八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二十七話 日本の花その十四
「日本人が増えていて」
「日本の味も普及している」
「そうじゃないんですか?」
「確かに和食はある」
実際にとだ、エリザさんは僕に答えた。
「和菓子も」
「そうですよね」
「けれど和菓子は高級なお菓子」
「オーストラリアじゃそういう扱いですか」
「日本独自の」
「たい焼きはその中に入っていないんですか」
「そう」
こう僕に答えてくれた。
「入っていなくて」
「こういうお菓子はなんですね」
「巷によくある様なものは見たことない」
「そうなんですね」
「少なくとも私は」
「日本のお菓子も多いけれド」
「確かにたい焼きはないあるな」
ジューンさんも水蓮さんも食べながら言う。
「たい焼きはちょっト」
「ないあるよ」
「そうなんだ」
僕は二人の言葉も聞いて目を瞬かせてだ、そしてこう言った。
「僕の予想通りだね」
「これ結構ポピュラーじゃないの?日本だと」
美沙さんはチョコレートのたい焼きを食べつつ僕に横から言って来た。
「北海道でもあるし」
「まあ何処でもね」
「あるけれど」
日菜子さんも同じ意見だった。
「普通に」
「けれど日本ではそうでも」
僕はここで自分のその読みを話した。
「外国ではやっぱりそうじゃないんだね」
「日本のお菓子は上品」
エリザさんがまた言う。
「こうした庶民的なものはないから」
「他の国では」
「けれどそれがいい」
エリザさんは食べ続けつつ僕に話してくれた。
「毎日食べたい位」
「そんなにお気に召されたんですね」
「うん」
やっぱり食べながらの言葉だった。
「最高」
「じゃあここに毎日」
「来て食べる」
「ああ、是非来てくれよ」
お店の親父さんも僕に言って来た。
「待ってるからな」
「そうさせてもらう」
「それじゃあな、どんなたい焼きでも食ってくれよ」
「粒餡だけじゃなくて」
それだけじゃなくとも言うエリザさんだった。
「チョコレートでもカスタードでも最高」
「粒餡とこし餡どっちがいいんだい?」
「どっちも」
どちらの粒餡もというのだ。
「好き」
「へえ、どっちもかい」
「そう」
言いながら粒餡のたい焼きを食べるエリザさんだった。
「白餡も」
「いいねえ、見たところ外人さんみたいだけれど」
「オーストラリア生まれ」
「ラグビーのあの国だね」
「我が国のラグビーは世界一イイイイイイイ」
あの漫画の真似を抑揚のない声で言うのは違和感があった、正直こんな違和感のある言葉は生まれてはじめて聞いた。
「勝てない相手はないイイイイイイ」
「ありますわ」
そのエリザさんにジョーンさんが強く言って来た。
「それが我が国です」
「ニュージーランド」
「貴女の国には負けません」
「負けたらやり返す」
エリザさんはジョーンさんを横目で見据えつつ返した。
「最後に勝つのは我が国」
「いえ、我が国です」
「ラグビーは負けない」
「こちらも」
何か急に言い合いになったけれどこの場はこれで終わって僕達は紫陽花とたい焼きを楽しんだ。僕の狙いは当たった形になって皆親睦を深められた。
けれどこの時にもう火種が撒かれていた、そしてその火種は程なくして燃え上がることになることを僕はまだ知らなかった。
第二十七話 完
2015・1・6
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