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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──

作者:なべさん
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SAO
~絶望と悲哀の小夜曲~
  兎轉舎

半ば、追い出されるようにして、ムッツリーニ宅を後にした時、外はすでに夕暮れの色に包まれていた。

【ロンバール】の街は、夜の精霊達の街、というコンセプトに添って大きな建物は一つも存在しない。

青みがかった岩造りの小さな工房や商店、宿屋がぎっしりと軒を連ね、それらをオレンジ色のランプが照らし出す光景は幻想的な美しさと夜祭り的な賑わいを同居させている。

さらに夕刻ということもあり、ダンジョンから帰ってきた昼型プレイヤーとやっとねぐらから這い出してきた夜型プレイヤーが対称的な表情で行き交っている。

「なんか変に時間が余っちまったなー。どうする?」

遠くに見える夕陽が眩しそうに手をかざすテオドラが言った。

それを聞いたユウキは少し考え、言った。

「……じゃあ、買い物でもしよっか」

「そんじゃあ、あそこで決まりだね」

非常に微妙な表情で視線を交わすレンとユウキをテオドラは不思議そうに見た。










アインクラッド第五十九層主街区【ダナク】

うららかで牧歌的なその街の、曲がりくねった裏道にその店はあった。

見た目はただの二階建ての木造建築。だがよくよく見てみると、建物自体が微妙に傾いている。

しかも屋根にはぺんぺん草まで生えている。

システム上に規定された物体だと解っていても、築何年かと考えてしまう。

屋根の上には、大きな看板が乗っかっており、立派な墨字で《兎轉舎》と書かれている。

「あれって、何て読むんだ?」

テオドラの、純粋な好奇心から来た疑問はユウキが拾ってくれた。

「あー、あれはねー、《兎轉舎(とてんしゃ)》って読むんだって」

とてんしゃ、変な名前だ。

そうテオドラが思っている間に、レンはガラス張りの出入口をカラカラと開けていた。

「こんちはー、イヨおば……ねーちゃん、いるー!?」

続いて入ったユウキも同じように呼びかけるが、応答はない。

どうやら、この店の店長らしいイヨという女性は不在のようだ。

そう思ったテオドラは、とりあえず中に入ってみようと思い、驚愕した。

風鈴だらけだった。

天井から吊り下げられている大小様々な風鈴が、テオドラが突っ立っている出入口から吹いてくる風でりんりん鳴っていた。やかましい。

風鈴、風鈴、さらに風鈴。

呆れたことにショーウィンドウの中まで、全て風鈴だった。

「……なんなんだ?ここ……………」

思わず口をついて出た言葉に応対した声は、レンでもユウキでもなく、驚いたことに、顔の真横から聞こえてきた。

「ただの道具屋よ~♪」

「のぉうああぁぁぁぁぁ!!??」

ずざざざっと横滑りしたテオドラが見たのは、一言で言えば、カラスみたいな女性だった。

腰まである髪と、眼鏡、セーター、ロングスカート、全てが真っ黒。

薄暗い店内と相まって、顔と手足が浮いているように見える。

顔が美人なので、余計に怖い。

「ハロハロ~、レンくん、ユウキちゃん」

ひらひらと手を振る女性。

「あぁ、イヨおば……ねーちゃん!」

「お久しぶりです。イヨさん」

おぉ、第一印象は良くなかったが、なかなかいい感じだなー、とテオドラが思っていたが、次の女性の言葉でその印象はがらがらと崩れた。

「ねぇーねぇーレンくん早速で悪いんだけどこの間仕入れたこのメイド服着てくんない?これレンくんに超合うとおもうんだよねだからいいよねいいでしょていうか着ろ」

「ストーップ!!」

べらべらと喋りまくる女性に堪らずストップをかけるテオドラ。

今ので完全にキャラクターが崩壊した気がする。

「あら、こちらどちらさん?」

どこからか取り出した、びっくりするほど短いスカートのメイド服を片手に悪役みたいににじりよっていたおねーさんは、テオドラを見ると、ころりと表情を変える。

切り替えの速さに、正直ついていけない。

「あー、イヨさん、こちらは……」

