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とある3人のデート・ア・ライブ

作者:火雪
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第七章 歌姫
  第9話 操られし仲間

美九と士道の勝負が始まる数分前のこと。

ジェシカ達が〈プリンセス〉ーー夜刀神十香に奇襲を仕掛けようとしていた。

今天宮スクエア上空に展開しているのはジェシカを含む第三戦闘部隊九名に、遠隔操作型の戦闘人形〈バンナースナッチ〉が二十機という豪華なものだった。

これらが携えているレーザー砲などを駆使し、集中砲火を浴びさせればいくら〈プリンセス〉といえど耐えるのは難しいだろう。

ジェシカ「一人少ないネ。どこにいるのかしラ?」

たかが一人かもしれないが、その一人がいなかったせいで〈プリンセス〉が倒れなければ意味がない。人数が多いことに越したことはないのだ。

でもーー

ジェシカ「時間が無いワ。さあ、パーティーを始めましょウ!!」

言って、ジェシカはレイザーカノンを天宮スクエアセントラルステージに向けた。


ーーーー
ーーー
ーー



琴里「また面倒くさいのがきたわね」

そのジェシカ達の行動はフラクシナスもしかと見ていた。

琴里「DEMの手の物……?それにしてもどうしてこのタイミングで……」

その瞬間、琴里の頭には嫌な予感がよぎった。

会場には十香、四糸乃、八舞姉妹、美九。実に五人の精霊がいるのだ。万一、この情報がDEMに流れたとしたら……

琴里「く……」

神無月「司令。いかがなさいますか?」

琴里「ほっとくわけにもいかないでしょ」

でも場所が場所だ。こちらも下手をすれば死人を出しかねない。

ならば、

神無月「私がでましょうか?」

琴里「……そうね。頼んーー」

と、言おうとした時。

艦橋内にアラームが鳴り響いた。

琴里「!?何事よ!」

「天宮スクエア上空にもう一つ、大きな巨大な反応がもう二つ現れました!」

クルーの荒い声と同時にモニタが切り替わり、新たな反応の主が姿を現す。

琴里「な……」

その姿を見て、あの言葉を思い出した。




『彼は裏で活躍してもらってるよ。表には出ずに……ね』



あの時の、エリオットからの言葉を。


琴里「……本当に、すごいわね」

思わず呟いてしまうぐらい、心の底からそう思った。




ーーーー
ーーー
ーー




その警告音は、こちらも同じくして鳴り響いていた。

ジェシカ「なッ……!?」

すぐに回避行動を取ると、先ほどまでジェシカがいた場所に魔力の奔流が通り過ぎていった。

その馬鹿げた威力に思わず顔を青くする。



精霊ではない。生成魔力で行ったこと。

それは目の前の彼女ーー陸上自衛隊ASTの魔術師・鳶一折紙一等陸曹である。

見覚えのある顔だからこそ、ジェシカの震えは止まらなかった。

ジェシカ「バカな……〈ホワイト・リコリス〉……?」

呆然と声を発する。

机上の計算のみで作り出した『最強の欠陥機』

テスターでも三十分で廃人にするほどのオブジェ。

だからこその疑問。

ジェシカ「なぜ……貴様は〈リコリス〉を動かせている……?」

折紙「……」

彼女は何も答えない。

後ろで、何が起こっているのかも知らずに。

「なっ!貴様は!?」

部隊の一人がその異様な光景に気づいた。

翼を六枚三対携えたその″彼″は彼の能力『未元物質』で白い大きな槍を作り出し、〈バンナースナッチ〉に突き刺して戦闘不能にしていたのだ。

ジェシカ「貴様は……何者ダ!?」

その彼ーー垣根提督はジェシカを前にしても余裕の笑みを浮かべていた。

垣根「あなたに教える義務はありません。ですが……これぐらいはいいでしょう。学園都市の人間だというぐらいは」

ジェシカ「学園、都市……ッ!」

唇を噛み締めて目の前の垣根を睨みつける。

垣根「さあ、人数で勝れど戦力差は圧倒的です。どうしますか?」

あのハンサムな笑顔を振りまき、誘い込むような口調でジェシカを惑わそうとする。

だがさすがは軍隊のリーダーと言ったところか、その程度ではジェシカには通用しなかった。

ジェシカ「総員撃て!堕とすのヨ!早ク!」

ジェシカが叫ぶと部下達はミサイルやレーザーカノンを構えた。

だが、それとほぼ同時に垣根の槍や折紙のミサイルの嵐が飛んできた。

『ぐあ……ッ!!』

『隊長ォォ!!』

だがインカムから聞こえたのは部下達の無残な声だった。

垣根「仕方がありません。平和な解決はできないようですね。残念です」

垣根が手を広げると、翼や何もないところから無数の光の刃が出現した。

垣根「あなたたちの負けです」

そして。

