問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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チームバトル
前書き
十六夜ファンの皆さん、申し訳ありません。
『ギフトゲーム“チームバトル”
・参加者
・参加申請したものすべて
・勝利条件
・優勝
・ルール詳細
・三人一組でのみ参加を許可
・トーナメント形式で行う
・手段は基本何でもありだが、殺しは禁止。審判が危険だと判断した時点で強制失格。自らの誇り、コミュニティの“名”と“旗印”に恥じぬ戦いを心がけましょう
・また、一定量以上のダメージを受けた時点でリタイアとなり、それ以上その試合には参加できない
・降参した際にも、リタイアと同じ扱いとする
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
“陰陽師の集い”印』
清明が主催したこのギフトゲーム、もともとはギフトゲームに出れなくなってしまった一輝のために主催し、多くの実力者に声をかけたものだったのだが・・・いかんせん、本当に実力を持つ者たちは自分のコミュニティのことで忙しく、結局一輝の参加が不可能になってしまったのだ。
清明がその旨を一輝にあやまりに行った時も、まあさすがに予想がついていたことと、自分だってやることがあるのに気を使ってくれたことも理解しているので、特に何も言わず、むしろお礼を言ったほどに、清明は動いていたのだ。
(完全に復興が終わったら、今度こそちゃんとやらんとなぁ)
下層のプレイヤーが楽しそうに参加しているのを見ただけでも、このゲームを開催した意味はあったが、目的を達成できていない。次こそはちゃんと彼が参加しても大丈夫なプレイヤーを集めようと決意し、壇上に立つ。
「あー、プレイヤーのみんな、お疲れさん。ここまでの試合、チームであるからこその戦略も一人一人の力も見せてもろうて、楽しかったで。アジ=ダカーハの騒動なんかもあったんやけど、一番の功労者もめぇ覚ましたことやし、ここは神魔の遊び場、“箱庭”や。この調子で盛り上がっていこな」
さすがは箱庭というべきか、すでに敗退しているプレイヤーも含めその場にいる全員が盛り上がった。各々に声を上げ、拳を突き上げ、自らの意思を見せる。
「ほな、そろそろ次いくで。ラストバトル、決勝戦。参加すんのは、まず遠距離武器のことなら下層では彼ら。プレイヤーもいれば製造もおり、この一点集中のコミュニティ、“アーチャーズ”」
清明はその言葉とともに流れるように色とりどりの鳥の式神を展開すると、まず黒い者たちが集まって“アーチャーズ”という名を、残りの式神が並んで、弓と銃が交差した旗印を、コミュニティ“アーチャーズ”の旗印を描く。
「もう一方は、“アジ=ダカーハ”との戦いでも中心メンバーとして活躍したコミュニティの一つ、“ノーネーム”のメンバーや」
再び同様のパフォーマンスが起こり、当然ながら名は描かれないが、代わりに一輝が取り戻した旗を描く。日の昇る丘と少女の、旗印を。
これまでではありえなかったその光景に対して二人の少女はその顔に笑みとやる気を見せ、一人の少年は、ほんの一瞬だけ悔しさをにじませる。
「さ、お互いに準備はええな?もうどっちも豪華景品をもらえるのは確定しとるけど、どうせなら上目指してぇな。ほな・・・決勝、始め!」
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ゲーム開始と同時に、“アーチャーズ”の三人は一人二門ずつのマシンガンを構え、弾幕を張った。連射である。『到底比べ物にならないくらい強いし、先手を打とう』という考えでの連射である。これでダメージを与えることができれば十分、万が一にも一人でも倒すことができたのなら御の字のその作戦は・・・
「ふんっ!」
しかし、耀の繰り出す、グリフォンの恩恵によって防がれる。高密度で張られた風の壁は、弾の一つでも通ることを許さない。
「ありがとう、春日部さん。おかげで助かったわ」
「ううん、別に私が何かしなくても大丈夫だったと思うんだけど」
「アルマがいれば大丈夫だったかもしれないけど、今回のゲームでは使わないもの。私自身の身体能力はただの人間と変わらないし」
「お嬢様の言うとおりだぜ、春日部。だからやっぱり、さっきのはナイスプレーだ」
いつも通りの表情の二人からの言葉に耀は小さく笑みを向け、すぐに正面に戻す。そこでは、相手がマシンガンを捨て、それぞれの得意な武器を手にしているところだった。
