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4部分:第四章
第四章
「そんな話で」
「けれど実際にここに来たし」
「大体それが信じられないのよ」
彼女が言うのはそういうことだった。
「それで普通に来たって言うけれど」
「うん」
「オズの世界よ、オズの世界」
そこを何度も強調するのだった。
「そんなおとぎの世界からどうやってこの世界に来たっていうのよ」
「オズの世界は実際にあるし」
「あるわけないわよ」
その可能性を頭から完全否定するのであった。
「あってたまるものですか。そんな世界が」
「何で信じてくれないのかな」
「大体証拠は?」
悲しい顔になってそのカボチャ頭を俯けさせるジャックに対してさらに問う。
「証拠はあるの?証拠は」
「証拠って?」
「だから証拠よ」
言葉が強いものになっていた。
「証拠。あんたがオズの世界から来たっていう証拠は」
「これだけれど」
その言葉に応えて自分の足の先を皆に見せるのだった。
「これ。ほら」
「その靴ね」
「ほら、紫で奇麗な色してるよね」
「ええ、まあね」
サエコが五人を代表して彼の受け答えをしていた。男の子達はジャックの話が信じられないのとそのサエコの言葉のテンポの速さが凄いので話に入れないのである。
「これがそうなんだよ。魔法の靴でね」
「その靴がそうだっていうのね」
「うん。何ならこれでオズの国にどうかな」
「冗談でしょ」
ジャックのその言葉は頭から信用しないサエコであった。
「あんたの言葉が全然信じられないのにその言葉について行くと思う?」
「そう言われるとやっぱり」
「そういうことよ」
言葉がきつい感じになっていた。
「今のままじゃ絶対について行かないからね」
「困ったなあ。信じてくれないなんて」
「信じられる訳ないじゃない」
そのきつい言葉が続けられる。
「証拠としてはあまりにも弱いわよ、その靴は」
「じゃあ何をやったら信じられるの?」
「自分で考えなさい」
実に冷たい言葉であった。とにかく彼の言葉を全く信じていないのがわかる。
「そんなことは。それを私達に見せてくれたら信じてあげてもいいわ」
「それだったら。やっぱり」
困った声で考えながらの言葉であった。
「これかな」
「んっ!?」
「何するのかな」
男の子達はジャックのここでの動きを見て声をあげた。彼は自分の頭にその両手を添えてきたのである。そうした彼が次にした行動は。
「ええっ!?」
「頭を!?」
「本でもちゃんとやってたけれど」
ジャックはその困った声で驚く皆に述べるのだった。
「こういうのって。だから僕の頭はカボチャなんだよ」
「それは知ってるよ」
「それでもだよ」
皆は驚いた声で彼に対して言うのであった。
「そんな。頭を外すなんて」
「ここで」
「新しいカボチャの頭に付け替えることもできるよ」
そのことも皆に言うのであった。
「ちゃんとね」
「ちゃんとねって」
「頭、本当に外すなんて」
「けれどこれでわかってもらえたよね」
その外した頭を皆に回して尋ねる。声はちゃんとその頭から聞こえてきていた。
「僕がそのカボチャ頭のジャックだって」
「まあね」
不本意といった声であったが頷きはするサエコだった。
「わかったよ。幾ら何でも」
「僕も。やっぱり」
「僕も」
そして四人の男の子達もそれは同じだった。やはり外れてそのうえで言葉を出せるカボチャ頭を見ては信じるしかなかった。ましてその首には何もないのだから。
「本当に信じるから」
「これでね」
「信じてもらえて嬉しいよ」
彼等のそうした言葉を聞いてようやくほっとした声になるジャックであった。
「これでね。僕がジャックだってね」
「本当にオズの国から来たのね」
サエコが次に考えたのはこのことだった。
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