その光の刃はジェシカめがけて一直線に進んでいった。

ジェシカがしていた装備は無残にも光の刃によって穴だらけになり機能を停止していた。

その彼女は重力の思うがままに垂直落下していった。

垣根「一旦引きましょう。あなたも活動限界でしょう?」

折紙「そんなことは……くっ!」

垣根「無理をしないでください。いつ彼らが復讐してくるか分かりませんから」

折紙「……士道」

折紙がスクエアの方を見て吐息のように言ったその言葉は、どこか寂しそうで悲しそうだった。



ーーーー
ーーー
ーー



美九「これで、あなたのお仲間さんはぜーんぶ私のものですよぉ?」

士織「く……」

美九が楽しげに鍵盤を叩くと背後から操られた観客に拘束されたのだ。

一方、上条は拘束される寸前で、体育館の壁の上の方に取り付けられた通路へと逃げた。

上条「悪いな士織」

士織「っておい!助けないのかよ!一方通行も何とか……ってアレ?」

ちなみに、一方通行は上条とは反対側の通路に逃げ込んだようだ。これで上条と一方通行は向かい合うような感じで立ってしまう。

一方「悪りィ。忘れてた」

士織「忘れたって……」

一方通行に文句の一つでも言ってやろうと思ったが美九が靴音を体育館中に響かせこちらに向かってくるのを確認すると、やたら緊張感が走ってしまい、それどころではなかった。

美九「ふふ、精霊さんも、士織さんも……みーんな私のもので……」

美九が指先で士織の太ももからゆっくりと上の方へなぞっていく。

と、違和感を覚えたのはその瞬間だった。

美九「……ん?……んん?」

美九は首を傾げ、士織を触っていた指を伸ばしたり曲げたりしていた。

美九「今の感触……まさか!」

美九が命令し、士織のスカートを無理やり引きずり下ろす。

そして。

士織「ぎゃあああ!!」

美九「うッきゃああ!!」

ほぼ同時に発狂した。

美九は″士織が男″だと分かった瞬間、絶叫し、顔を青ざめさせ、自分が置いていた鍵盤の位置へと戻っていった。

そして。

不協和音にも似た嫌な音が体育館を響かせたと同時に観客たちが一斉に士道の方へと走り出したのだ。

士道「うわああああ!!!」

上条「まず……!」

一方「……チッ」

士道が逃げ出し、それを追いかける観客を上条と一方通行が柵を乗り越えて追った。

だが。

士道の逃げ道を塞ぐように、彼の目の前に氷の壁らしきものが出現した。

士道「これは……」

上条「まさか……!?」

一方「……」

上条と一方通行が士道に追いつき、観客は彼らの動きが止まったからか、ゆっくりと歩き出した。

その、上空で。

よしのん『いけないなぁ、士道君。ここはもう『檻』なんだよ?』

四糸乃「お姉さまを、傷つけたりは、しません……!」

傷つけたくないのに逃げ道を防いだ理由はイマイチ理解できないが、言葉、行いからして敵になってしまったのは間違いないだろう。

ならばーー

耶倶矢「くく……士道よ。この我らから逃げ切れるとでも思うたか?」

夕弦「同意。お姉さまを騙した罪、ここで償ってもらいます」

八舞姉妹も、敵になっていた。

それなら十香も……

と、思っていると、上空から誰かが勢いよく降りてきた。

上条「十香?」

十香「……」

上条の呼びかけに十香は答えない。まるで聞く耳を持たないように。

士道「まさか……!?」

嫌な予感がした。まさか、十香まで……

と。

十香が何かを思い出したような表情をすると、両耳に手をやり、イヤホンモニターを外した。

十香「そういえば、ずっとこれをつけていたのだ」

……タンバリンのためにそこまでする必要があるのかと聞きたかったが今は聞かないことにしよう。

ならば、フラクシナスで一旦を見ているはずの琴里は……?

士道「くっ……琴里!」

上条「いや、多分……琴里も」

士道がインカムに手を当てて助けを求める。

だが。

琴里『はあ?何言ってんの?″お姉さま″に逆らったバカはそこでミンチにされなさいよ』

士道「……………え?」

上条「やっぱりか」

上条の察し通り、琴里もあの『音』を聴いて操られていた。

どうすればいいか分からない状況で挙動不審になる士道を見て美九は愉快そうに笑ってみせた。

美九「ふふ……いいですねぇ。いいですよぉ。その表情、焦り……私が求めていたモノですよ……あなたが私を騙した罰としてぇ……」

士道「くっ……」

美九「でも不思議ですぅ。あなたたちがこうして並ぶとーー」









美九「ーーまるでお姫様を護る三人の主人公みたい……」









士道「え……」

その言葉が少し気になった。横を見ると美九を敵対しているような眼差しで美九を睨みつけている上条と一方通行と、いつに無く真剣な表情の十香しかいなかった。




お姫様?


