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木ノ葉の里の大食い少女

作者:わたあめ
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第一部
第三章 パステルカラーの風車が回る。
  我愛羅

 全力で走り、クナイを三本投擲した。きーんと甲高い音を立てながら弾かれたクナイの行き先には視線も払わず、飛び上がって上から攻撃をしようとする。外に向かって伸びて来た砂の矛をかわしながら、手の甲を叩き込み、そしてすぐさま後ろに飛びぬく。飛びぬいたサスケを追って、砂の矛がするすると伸びて来た。
 迫り来る砂の矛のすべての動きを写輪眼で見切り、かわしていく。一際強い勢いを伴って伸びて来た矛を上空に移動することで回避し、砂の殻の上に着地。着地して間もなく砂を足で蹴り飛ばして砂の殻を離れる。間髪いれず、砂の矛が先ほどまでいた場所へと伸びた。
――引きこもりやがって……何のつもりかは知らねえが、それもいい……
 すっと、サスケは両腕を構えた。
――俺のこいつも、時間がかかるッ!!
 ぷちん。
 サスケの左腕に装着されたもののボタンが、軽い音を立てた。

 +

    千切っちゃうんだ。
    すべて出すね。
    わかったよ。
    いっぱいいっぱい出るでしょ。
    みんなあげるよ。
    いつもボクはいい子だよ。
    だろ? お母さん。
    ボクが、出るから。

 +

 チャクラ吸着で大樹の幹の上にしゃがみ、砂に篭った我愛羅を見据え、そして掌に視線を下した。ぱちぱちと稲妻の轟く掌。静謐な森に千の鳥が鳴いているが如き音が響き渡る。
 千の鳥が鳴くが如き音を発する、だから「千鳥」。
 カカシの使う「雷切」とは全く同じものだ。カカシの使う「雷切」も本来は「千鳥」――ただ、カカシの「千鳥」が、雷を断ち切ったという話があり、ゆえに人は「千鳥」を「雷切」と呼ぶのである。
 サスケが両手を構えている部分の樹皮は、その両手から発される千鳥のチャクラによって凹んでいた。腕を後ろへ向かってスライドさせるのと同時、樹皮に痕が残る。サスケは大樹の上から勢いをつけて走り出した。
 樹皮に痕を残しながら、騎虎の勢いで走り降りていく。

「うおおおおおおおっ!」

 千の鳥の鳴き声が空気をかき乱し、騒音で空を埋める。森中に叫び声を上げ、告げる。
 ――うちはサスケの存在を。
 砂の矛がサスケを突き刺さんばかりに襲い掛かってくる。写輪眼でそれを見切り、避け、そして千鳥を、雷を纏った拳を、砂の殻に突き刺す。

「うおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお――――ッッ!!」

 サスケの雄叫びと千の鳥の鳴き声があげる大合唱。砂の殻が突き破られ、そしてサスケは、確かに掴んだ。
 我愛羅の、首を。

「――捕まえた」

 +

    なに……この、暖かいの?
    母さん……、何が……?
 
  ぴちゃり、血が滴る。

    ……!

 +

「うわぁああああああ! 血がぁああ、俺の血がぁあああああああッッ!!」

 中から発されたその、我愛羅のものとは思えぬ声に。サスケは慌てて腕を引き抜こうとした、が、出来ない。砂と我愛羅の腕は余りに力強く掴んできている。サスケは再度「千鳥」を発動し、砂を散らせた。

「うわぁああああああああッッ!」

 千鳥の雷が伝わったのだろう、中の我愛羅が悲鳴をあげる。必死の思いで腕を引き抜き、後ろに向かって跳躍すれば、中からは青の紋様が走る砂色の巨大な腕が伸びていた。

「――!?」
「おい、我愛羅がッ」
「――あそこだ!」

 同時に聞こえてくる二つの声。テマリとカンクロウだとわかった。痛む腕を押さえ、サスケはがくりと地面に両足をつく。ばたん、と音を立てて地面にぶつかった砂色の腕がするすると砂の殻の中に戻っていく。カンクロウの畏れに満ちた声が耳に入る。

「あいつの腕だ……!」

 どうもカンクロウの言うあいつは、我愛羅のことではないように聞こえた。サスケの耳に、樹上のテマリとカンクロウの怯えと焦りの入り混じった会話が届く。

「完全憑依体になったのか!?」
「わからない……怪我を負っているみたいだし、今までこんなことは……!」

 カンクロウは畏れに満ちた瞳で我愛羅を見つめた。思い出しただけでも寒気がする。初めて見た時にはそれこそ本当に食べ物が喉を通らなくなったくらいだった。何せ、見た目はまるで……
 カンクロウやテマリの言っていることについて、サスケは余り理解できなかったが、しかし本能的な恐怖を感じた。砂の殻の中で蠢く、未知の物体に対する恐怖を、本能的に感じ取っていたのだ。
 そして、けだものの瞳が砂の殻に開いた穴に現れ、サスケと視線を合わし、強烈な殺気を放ちながら咆哮をあげた。

「……っ!」

 ぴきぴきと砂の殻に亀裂が入り、それらはもとの細かい砂に分解していった。その下から、瓢箪を背負った我愛羅の小柄な姿が現れる。
 はあはあと荒い呼吸を繰り返す彼の左肩は傷を追っており、血が流れていた。サスケを見つめる瞳には殺気が満ちている。けれどその目は、砂の殻のなかから僅かに見えたあの瞳ではなかった。

「やはり傷が……っ不完全なまま殻が破られたんだ。――カンクロウッ」
「わかってる、じゃんっ」

 テマリの声がした。
 と同時に、二人が我愛羅の傍に飛び降り、サスケを睨みながら殺すと騒ぎ立てる彼を宥め始めた。不意に苦しみ出して地面に膝をついた我愛羅を抱えたカンクロウが飛び上がり、森の中を駆け去っていく。テマリが振り返ってサスケを見据え、そして直ぐにカンクロウの後を追って大樹の上に飛び上がった。
 暫くそれを見据えていたサスケだが、唐突に自分が何をすべきかを悟る。戦闘の疲れが溜まっていたが、今は我愛羅を追う方が大事だ。
 サスケは我愛羅達の後を追って、走り出した。 
 

 
後書き
我愛羅VSサスケ編。次はナルトかいのか三代目のどれか。 
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