゃあ、そういうことで失礼するわ」
暗殺対象が3-Eのことを説明すると、彼は納得したように頷き、謝罪をしてから改めて窓から出て行こうとする。
「まぁ、待ちなさい。そう急いでここから出て行く必要も無いでしょう。私達としても君が何者で、どういった経緯でここに現れたのか気になりますし。
教室に落下したお詫びに説明くらいしていっても、罰は当たらないんじゃないですか?君の言っていたクソ神をぶっ飛ばす宣言も大変興味深いですし」
「………普通の人間が理解できないことを説明する意味ってあんの?普通は無ぇと思うけど。ってか、ここって中学校の校舎なんだよな?
何でそんな所に黄色いタコ型火星人がいるんだ?もしかして、ここって地球じゃねぇの?ついに人類は火星移住に成功したとか?もしくは地球が火星人に侵略された?」
「ここは地球で合っていますよ。火星人にも侵略されていません。そもそも私は火星人などではありませんから。私は―――」
「ああ、異世界人か」
「そう。私は実は異世界人―――って、そんな訳ありません!!私は――」
「見事なノリツッコミだな。そして、異世界人でなければ未来火星人か?」
「未来火星人って何ですか!?どんだけ火星人推しなんですか!!?先生は地球生まれですし、タイムマシンなんてものを使った記憶も在りませんよ!!?」
「これまた、惚れ惚れするノリツッコミ。ってか、あんた先生なんだ。………君達、苦労してんだな」
「「「「「「「「「「初対面で同情の眼差しを向けて来るとか、失礼にも程があるだろ!!」」」」」」」」」」
「ハハハハッ!ここは先生も生徒もツッコミスキルが優秀だな。やっぱり、コメディアン養成所だろ。あっ、ちなみに俺は普通の人間とタコもどきには興味ねぇ。宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら俺の所まで来てくれ」
「「「「「「「「「「涼宮ハ●ヒかよ!!?」」」」」」」」」」
「……まさか、このボケにツッコミが返って来るとは………。まぁ、悪ふざけはこの辺りにしておいて、納得できるできないはさて置き、迷惑をかけた詫びに説明くらいはしてから出て行くとしますか」
彼は暗殺対象と生徒を散々弄ったかと思ったら、割とあっさりと自分がここに現れるまでの説明を始めた。そして、その内容は俄かには信じがたいものだった。
「なんと!君は神を自称する高位次元生命体という存在によって、この世界に送られてきたというのですか!?」
「そうそう。ルールも目的も不明瞭で、勝ち過ぎても負け過ぎてもペナルティの課される世界って名の退屈極まりないクソゲーに飽き飽きしていたら、クソ神様が異世界に送ってくれたんだよ。
異世界で俺がどんな楽しみを見出せるか気になるとか、観察者気取りな有難いお言葉を付け加えてね」
この場にいる者全員の心中を暗殺対象が口にすると、彼は元の世界と自分をこの世界に送り込んだ神を思い出したのか、うんざりした顔で返事を返した。
「異世界トリップ、キタコレ!!……けど、運が悪いね。キミ」
「ああ。今日1日で体感高度10000mからパラシュート無しでのスカイダイブをした上、この教室の教卓に激突だ。確かに運が悪い。
ここに来る直前にしたトリップ特典籤で全技技術と身体スペックが上がる特典を引いた上、空の玉璽が無かったら即死だっただろうな」
「そういう意味じゃないんだけど……。ってか、トリップ特典とか貰って来たの!!?あと、やっぱりその変な靴ってA・T――ってか、空の玉璽なの!!?」
不破さんのテンションが上がったかと思えば、すぐ様この世界にやって来た彼に対して不憫そうな顔を向けた。そんな不破さんに対して、彼は特に気にすることなく自分に起こった不運を告げて来る。
というか、体感とはいえ高度10000mから落下し、教卓に激突してよく無事だったな。彼の話から察するに、この世界に来る直前に何かしらの肉体強化を受けたみたいだが……。あと、不破さんのテンションが何故かまた上がった。
「ああ。某世界で明王、天剣と呼ばれている破戒僧と感情欠落者の身体能力と知識も含めた戦闘技術。色んな狩人がいる某世界の暗殺一家の毒耐性等を含めた身体能力と知識を含めた暗殺技術。
某暴風族が蔓延る世界の最強の玉璽と全暴風族の技を含めたA・T技術。そして、殺し合いを含めた戦闘に物怖じしない精神力。以上4つの特典を貰った」
「あ、安慈和尚と宗君の全スペック以外に、ゾル家のスペック。全暴風族のA・T関連技術って、この3つだけでもチート過ぎでしょ。
その上、戦いに物怖じしない精神力って……。ちなみに蜃気楼を応用した分身と瞬歩みたいな高速移動とか可能なの?」
「ああ、炎の道系の技か?使えるな。ってか、女性専用的な荊棘の道の技も放つ瞬間に関節を外せば再現できるから、ぶっちゃけ全ての道の技が使える。
玉璽無しでも縮地が使えるし、炎の道の技と併用すれば、瞬歩もどきはできるだろうな」
………彼と不破さんの会話を全て理解することはできないが、いくつか分かったことはある。彼には暗殺者としての技量が備わっているということ。そして、かなりの速度で移動することができるということ。
後者については眉唾物であり、前者についても疑わしくはあるが、徒手空拳による破壊力については、黒板を粉々にしたことから証明済み。
彼がこのクラスに加わってくれれば、暗殺対象の暗殺確率も格段に上がるだろう。地球存続の為、彼には是が非でもこのクラスに入って貰いたい。どうにか交渉できないものだろうか?