今回のゲームでも、三人は自分の力を抑えてゲームに参加している。我路炉に言われたように、これは全力を出していいゲームではないのだから。
その結果、耀は『合成をおこなわず単一での行使のみを行い、また最強種の具現は行わない』。飛鳥は『アルマテイアとディーンの使用禁止』。十六夜は『力や防御力を強制的に落とす枷の着用』。といった形での制限を受けている。
よって今回、耀が何もしていなければ飛鳥はリタイアしていたのは間違いないだろう。
「じゃあ、ここからは予定通りに?」
「そうね。じゃあ私はあの弓を持ってる人にするわ」
「なら俺はライフルのやつでいいか?」
「うん、いいよ。私がボウガンの人の相手をするから」
どうやら、三人は最初からこのような形で予定を立てていたらしい。つまり、完全な一対一。
実はこの三人、初戦で三対三をやろうとした結果、相手の緻密に練られた作戦にしてやられているのだ。その時はどうにかぎりぎりで勝利したものの、それ以降は『基本一対一、何か必要ならサポート』という戦術で固定された。チームバトルの意味がない。
なお、ちゃんとした多対多の戦い方は、後日練習するそうだ。
「では・・・いくわよ、メルン、メリル、メルル!」
「「「はい!」」」
三人の群生例の少女たちが元気よく返事をするのと同時に二人はそれぞれの相手に向かい、飛鳥は籠手を着ける。燃やす宝玉と凍らせる宝玉のついたあれだ。
飛鳥side
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さて、こうまで遠距離の相手に対してどう戦おうかしら・・・
「飛鳥、危ない!」
「え?」
メルンの言葉で顔を上げると・・・矢が大量に迫っていた。
「も、『燃やしなさい!』」
とっさに宝玉に命じて燃やし尽くすけど・・・おかしいわね。どうやったら、弓であんなに同時に・・・
「なんにしても油断大敵、ね」
いくら下層の、ギフトを抑えて参加しているゲームとはいえ、ギフトゲームに変わりはないんだもの。私が疑似神格を宿しても耐えられるものがなければ弱い私は、策を練らないと簡単に負ける。
「・・・メリルとメルルは、二つ前と同じことができるように準備。メルンは私と一緒に行くわよ」
「「「はい!」」」
言われたとおりにメリルとメルルが地に潜りメルンが肩に乗ったのを確認してから、再び矢をつがえて構えている私の対戦相手を見る。多分私と同い年くらいの、耳のとがった女の子。
「私は久遠飛鳥。コミュニティ“ノーネーム”に所属するプレイヤーよ。貴女は?」
「・・・わざわざ名乗る必要がありますか?」
「ええ、もちろん。だってこのギフトゲーム、まだプレイヤーの名前が読まれてないのよ?名乗りは必要でしょう」
「・・・確かに、一利ありますね。宣伝のためにもちょうどいい」
そういった彼女は矢を引き、こちらに狙いを定めながら、
「遠距離攻撃系コミュニティ“アーチャーズ”所属、プレイヤーのシエルです。メインウエポンは、弓」
「あら、言ってしまっていいのかしら?」
「私たちは自らの武器に誇りを持っています。これを偽ることはしません」
私は武器を使わないからわからないのだけど・・・
「・・・いいわね、そういうの。私たちのコミュニティにも、自分の武器を誇りに思い、命を預けるプレイヤーがいるわ」
「それは素晴らしい。武器の種類は異なるのかもしれませんが、同じ志を持つ方がいるというのはうれしいことです」
「まあ、彼の場合には本当に武器そのものにも愛されているのだけれど・・・」
「武器が意志を持つのですか?」
「ええ、そうよ。それはもうぞっこんで」
スレイブは、本当に見ていても飽きないのだけど・・・そろそろ何か動いてほしいわね。そうでなくとも、いい加減に動かないとおいて行かれそうな感じだし。ヤシロはいつ動いてもおかしくないし、音央さんはしっかりと動いたみたいだし・・・
・・・恋の一つもしてないのに、何を言ってるのか、っていう話よね。身近なのは一輝君か十六夜君で、どっちもかなりの相手ではあるんだけど、一輝君は競争力が高すぎるし、十六夜君もなんだかんだで一途だし・・・
「・・・悲しくなってくるから、考えるのはゲームの後にしましょう」
「どうかなさいましたか?」
「いいえ、何でもないわ。ただちょっと、自分の恋愛経験のなさに絶望してしまっただけで」
「・・・よろしければ、今度相談に乗りましょうか?これでもあなたの十倍は長く生きているので」
あら、意外・・・でも、エルフだというならあり得ることなのかしら。
そして、それだけの経験があるなら、自分のことだけじゃなくてあの辺りのことも聞けそうだし・・・
「それなら、お願いしようかしら」
「では、お茶の用意をしておきますね!」
