ハロウィン
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6部分:第六章
第六章
「僕も。賛成」
「あんたもなのね」
「だって。こんなことって滅多にないよ」
彼は満面の笑顔でサエコに述べるのであった。
「カボチャ頭のジャックが一緒にいてくれるなんてね」
「まあそれもその通りね」
そもそも有り得ないことである。だがサエコはここではそこまで言わないのであった。ただカルロスのその言葉に頷くだけである。
「じゃあ皆賛成なのね」
「その通り」
「異議なし」
また答えが返って来た。
「じゃあ僕は」
「実はこちらからも御願い」
「一緒にいてくれるかな」
「是非」
五人でジャックに対して言ってきた。
「ジャックと一緒にいられるなんて夢みたいだよ」
「っていうか本当におとぎ話!?」
「だよねえ」
顔を見合わせて笑顔で言い合っていた。
「ハロウィンって何が起こるかわからないって言われてるけれど」
「それでもこんなのってないから」
「皆、そんなに喜んでくれるなんて」
「だってねえ」
「話がわかればやっぱり」
「カボチャ頭のジャックだし」
「僕だからなの」
ジャックは自分だからと言われてさらに言葉を明るくさせたのだった。
「僕だから。いいの」
「そうよ。あんただからよ」
サエコがまた彼に言った。
「あんただから皆いいのよ。わかる?」
「何か。その言葉って」
「嬉しいの?」
「嬉しくない筈ないじゃない」
これまで以上に明るい声で言うジャックだった。
「だって。皆にそう言われるのがやっぱり」
「嬉しいからなのね」
「誰だって誰かに好かれて愛されるのが一番だよ」
ジャックは心からの言葉を述べるのだった。
「違うかな。やっぱり」
「それは確かにね」
「そうだよね。やっぱり」
「嫌われるよりはずっといいよ」
サエコだけでなく男の子達もジャックのその言葉に頷いて言い合うのだった。
「そうじゃない。皆僕を好きでいてくれるから」
「言っておくけれどそれは私達だけじゃないわよ」
「えっ!?」
「大体あんたオズの国でも人気者じゃない」
これもまたここにいる五人全員が知っていることであった。ジャックはオズの国においては国家元首であるオズマ姫の大切な友人の一人であると共にかかしやブリキの木こり、臆病ライオンと並ぶ大の人気者なのだ。流石にドロシーは別格で彼女の次に来るがそれでもなのだ。
「そうでしょ?」
「それはそうだけれど」
「こっちの世界でも人気なのが嬉しいのね」
「そういうことなんだ」
ジャックはサエコの言葉に対してまた頷いて答えた。
「やっぱり。この世界でも僕は誰かに好かれていたら嬉しいよ」
「こっちの世界も好きだからなのね」
「一番嬉しいのは僕が好きな人に好かれること」
ジャックはまた言った。
「だからね。それだから」
「それじゃあそれをもっと確かめてみる?」
「もっとって?」
「私達と一緒に来て」
「今までみたいに?」
「そう、今までみたいに」
こうジャックに言うのである。
「家を回りましょう。そうすればもっとわかるわよ」
「もっと。わかるんだ」
「そうよ。あんたがどれだけ人気があるのかね」
にこりと笑って彼に告げるのであった。
「どう?一緒に行く?」
「うん」
ジャックは彼女の今の言葉にこくりと頷いて答えるのだった。
「それじゃあ。一緒にね」
「行きましょう。けれどあんたお菓子は」
「ああ、それはいいから」
お菓子はいいというのであった。
「僕は何も食べなくても全く平気だから」
「そうだったわよね。確か」
「そっちは本当に平気なんだ」
そのことをあらためて言うのであった。
「だって僕カボチャ頭だし」
「じゃあ悪いけれどお菓子は」
「うん、いいよ」
声でにこりと笑っていた。
「それは君達で食べてよ。僕の分はいいから」
「何かここでわかったよね」
「そうだね」
ボブはリンチェンの今の言葉に頷いた。
「よく見たらさっきから何も食べていないし」
「カルロスだったら今頃ガツガツ食べているからね」
「ちぇっ、ガツガツっていうのは余計だよ」
当のカルロスはその言葉に不平を言うのだった。
「それでも。ジャックがお菓子を食べないのは有り難いね」
「そうだね。こう言ったら何だけれど」
ビルは言葉を少し歯切れの悪いものにさせていたがそれでも言うのだった。
「それだけ僕達が食べられるし」
「そうね。まあとにかく」
ここでまたサエコが言った。
「ジャックも皆も行きましょう」
「うん、それじゃあ」
「そういうことで」
ジャックも男の子達も彼女に応えてベンチから立ち上がったのだった。サエコはジャックを皆の先頭に押し立ててそのうえで彼に対して言った。
「あんたが先頭よ」
「僕が先頭なんだ」
「だってそうじゃない」
自分が先頭に立てられて少し驚いた声をあげるジャックに対して述べた。
「あんたの人気をこっちの世界でも確かめる為のものなのよ」
「うん」
「だったら当然じゃない」
こうジャックに言うのだった。
「そうでしょ?あんたが先頭に出なくてどうするのよ」
「それもそうか」
「そうよ」
またジャックに対して言った。
「わかったわね。それじゃあ」
「うん。じゃあお菓子は皆でね」
「それはね。またそれで」
それはそれで嬉しいことだが今はあえて言わないのだった。
「とにかく。あんたが先頭よ」
「うん、わかったよ」
遂にジャックもそれで頷くのだった。それだけでその大きなオレンジのカボチャ頭が縦に揺れる。いささか落ちそうであるがそれでも落ちはしなかった。
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