八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二十九話 試合の後はその八
「この学園ではそうなっているんだ」
「そういう事情ですか」
「そうなんだ」
「成程。ただ」
「ただ?」
「大学の方には馬で登下校されている先生がおられますね」
「あっ、あの人だね」
その話をされるとだ、僕はその人が誰かすぐにわかった。それでジョーンさんに対してもすぐに答えることが出来た。
「ドリトル先生だね」
「あのイギリスから来られた」
「医学部の教授さんだね」
「あの人はいいんですね」
「許可を貰ってるんだ」
大学の方からだ。
「あの人は」
「だから問題はないのですね」
「うん、あの人も限られた場所を進んでいるから」
「そうですか」
「それにあの人は凄いよ」
「何か医学だけでなく色々な学問を修めておられるとか」
「しかも動物の言葉がわかるんだ」
あの人だけのことだ、学園で知らない人はいないと言っていい位の有名人になろうとしている。
「あんな凄い人はいないよ」
「本当に凄い人なのですね」
「そうなんだよ、あんな人がいるなんてね」
僕はしみじみとした口調でジョーンさんに話した。
「世の中広いね」
「そうですね」
「それであの人はね」
「許可を得てですね」
「そうなんだ、しかもそのうえでね」
道を選んで、なのだ。進める道だけを。
「そうしているからいいんだ」
「律儀な方ですね」
「紳士だってことも評判だから」
「ただ学問に優れているだけでなく」
「穏やかで誰にも礼儀正しいね」
「紳士ですか」
「あの人はそうなんだ」
そうした意味でも本当に尊敬出来る人だ、とはいっても僕はお話したことはない。機会があればとは思っていても。
「尊敬もされてるよ、ただあの人は尊敬されても」
「それでもですか」
「それを嫌がっているんだ」
「尊敬されることをですか」
「自分は偉い人じゃないって仰ってね」
そう聞いている、その辺りも立派だと思う。僕も何か尊敬されるとかえって怖くなると自分でも思う。人の念は重いからこそ。
「それでなんだ」
「そうなんですか」
「そうした意味でも立派な人だよ」
「お会いしてみたいですね」
ジョーンさんは僕達の話を聞いて強く頷いた。
「ドリトル先生とも」
「そうだね、ただね」
「ただ?」
「僕達は高等部であの人は大学におられるから」
「また違うからですね」
「同じ八条学園でもね」
うちの高校は正確に言うと八条大学の付属になる、このことは保育園から中等部までどの部も同じことだ。
「また違うから」
だからですか」
「先生とお会いすることは」
そのことはというと。
「ちょっと難しいんだ」
「違う場所まで行って」
「そう、そしてね」
そのうえでというのだ。
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