三人?



ーーーー
ーーー
ーー



「ふぅ……なんとかなりやがりましたね」

フラクシナスにて、たまたま席を外していた椎崎と令音以外のクルー達が美九の『音』を聴いて精神的に操られていたのだ。

そこに、救世主が現れた。




そこでたまたま休んでいた、『崇宮真那』だ。




真那「勝手にやっちゃいましたけど、オッケーでした?」

令音「……ファインプレーだ」

真那「了解です。で……一体何があったんですか?」

令音「……まだ確証はないが、精霊の攻撃を受けた。恐らく『音』に霊力を乗せて聞いた相手を操る類のものだ」

真那「はー、そりゃまた厄介なものが」

と、辟易するように言いながらモニタに目をやった真那は小さく息を詰まらせた。

真那「に……兄様ッ!?」

モニタに映る愛しき兄の姿に、驚きを隠せなかった。

気づけば、身体が勝手に動いていた。


ーーーー
ーーー
ーー



ここから美九に操られた精霊の攻撃が始まった。

士道「く……」

十香「士道!」

上条「やばっ!」

一方「……フン」

耶倶矢と夕弦の激しい風、四糸乃の凍てつく冷気。それが合わさり、まるで『吹雪』のように四人を襲う。

体育館はその『吹雪』によって天井や壁に大きな穴を開けていた。

耶倶矢「くかか、どうした愚兵どもよ。汝の実力はその程度ではないだろう?」

夕弦「同調。この程度では話になりません」

四糸乃「弱い、です……」

よしのん『さっさと本気出しなよ〜。こっちも本気でやりたいんだからさ』

本気を出せないのは当たり前だった。

相手が自分達の仲間。関係ない観客達。

理由無く人を……友達を殴るというのはどれだけ辛いのだろうか。

十香「……っ!」

十香が耶倶矢と夕弦と四糸乃の下を通り美九のところへと駆け出す。

そのまま〈鏖殺剣〉を構えて、一気に振り下ろす。

そこで。





【わッ!!!!】





凄まじい、怒声のような声が聞こえた。

十香「うおっ!?」

その勢い、気合いに十香は八舞の風ほどではないが、吹き飛ばされた。

吹き飛ばされた十香は重力の思うがままに地面へと吸い込まれ、尻餅をついてしまう。

美九「ふぅ……危なかったですぅ。もう、他の精霊さんもしっかりしてくださいよぉ」

耶倶矢「この八舞耶倶矢とあろうものがお姉さまを護れんとは……」

夕弦「失態。申し訳ありません」

四糸乃「次から、そんなこと……させません……!」

よしのん『やっぱりこっちも本気で行っちゃおうよ。手加減するだけ無駄だよー』

美九の前に彼女の盾のように並ぶ八舞姉妹と四糸乃とよしのんがいた。

十香「く……」

ゆっくりと立ち上がり、〈鏖殺剣〉を構える。

だが、それとほぼ同じくして、あの『吹雪』が十香たちを襲った。

その威力は、先ほどとは比べものにならないぐらい、豪快で、力強かった。

十香「わっ!」

士道「くっ、そ……!」

上条「く……!」

一方「……」

一方通行以外の三人が吹き飛ばされ、『吹雪』によって開いていた穴に吸い込まれるように抜けていった。

つまり、外に出たのだ。

上条「くっそ……」

一番先に戻ってきたのは上条だ。

頬を切ったのか、手の甲で赤い液体を拭いながらゆっくりと歩いてきた。

一方「……上条。ここは俺がやる」

上条「……いいのか?」

一方「あァ。テメェらがいると本気も出せねェしよォ」

上条「でも、俺たちはどうしたら……!」

一方「五河琴里までもがあいつに操られてるンだ。まずはあの女をコッチ側に戻せ」

上条「……わかった。……″殺すなよ″?」

一方「当たり前だ。俺を誰だと思ってンだ?」

二人は一度顔をあわせるとフッと笑い、上条はそこから背を向けた。

と。



『十香ああああああッ!!!』




体育館の外から士道の声に似た……いや、士道の絶叫が突然聞こえた。

上条「十香……!?」

一方「早くしろ!あいつらも護れ!」

上条「言われなくても!!」

上条はそこからバッと駆け出した。



大事な仲間を護るために。











 
 

 
後書き
垣根&折紙とかどんだけ珍しい組み合わせなんですかw

真那もとうとう登場!さあさあ、どんな展開をするんでしょう! 
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