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小鳥のぬいぐるみ

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第四章

「あまり」
「それならぬいぐるみを大事に扱ってくれるね」
「そうした人になのね」
「あげたら?若しくは売ったら?」
 そうすればどうかというのだ。
「そうしたらいいじゃない」
「売るのね」
「そこまでいいぬいぐるみだったら売れるわよ」
 母は娘に微笑んでこのことも話した。
「丁渡いい収入にもなるわよ」
「つまり人形作家ね」
「ぬいぐるみでそれをする人もいるから」
 セーラにこのことも話す母だった。
「どうかしら」
「お金、ね」
「そう、まあとにかくね」
「ぬいぐるみをこれからも作るのなら」
「本当にお部屋から溢れるから」
 それも近いうちにというのだ。
「だからね」
「人にあげるべきなのね」
「捨てたくないでしょ」
「子供を捨てるとか」
 そうしたことはとだ、セーラはその丸い眼鏡の奥を曇らせて答えた。
「ちょっとね」
「そうでしょ、折角作ったし」
「それならなのね」
「ええ、ぬいぐるみを大事にしてくれる人にね」
「あげるべきなのね」
「そうしなさい、お気に入りのぬいぐるみは手元に置いていいけれど」
「わかったわ、じゃああくまで信頼出来る人にね」
 人形作家の話は今は置いておいてだった。
 母のその提案に従うことにした、それで作ったぬいぐるみを自分が信頼出来ると思った友人や知人が望めばプレゼントした。
 そうして作った傍から特に気に行ったもの以外は送ってだった、部屋の中のぬいぐるみも減っていった。だが。
 最初に作ったカナリアのぬいぐるみはいつも手元にあった、ヘルマンはそのぬいぐるみを見て家の中で持って歩いているセーラに尋ねた。
「そのぬいぐるみはか」
「ええ、最初に作ったものだし」
 そのこともあってというのだ。
「ずっとね」
「部屋に置いてるんだな」
「そうしてるの」
 兄に微笑んで答えた。
「こうして一緒に歩いたりするし」
「そうしてるんだな」
「今はね」
「今は?」
「もう大雪でお外に出られなくても」
 その状況でも、というのだ。
「ぬいぐるみを作るし読書やゲームもしてるし」
「学校の勉強もしてるしな」
「それも忘れていないし」
 それで、というのだ。
「もう退屈していないわ」
「それはいいことだな」
「むしろ大雪の中でも」
 その状況でもというのだ。
「時間が足りない位よ」
「ぬいぐるみを作っていてか」
「そうなの」
 そうした状況になっているというのだ。
「いや、本当に変わったわ」
「僕のアドバイスがいい結果になってるんだな」
「そうよ、有り難うね」
 セーラはヘルマンににこやかに笑って礼を述べた。 
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