彼女はそう言いながら再び矢を射ってくる。今度は意識をそらさずにそれを見ていると、射られた矢が分裂していく。なるほど、それで弓なのにあそこまで同時に向かってきたのね。これが彼女のギフトによるものなのか、それとも弓の力なのかはわからないけど・・・そこは、とりあえず気にしなくていい。
「『燃えなさい』!」
もう一度まとめて燃やし尽くし、彼女との距離を確認して、肩に乗っているメルンにアイコンタクトをとる。この距離なら、たぶん行けるはずよね。
というわけで、走る。
「・・・は?・・・・・・・・・って、ちょっと!?」
急に走り出したことに驚いたのか何なのか、少しの間ぽかんとしてくれた間にだいぶ距離を詰めることができた。で、あとは・・・
「❘一にして全《ワンフォーオール》」
「メルン!」
「はい!」
その言葉と同時に放たれた矢が一気に増えたので、メルンに穴を作ってもらい、そこに落ちることでやり過ごしてから再び走る。
「ああもう、その子たちも厄介ね・・・!」
「私のかわいい仲間たちだもの。強いにきまってるじゃない。」
そういいながらギフトカードに触れて、水樹の幹を取り出す。ペルセウスのギフトゲームでこれの本体を使って大立ち回りしたことはあるけど、幹で戦うのは初めてね。といっても、一輝君の戦い方からヒントを得たのだけれど。
「『水を!』」
「?一体何を・・・」
まあ、急に水樹の幹から大量の水を出せばその反応になるわよね。けど、その隙は決定的よ?
「『凍れ!』」
続けて宝玉に命じて、その水を一気に凍らせる。出来上がるのは、超巨大な、分厚い氷の壁。
うーん、やっぱり一輝君のようにはいかないわね・・・コッペリアの時、一輝君は本当にきれいに、空気の一つも入れないで作っていたもの。そうじゃなくても、形もきれいだった。まあ、うん。一輝君にやり方とかを教わってなかったら、もっと酷かったと思うのだけど。
「巨大な氷の壁、ですか。まさか、それで防御を完璧にしたつもりですか?」
そう言いながら、再び矢をつがえるシエルさん。砕くつもりなのかしら?なら。
「メルン、足場を少し緩めて!」
「はい!」
さっさと行動するだけよね。うんうん、向こうもやってきたことじゃない。先手必勝。
というわけで、メルンに頼んで氷の下の地面を、彼女のほうだけ少し沈める。結果として起こるのは・・・
氷の壁が、彼女に向かって倒れていく♪
「え、ちょ、はあ!?どんな精神してるんですか、あなた!」
「“ノーネーム”主力“問題児四人衆”、久遠飛鳥よ」
「そんなのが主力で大丈夫なのですか!?そして、本気でむかつくのでその素晴らしい笑顔をやめなさい!」
あら、笑顔でいることはいいことだと思うのだけど・・・不満だったみたいね。
「ちなみに、この間“アジ=ダカーハ”を倒した一輝君と、ここにいる三人を合わせて、よ?」
「英雄のイメージをさも当然のように崩さないでください!ちょっと憧れていたのが一瞬で崩れ去りそうですよ!❘全にして一《オールフォーワン》!」
一にして全だと別れたということは、たぶん全にして一はその逆・・・威力重視、というところかしら。それなら好都合ね。
「メルル、メリル!」
「・・・え?」
間の抜けた声を出した彼女は、そのままメルルとメリルのあけた穴に倒れる。要領は、さっき氷の壁を倒した時と同じ。今回は後ろ向きに倒れたら彼女がその穴にきれいに入るくらいにしたんだけど・・・うん、ちゃんと入ってるわね。そして、氷の壁で蓋もされてる。
「お疲れ様、三人とも。完璧だったわよ」
仕事が終わって私の周りをまわっている三人に声をかけてから、彼女に近づく。どうにかしてどかそうとしてるけど、そこそこの重量を持ってるからどけることもできない。穴も狭いから、弓を構えるのも無理よね。
「さあ、どうかしら?」
「・・・はぁ、私の負けですね。降参します」
彼女の近くまで行ってから宝玉を向けて尋ねると、降参してくれた。同時に全プレイヤーの胸につけられている清明さんの札も赤く色づく。
「それで、ですね。降参しましたので、ここから出してくれませんか?」
「・・・・・・・・・」
「すいません、なぜ目をそらすのでしょうか?」
・・・どうやって出すのか、考えてなかったわね。相手を穴に落とす戦法は他でもやったのだけれど、こうして蓋をしたのは初めてだし。
「・・・ねえ、メルン、メリル、メルル。何か方法はない?」
「「「んー?・・・むり!」」」
「ちょっと待ってください、何も考えてなかったのですか!?」
「無茶を言わないで。自慢じゃないけど私、この身そのものは単なる人間と変わらないのよ?」
「本当に自慢になりませんね!」
さて、本当にどうしようかしら・・・とりあえず、終わったら十六夜君か春日部さんに頼みましょう。
――――ドガン!
