八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三十一話 テスト前その十三
「してるからな」
「塾もだよね」
「やっぱり子供がいないとな」
少子化の問題がそのまま影響する分野だ、何しろ受験生がその対象であるからだ。それで影響を受けない筈がない。
「駄目だからな」
「受験はね」
「それに最近な」
「最近?」
「っていっても俺達の世代の前からか」
その頃からというのだ。
「十年位前からか」
「受験は?」
「ああ、ずっと楽になったらしいからな」
「だからか」
「ああ、それでな」
それでというのだ。
「予備校もな」
「勢いないんだね」
「結構色々な大学選べるからな」
昔に比べてというのだ。
「昔なんかもう偏差値が絶対で」
「それで必死に勉強しないとね」
「今以上にな」
「そうした状況だったから」
「予備校だってな」
それこそだったのだ。
「必死に勉強しないとな」
「駄目で」
「予備校も栄えてたんだよ」
「そういうことだね」
「さっき大阪の話出たけれどな」
僕が出したその街の事情もだ、津田君は話した。
「あそこでも地元の有名な予備校がな」
「潰れたとか」
「あるからな」
「有名な予備校でも」
「そうなんだよ」
「ううん、予備校も難しい時代なんだね」
僕は津田君の話に難しい顔で応えた。
「安泰じゃないんだ」
「それが違うんだよ、そういえばな」
ここで津田君はこんなことも話した。
「ほら、何かあっただろ」
「何かって?」
「塾の理事長が殺されたとか」
「ああ、あったね」
僕は津田君のその話にも頷いた。
「そうした話も」
「ああ、両手両足の付け根潰されてな」
「それでお腹にもだよね」
「ああ、何かで散々に食い荒らされてな」
「殺されたんだったね」
「誰かにな」
睾丸も潰されていたらしい、一時期この街を中心として神戸全域でそうした惨たらしい殺人事件が頻発していた。
「相当酷い殺し方らしいな」
「そうだよね」
「うちの生徒でもいたしな」
「四人ね」
「不良連中でな」
「死体も晒されてて」
学校でも札付きの連中だったから正直皆いなくなってよかったと思っている、けれどその殺され方がだったのだ。
「無茶苦茶だったね」
「もう楽しんで殺したっていうかな」
「そんな感じの死体だったね」
「最近そんな事件なくなったにしても」
「嫌な話だったね」
「あれ一緒の犯人だったかもな」
津田君はこうも言った。
「あれな」
「理事長さんを殺したのと」
「そうかもな、まあ予備校はな」
「夏期講習だね」
「それは行くとな」
「いいんだね」
「考えてみてくれ」
こうも言う津田君だった。
「それで御前が決めればいいさ」
「うん、じゃあね」
僕は津田君の話に頷いた、そうしてその日も学生生活を楽しんだ。梅雨は実際にもうすぐ終わろうとしていてテストの時が近付いていた。
第三十一話 完
2015・2・7
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