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ハロウィン

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3部分:第三章


第三章

「スペアがあればいいんだけれど」
「何言ってるかわかる?」
「いいや、全然」
「わからないよ」
 リンチェンとボブとビルはそれぞれ顔を見合わせてその眉を顰めさせていた。
「代えって何が?」
「トランクスとか言わないでよ」
「まさかとは思うけれど」
「そういうのじゃなくて」
 彼は下着のジョークはとりあえずかわした。そしてそのうえでまた述べる。
「だからさ。頭が」
「頭がどうとかってね」
 サエコもまた彼の言葉の意味がわからずその首を傾げさせて言うのであった。
「だから何が何なのよ」
「何が何なのって」
「そのカボチャ食べるだけじゃない。変なカルロス」
「そもそも僕はその」
 彼がカルロスという名前に対しても何か言おうとした。丁度その時だった。
「ああ、やっと見つけたよ」
 不意にこの言葉が聞こえてきたのだった。
「ここだったんだね皆、探したよ」
「探した!?」
「それにこの声は」
 皆その声を聞いて一斉にその声がした方に顔を向けた。するとそこにいたのは何と。
 彼であった。見れば狼男の格好をしている。耳は狼の耳を飾りにつけて尻尾を生やしわざと牙をつけている。狼の前足に模した手袋にはちゃんと爪まで生えている。浅黒い顔の陽気な顔立ちの男の子であった。
「あれっ、カルロス!?」
「他の誰に見えるんだよ」
 その男の子は目を丸くさせるサエコに対して牙が生えた笑顔で言ってきた。
「僕はこの世界で一人だよ」
「二人じゃなくて!?」
「一人だよ」
 その目を丸くさせたサエコにまた言う。
「何があってもね。一人だよ」
「おい、それだったらよ」
 ビルがここでその狼男のカルロスに対して問うてきた。
「聞きたいことがあるぞ」
「何だい?」
「野茂英雄の日本での背番号は何番だ?」
 このことを彼に尋ねるのだった。
「あとイチローだ。両方共何番だ?」
「野茂が十一番でイチローが五十一番だよね」
「そうだ。その通りだ」
 ビルは彼が淀みなく答えてきたのを聞いて納得した顔で頷いた。そうしてそのうえで皆に対して言うのであった。
「本物みたいだぞ」
「確かにね。カルロスだから知ってることだよ」
 ビルの言葉にリンチェンもまた納得した顔で頷いたのであった。
「野茂やイチローの日本時代のことを知ってるなんてね」
「近鉄バファローズとオリックスブルーウェーブだったね」
 狼男のカルロスは今度は問われもしないうちに皆に述べてきた。
「二人のいたチームはね」
「やっぱりね。間違いない」
 ボブも今の彼の言葉を聞いて納得した顔で頷いた。
「カルロスだよ。間違いないよ」
「そうね」
 最後にサエコもそれを確信したのであった。
「確実にカルロスね」
「ああ、そうだよ」
「カルロスで間違いないよ」
「そういえば表情もそんな感じだし」
「だから皆何言ってるんだよ」
 当のカルロスだけはどうにも除け者にされた感じがしてどうにもいたたまれないのであった。
「僕は僕だよ。確かに狼男の格好をしているけれどさ」
「それじゃあよ」
 ここで不穏な顔を見せてきたサエコであった。
「あんたは今ここにいるわよね」
「うん」
 まだ何が何だか全くわからないままサエコのその言葉に頷いた。
「ちゃんとね。ここはね」
「それはいいわ」
 とりあえずそれはまた納得したサエコであった。
「それじゃあよ」
「何が言いたいの?」
「あんたがここにいて」
 しつこいまでにこのことを繰り返して言う。
「じゃあこの人は?」
「この人はって?」
「だからこの人よ」
 そのカボチャ頭をこれ以上はないという程不審な目で見つつの言葉であった。
「この人は。誰なのよ」
「ああ、そういえばそうだね」
 入ったばかりのカルロスは相変わらず呑気な様子で応える。しかし彼以外の皆はそのカボチャ頭を不審極まる目で見続けているのであった。
「それ。誰なの?」
「あんた誰なの?」
 いぶかしむ目でカボチャ頭に対して問うサエコであった。
「一体。誰なのよ」
「今までずっとカルロスだと思っていたけれど」
「そういえば様子がおかしかったような」
「そうだね」
 リンチェンとビル、ボブもそれぞれ言う。
「だったらこの人って一体」
「何処の誰なんだか」
「若しかして不審者とか?」
「不審者!?とんでもないよ」
 今まで周りに剣呑な目で見られて小さくなっていたカボチャ頭がたまりかねたように言ってきた。
「僕は怪しい者じゃないよ。れっきとしたオズの国の住人だよ」
「オズの国!?」
「今オズの国って」
「そうだよ。僕はジャックっていうんだよ」
 ここで遂に自分の名前を名乗ったカボチャ頭であった。
「カボチャ頭のジャック。それが僕の名前だよ」
「カボチャ頭のジャックって」
「まさか」
「そうだよ。オズの国にいる」
 彼自身の言葉である。
「それなんだけれど」
「オズの国!?」
「あれって架空の世界じゃない」
「そうだよ」
 五人の少年少女達は口々に言った。彼等にしてみればオズの国というのはあくまでおとぎ話の世界である。ライマン=フランク=ボームが子供達に紹介したとても素敵な国のお話のシリーズである。
「それが何でこの世界に!?」
「しかもあんたが」
「ちょっとね。魔法の靴でね」
「魔法の靴ってドロシーの!?」
 その魔法の靴が何なのかすぐにわかったサエコであった。
「あれ!?ひょっとして」
「そう、あれ」
 ジャックも答える。
「あれを改良して行き帰りができるようになったものなんだけれど。それを使ってね」
「こっちの世界に来たっていうの?」
「そういうこと」
 彼自身の言葉である。あくまで。
「それでこっちの世界に来たんだけれど」
「それで私達が納得すると思う?」
 サエコは顔を顰めさせてジャックに問うてきた。
 
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