「あー、いい、いい」

説明しようとしたユウキを手で遮り、アゴに手を当てるおねーさん。

そしてなぜかテオドラの、結構豊満とした胸をしげしげと見始めた。

「うーん、私の観察眼によれば F ね」

「みっ、見んな!」

慌てて 胸を隠すが、おねーさんはすでに視線を外して頭を掻きながら宙空を見つめている。

「あー、んー、なんだったっけ、黒肌ポニテで巨乳………あ!あなた《柔拳王(じゅうけんおう)》ね!」

有名人に会えたことよりも、どちらかと言えばようやく解ったことに対しての喜びを顔中に現しながら、テオドラの手を取ってぶんぶん振り回した。

「あたしはイヨってゆーの!はじめまして!!」

「あががが、テオドラ……です」

震動で発声があまりできない。

「ところでイヨおば……ねーちゃん、この前買ったポーションある?あれ回復スピードが高かったから、気に入ったんだよね~」

レンが会話を変えようと、イヨに話を振った。

「あー、あれね~。ちょっと待っててね」

すぐさま、ぱっとテオドラの手を離したイヨは、店の奥のほうに引っ込んだ。

「…………何なんだよ。ここは?」

心の底から湧いてきていた疑問をぶつけてみる。

「道具屋って言ってるけど、ほんとはどうなんだろーね?」

レンが傍らのユウキに話を振る。

「えっ、ん~。だけどさ、いっつも店の中の展示してある商品変わってるしねー。むしろ……雑貨屋?」

「ちょっと待て、店の中の展示してある商品が変わるって、どーゆーことだ?」

堪らず制止をかけたテオドラに答えたのは、レンだった。

「いや~、この間来た時は鎧だらけで、その前は………なんだっけ?」

「確かランプだらけだった気がするよ」

「あー、もーいーもーいー解った解った」

いろんな意味で怪しい店だってことがな。

そんなことを言い合ってると、店の奥からイヨが戻って来た。

その手には、薄赤色のボトルが二つ握られている。

「お待たせ~、レンくん。これでいい?」

「あぁ、これこれ!ありがとうイヨおばさん!」

あっ、という小さな声が聞こえ、テオドラが横を見ると、そこにはみるみる青ざめていくユウキの顔があった。

同時にブチッという嫌な音が響いた。

そして──

ドッゴオォォォーン!!ペキャパキ、リンリーン

何か色んな音が混ざりあった音が薄暗い店内に響きわたった。

見ると、風鈴の山に顔面から突っ込んで痙攣を繰り返すレンの姿が。

次いで、先程までレンがいた空間を見ると──

修羅がいた。

額に青筋を浮かべたイヨは、どこから出したのか馬鹿でかい青竜刀を肩に担いで、色んな意味で満身創痍のレンを見下ろしていた。

「………ごめーんレンくん、よく聞こえなかったわー。もう一回言ってくれる~?」

………………………………すいません、答えられないと思います。

痙攣を繰り返すレンと、青竜刀をゆらりと構えるイヨを交互に見ながら、ユウキとテオドラは同時に思った。 
 

 
後書き
なべさん「はい、始まりました!そーどあーとがき☆おんらいん!!!」
レン「はいよー、今回も残念ながら尺の問題でお便り紹介コーナーはスルーしまーす」
なべさん「あい、送ってくれた霊獣さん、月影夜葬さん、ありがとうございました!!」
レン「これからも本作品のご愛読をよろしくお願いしまーす」
なべさん「うーい、では登場人物紹介コーナーですね」
レン「今回は本編での視点が多いテオドラさんでーす」
なべさん「それでは、こちらです!」

名前 テオドラ
顔 チョコレート色の肌を持ち、茶髪のポニーテール
体格 女性としては背の高いほう。胸は F と言われたが、実際は G 。
装備 ゆったりとしたオレンジ色の胴着を常時着ている。武器はない。
ユニークスキル 戦舞(バトルダンス)、効果は近接戦闘のスペシャリスト。柔術、カポエラ、少林寺拳法、現実世界での近接戦闘術が全て詰まっている。
追記 男勝りな性格で、正義感が強い。会議では、結構天然なところがあるヴォルティスのツッコミ役に徹する。

なべさん「……はい、こんな感じです」
レン「自作キャラや感想なども送ってきてください!!」
──To be continued──  
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