俺がそんなことを考えていると、暗殺対象が彼の肩に触手を置き、話し掛けた。
「触手も無い人の身で瞬歩の真似事が可能。……末恐ろしいとは、正に君の為にある言葉です。しかし、残念ですね。どれだけの才能を持っていても、来年の3月には地球が無くなってしまいます。不破さんが言っていた通り、君は運が悪い」
「は?何言ってんの、このタコもどき」
「いや。そいつの言う通り、このままでは来年の3月に地球は無くなってしまう。そいつ、自らの手によって破壊されてしまうんだ」
暗殺対象の発言を信じられずにいる彼に対し、俺は暗殺対象の発言を肯定し、彼に暗殺対象の説明を始めた。
「…………つまり、そのタコが生きていたら来年の3月には地球が破壊されてしまうから、期限までにタコを殺さなければいけない。
そして、そのタコを日常的に殺せるチャンスがあるのは、そのタコが担任を務めるこのクラスの生徒と教師として同僚のあんたのみ。このクラスは差し詰め暗殺教室って訳か?」
「そういうことだ」
「クソゲー世界から解放されたかと思えば、今度は無理ゲー世界とか、誰得だよ。けど、職業が中学生 兼 暗殺者ってのは斬新で面白いかもな。クソ神も中学生らしい青春を謳歌することもできる世界とか言っていたし。
残り僅かになるかもしれない期間を楽しみ探しの旅に費やすより、触手タコもどきの暗殺に費やした方が退屈凌ぎになる上、世界も救えるかもしれないし、上手くいけば一石二鳥だ。……おい、あんた。烏間さんって言ったっけ?」
「ああ。そうだが、どうした?」
「俺をこのクラスに編入させることはできるか?この世界じゃ戸籍も無い、異世界からやって来た不審人物だけど」
「………戸籍が無い、となると少し難しいな。流石に君が話した内容をそのまま上に伝えても、信じて貰える訳が無いからな。
無銘の暗殺者ということにしても、どこで見つけたのか?また、どの様にして日本に入国したのか?と問われるだろう」
「なら、いっそのこと殺センセーが海外で拾って来たってことにしたらどうですか?」
どの様にすれば、穏便に政府上層部を納得させ、彼の日本国籍の戸籍を用意できるかを考えていると、不破さんがそう告げてきた。
「日系中国人ってことにして、殺センセーが中国に杏仁豆腐買いに行った時に、スラム街的な所で追剥ぎにあったってことにするの。で、その子は親無しの子で、暗殺の才能もあるから連れ帰って来た、ってことにすれば戸籍や入国の件も解決しそうじゃありませんか?」
「確かに、スラム街の人間には戸籍を持っていない者もいると聞いたことはあるが、どうして日系中国人なんだ?不破さん」
「特に意味はありません。強いて言うなら、殺センセーが行く海外は中国の比率が高いからです」
「まぁ、いい。それならコイツが勝手にしたことな上、暗殺対象自身が認めた暗殺者として上の人間を納得させ易いだろう。
おい、そんな訳だ。必要ないとは思うが、念の為に今からマッハで中国まで行き、お前と彼のアリバイを作って来い」
「にゅやっ!?しかし、烏間先生。私は給料日前で手持ちがかなり少ないです。名目が杏仁豆腐なら、杏仁豆腐を買ってこなければ怪しまれてしまいます」
「ッ!これをやるからさっさと行け!この変色タコ野郎が!!」
俺が千円札を暗殺対象に突き出すと、暗殺対象は嬉々として受け取り、マッハ20で教室の窓から文字通り飛び出して行った。
「さて。それでは戸籍を作るにあたって君の名前を聞いておく必要があるんだが……」
「そういえば、自己紹介をしてなかったな。俺の名は南樹。気軽にイッキって呼んでくれ。中国人っぽくないから、父方が日本人だったって設定にしといてくれると助かる」
こうして、この暗殺教室に、異世界からの来訪者――南樹君が加わった。
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