とか考えていたら、爆発音が聞こえた。
========
さて、私の相手はボウガン。・・・ボウガンって、どんな武器なんだろう?使ってるのを見るの、初めてかも。
「えっと・・・“ノーネーム”の春日部耀です」
「・・・ハハッ、開始早々自己紹介ですか。いいですね、それ」
見るからに爽やか!っていう感じの人がそういいながら笑ってる。なんだろう、これ。
「じゃあ僕も改めて。“アーチャーズ”のフェテス・ガラです。メインウエポンはクロスボウ」
「クロスボウ?」
「よく言われるのは、ボウガンという言い方ですね。実際にはこれ、正しくないんですけど」
「そうなんだ」
「残念なことに、知られてないんですよね。貴女も、ボウガンを使う人にそんなにあったことはないでしょう?」
確かにその通りだ。弓ならフェイスレスとか一輝の妹とかが使うみたいだけど、ボウガン・・・クロウボウは初めて。
「では、私なりの改造を加えたクロスボウがどこまで通用するのか・・・試させてもらいます」
「改造してあるんだ」
「ええ。本来私はプレイヤーではなく、生産者ですので!」
そう言いながら放たれた矢を、とりあえず風で無理矢理に止める。うん、いける。
「なるほど・・・それが、グリフォンの恩恵ですか。確かに噂の通り、人間でありながら幻獣の力を使うようですね」
「うん。これは、友達の証」
「友情がより一層力を強くする。素晴らしいと思いますよ、とても羨ましいです」
「・・・貴方だって、生産側の人間ならそれができるんじゃないの?」
「そうなりたいからこそ、自分で試しているのです」
彼は再び矢をつがえる。少し緑がかった矢はさっきのとは違うけど・・・それが何なのかわからない以上、普段通りにするしかない。
下手に考えず、気負わず、とりあえず普段通りにして、問題が出たら修正する。戦いに慣れていないなら、これが一番なんだとか。
・・・これはこれで難しいと思うんだけど。なんで当然のように勧めてくるかな、一輝は。できることなら、私たちがまともに戦い始めたのは箱庭に来てからだってことを考えてほしい。一輝と違って、普通の世界出身なんだから。
「では、行きます!」
そう言ってこちらに向けて放たれた矢をさっきと同じように風で対処しようとすると・・・それが全部吸収されて、速度を増してくる。だから割と必死になって避けた。全力になって避けないと避けれそうになかったから、瞬発力とかが大きい動物、幻獣の力を借りて。
「・・・おや、避けられましたか」
口調そのものはさっきまでと変わらないけど、少し間が空いたあたりから動揺したのだと思いたい。あとできるなら、こっちが動揺したのだとは思われたくない。
「うん、避けた。今のは風の恩恵を吸収するの?」
「似たようなものですね。より正確にいうのなら、金気と水気を組み込んだ矢、ということになりますけど」
「言っちゃっていいんだ」
「ええ。できることなら、そちらのコミュニティの陰陽師殿にお伝えしていただきたいので」
そう言えば、五行思想って陰陽術の関連だったっけ。それで、一輝に売り込みたい、と。
「できるなら、彼に使っていただいて宣伝効果を、と考えております」
「・・・予想の一つ上だった」
「我々にとっては重要なことなんですよ、宣伝って」
彼はそう言いながら矢筒に手を伸ばす。今更だけどいくつもの矢筒を下げて、その全てに違うデザインの矢が入ってる。ということは、全部込められているものは違う、できることは違うってことなんだと思う。
とはいえ・・・まったくもってわからない。五行思想とか、そんな物知らない。というわけで、
「・・・よし、このまま突っ込もう」
「正気ですか?」
「うちのコミュニティで一番戦いなれてる人から、『よくわからない能力が相手でも、勝てない、って思わなかったらとりあえず突っ込んどけ』って教えられてる」
「ずいぶんとクレイジーなようで」
「うん。一人で三頭龍に突っ込むくらいにはクレイジー」
その言葉に彼が驚いた隙を狙って、一気に突っ込む。具現するのは火蜥蜴の力。とりあえず手に火をまとわせてそれで殴り掛かる。そんな感じのざっくりとした作戦を立てて向かっていくと、今度は茶色っぽい感じのデザインの矢が放たれる。で、避けたのに火が全部吸収された。
