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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三十三話 期末テストその五

「私は」
「そうですよね」
「ではです」
「はい、それじゃあ」
「この及第粥もお召し上がりになられ」
 そして、というのだ。
「テストに励まれて下さい」
「これから数日が勝負なんですよね」
 そのテスト期間の間のことだ。
「気合入れてしないと」
「調理と一緒ですね」
「いい様にしないと。そういえば」
 ここで僕は気付いた、小野さんの言ったことから。
「小野さん、シェフの方は何時でも」
「お料理を作る度にですね」
「勝負ですよね」
「そうなるでしょうか」
「テストは年に五回ですけれど」 
 中学生や高校生はだ、小テストはあっても勝負と言っていい様な大きなものはそれぞれの中間、期末テストだけだ。
 だが、だ。シェフの人はというと。
「シェフになるといつもですよね」
「そう言われますと」
 小野さんもこう答えてくれた。
「勝負とまではいかないですが」
「それでもですよね」
「常に真剣に作っていますから」
「いつもテストみたいなものですよね」
「かなり強く言いますと」
 小野さんは考えるお顔でお話してくれた。
「そうなりますか」
「常に勝負ですか」
「少なくともまずいものはです」
 シェフとして、というのだ。
「作りたくありません」
「そうですか」
「そしてです」
「そして、ですか」
「はい、食中毒はです」
 特に今の季節は気をつけないといけないことだ、食べものがとにかくちょっと油断すると傷んでしまうからだ。
「気をつけています」
「あれは駄目ですよね」
「あってはなりません」
 食中毒は特にというのだ。
「今も食品の保存には気をつけています」
「それはテストというよりは」
「当然のことです」 
 テスト以前のことだというのだ。
「料理をする者として」
「そうなんですね」
「ですからテストというよりは」
「また別ですか」
「そうです」
「勝負ではあってもですね」
「また違う、仕事の中で」
 まさにというのだ、そう話してだ。
 僕の目を見てだ、そのうえでこう問うて来た、
「如何でしょうか」
「及第粥の味ですね」
「はい、それですが」
「そうですね、中華のお粥に」
 それとだとだ、僕は食べつつ答えた。
「そこに豚の内蔵が入っていますが」
「合っていますか」
「このことに驚いています」
 心からだ、このことは。
「合わないと思いますが」
「それが、なのです」
「合う様にですね」
「料理しています」
 こう僕に笑顔で話してくれた。 
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