八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二十九話 試合の後はその二
「このビール美味しいから」
「どうでしょうか」
「ラムチョップも美味しい」
「味付けも素材も完璧です」
小野さんが作ってくれたそれも楽しんでいた、見れば確かに相当に美味しそうなラムチョップだ。けれど。
僕は誘ってくれる二人にだ、こう言うしかなかった。
「気持ちだけね」
「そういえば何か」
「お顔赤いですね」
二人もここで今の僕に気付いた。
「もうお酒飲んだのね」
「そうなのですか」
「もうワイン一本空けてるから」
「だからもう」
「今日は、ですか」
「飲まないというかね」
最近よく飲んでいることもあってだ。
「今日はこれで」
「わかった。じゃあ」
「私達だけで楽しませてもらいます」
「二人で心ゆくまで飲んで」
「楽しく解散します」
「そうしてね、じゃあ僕はこれでね」
二人に手を振って別れてだった、僕は書斎に戻ろうとした。そして。
書斎に戻ったところでだ、畑中さんにこう言われた。
「今日のラグビーですが」
「はい、何とかですね」
「お二人も穏やかに済みましたね」
「本当によかったです」
僕は畑中さんに胸を撫で下ろしている顔で答えた。
「何か危なそうでしたから」
「スポーツは熱狂しますので」
「観戦していても」
「そうです、それを無事に収められる様にされたことは」
このことについてだ、畑中さんは僕に話した。
「お見事でした」
「どうも」
「こうしたことへの気配りがです」
それが、とだ。畑中さんは僕にこうしたことも言ってくれた。
「管理人としてのお役目です」
「気配りとそれを実行に移すことがですね」
「そうです」
「じゃあ僕は成功しましたね」
「無事に」
「とりあえず今回は」
そうだとだ、ここで僕はこうも言った。
「それが出来たのなら何よりです」
「今回は、ですか」
「はい、今回は」
そしてこうも言った僕だった。
「けれど次は」
「次の時はですか」
「わからないですから」
それで、とだ。僕は畑中さんにこうも言った。
「今回は、です」
「謙虚ですね。ですが」
畑中さんは僕にこうも言ってくれた。
「その謙虚さがです」
「それが、ですか」
「義和様の大きな財産となっていきます」
「謙虚ならですか」
「謙虚であれば驕ることもありせん」
「歴史上驕って、でしたね」
「はい」
まさにその通りだとだ、畑中さんはまた僕に答えてくれた。
「最後の最後で破滅した方も多いです」
「負けた人が、ですね」
「あまりにも多く挙げていられない程です」
例えば呉王夫差だろうか、越王勾践に勝って侮ってだった。そうして最後は国ごと滅んでしまった。勝っていたのに。
「ですから」
「僕はですか」
「謙虚さを忘れないで下さい」
決して、という口調での言葉だった。
「そのことをお願いします」
「わかりました」
僕も畑中さんのその言葉に頷いた。
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