「・・・ま、いっか」
「へ?」
とはいえ、相手は矢を放った直後。もう一度新しく矢を❘番《つが》えて、狙いをつけて、それから撃つ。なら、そんな暇を与える前に殴ればいい。うんうん、何も問題はない。
「もう少し驚きとかないんですか、貴女!?」
「残念だけど、色々と体験しすぎてそうそう驚かない自信がある」
「なんですかそれ!」
そう言いながらも矢を番えている彼はプレイヤーもちゃんとできるんじゃないかなんて考えつつ、左腕で無理矢理払って照準をずらす。なぜだか彼はそのまま、まるで私の腕を支えにするみたいに構えてたけど・・・とりあえず分からなかったので、予定通りにおなかを殴る。あんまり怪我しないように、それでも確実に意識を刈り取れるくらいで。だいぶ意外なんだけど、一輝はこういう技術も持ってるらしい。てっきり、技として備えてるのは殺す前提のものだけだとばかり思ってた。
まあなんにしても、最近本拠で暇な一輝に教わったそれは思った以上にうまくきまり・・・彼は、矢を放つと同時に気を失った。そして、私の後ろのほうで爆発音。
「・・・うん?」
オーケー、状況を整理しよう。
私は結局、力技で相手を倒した。これは問題ない。ついでに、一輝にも宣伝しておこうと思う。
そして、彼は私がそらしたつもりのクロスボウから矢を放った。これ自体も、問題ない。
で、放たれたほうから爆発音が聞こえてきた。これはさすがに問題だ。
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俺の相手はライフルを使うだけあってか、すぐにでも距離をとった。フィールドが広いことにかこつけて、四キロほど。で、狙撃を受け続けている。
よくもまあ狙えたもんだと思うが・・・まあ、ちょうどいい。❘ライフルとはちょっとやってみたかったんだ《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》。
「つっても、この距離じゃあなぁ・・・」
なんとなくだが、あれは銃弾を見るってよりは撃ってる本人を見てるように思えた。となると、ここまで距離を取られると難しいもんがあるな・・・
「なら、近づくか」
そうしないとできねえんなら、やるしかない。そういうわけでとりあえず、ちょっと強めに踏み込む。よし、見える距離になったな。
「・・・無茶苦茶にもほどがあるわね、アンタ」
「安心しろ、最近俺程度じゃ無茶苦茶なんて役不足だって知ったところだ」
「だとしたら、アンタは何なのよ?」
「・・・何の役にも立たねえ、ただの人間だよ」
拡声器みたいなもんを使ってるっぽいそいつに言われて、そう返す。
さて、ここまでこれりゃ・・・この距離なら、見える。あいつにできたなら、できる。出来ないなら・・・
「・・・さあ、やるか」
「そうね・・・やるわよ」
そう言って撃たれた初弾を、俺は横に跳んで避けてしまった。これじゃあ、意味がない。
確かあいつは、あの時・・・そうだ、走ってた。なら、俺も走るか。
判断が終われば、あとはその通りに走るだけだ。だから、俺は走った。あの時のあいつが出していたスピードを意識して、走る姿勢は自分が一番楽な姿勢で。
初弾は、避けられた。イメージしたとおりにギリギリのところで。が、速度が落ちた。
次弾は、全然だめだ。しゃがむとか、動きが大きすぎる。
その次は、避けること自体は完璧だった。確かに、あいつの動きをそのまま再現できた。が・・・
「ガッ!?」
その後が、駄目だった。避けた弾に横から飛んできた矢が当たって、爆発する。俺はそれをもろに受けて、吹き飛ばされ・・・リタイア。
倒れた俺が見たのは、春日部が横から飛んできてスナイパーを倒した姿。ああ・・・また、駄目だったか。
本当に・・・俺は、無力だ。
後書き
はい、まあこんな感じになっております。
本当に、十六夜が・・・って感じです。はい、申し訳ありません。
『なんだこれは!こんなの十六夜じゃない!』って言われても仕方ないということは理解しております。
ですが・・・もうこれやめようがないので、このままいかせていただきます。
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