八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三十二話 テスト勉強その九
「わかりやすいから」
「そうした人はまだわかりやすくて」
「逆にわかりにくい人もいる」
「そうした人いるよね」
「今もね」
「大江健三郎とか」
この人の名前を誰かが出した。
「あの人の作品はね」
「結構以上にわかりにくい?」
「あと最初の頃の吉本隆明とか」
「ああ、吉本」
文学痛の小山田君がここで大きな声をあげてその巨体を動かした。
「あいつ何言いたいのかわからないから」
「最初の頃のは?」
「うん、教科書に出なくてね」
それこそとだ、小山田君は強く言った。
「よかったよ」
「あの人何が言いたいのかな」
「さあ」
小山田君は本気で首を傾げていた。
「最初の頃のあいつはね」
「何が言いたいのかわからないんだ」
「何を書いているのかわからないから」
難解とかそういう話ではなく、というのだ。
「戦後最大の思想家になれたっていう人もいたし」
「戦後最大の?」
「そう、何かよくわからないけれど凄いってことになって」
「難しいこと書いてるから凄いことを言ってる?」
「そう思われたんじゃないかな」
こう言う小山田君だった。
「それでね」
「まあそういうのあるよね」
「そうよね」
僕達もここで皆で話した。
「難しいこと言ってるから有り難がるっていうか」
「これを読んでる私凄いとかなって」
「自分が賢くなった気もして」
「それで崇めるとか」
「そんなの?」
「そういえばラノベでも」
ライトノベルでもだ、軽く読めるこちらでも。
「何か小難しい台詞どんどん言ってる作品あったら」
「それを読んでる俺知的?って勘違いするとか」
「アニメでもね」
「そういうのあるわよね」
「それって吉本と同じなんだ」
「吉本隆明の作品読んでる時と」
その初期のだ。
「あんな何書いてるのと」
「そうしたラノベも一緒なのね」
「とどのつまりは」
「そうじゃない?だから僕吉本が教科書に出てなくてよかったよ」
彼の作品がとだ、小山田君は本気で言っていた。
「出てたらわからないから」
「それこそ先生の言ってることそのまま答案に書く?」
「それしかないよね」
「そんな何書いてる作品だと」
「もう理解出来ないから」
「それで何書いてるかわかったら」
吉本隆明がそうなった時はというと。
「普通の思想家になった」
「そうなったんだ」
「普通に理解出来る様になったら」
「吉本もそうなったんだ」
「戦後最大から」
ごく普通の、というのだ。
「思想家が偉いかどうか別にして」
「普通になったんだ」
「誰でもわかる様な文章になったら」
「それで」
「そう言われてるよ、しかも吉本ってね」
小山田君はここでこれまで以上に嫌そうな顔になった、そうして僕達に対してこうしたことも言った。その顔で。
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