八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二十六話 バーベキューその十四
「後でその返しが来る」
「一人占めのツケ」
「それが、ですわね」
「世の中はそういうものだ」
井上さんは真面目な声でだ、二人に話した。
「一人占めをしていいことはないのだ」
「けれど半分ずつなら」
「皆で分け合えば」
「皆が幸せになれるからな」
この場合はオーストラリア、ニュージーランド双方がだ。
「いいのだ」
「わかった、それなら」
「わたくし達も」
「半分ずつ」
「そうすべきですわね」
「それは羊も同じだ」
井上さんは二人を交互にバランスよく観つつ言っていた、その言葉も二人にかけているがこちらは交互ではなく同時だった。
「売りにしてもだ」
「一人占めではなく」
「半分ずつに」
「そうすればいい」
「そうなのですわね」
「確かに競争原理はある」
資本主義ならだ、少なくとも日本は北朝鮮じゃない。
「しかし共に美味で値段も同じならばだ」
「半分ずつにして」
「そうしていくといいですわね」
「そういうことだ、では食しよう」
井上さんはここまで話してあらためて言った。
「羊をな」
「それじゃあ」
「また」
「うむ、私も食しよう」
その羊肉を焼いたものをというのだ。
「マトンもラムもな」
「はっきり言ってどっちも美味しいのよ」
マルヤムさんが言って来た。
「マトンの匂いもこれはこれで食欲をそそる」
「そう思えればだな」
「もう羊のお肉は最高のものになるわ」
「匂いの強いマトンでもな」
井上さんもマルヤムさんに応える。
「最高だ」
「井上さんはマトンもですね」
「いけるのね」
「最初はその匂いに驚いた」
マトン独特のそれに、というのだ。
「しかしだ。肉の美味に気付いてだ」
「匂いも好きになったと」
「そうなのね」
「そうだ、マトンの匂いは今では大好きだ」
そうなったというのだ。
「かえってな」
「そう、匂いがいいのよ」
美沙さんもここで言う。
「マトンはね」
「全くだな」
「先輩もそのことわかっているのね」
「うむ、匂いが駄目というのはな」
それはとだ、また言った井上さんだった。
「偏見ではないかと思う」
「偏見っていうのね」
「そうだ、私は偏見は大嫌いだ」
厳しいけれど生真面目で公平な井上さんらしい言葉だった、そしてこの人はただ言ったりするだけではない。
「それがあってはだ」
「人間としてっていうのね」
「そうだ、駄目だ」
まさにとだ、井上さんはまた言った。
「だから私は匂いに惑わされずだ」
「食べるのね」
「そうだ」
「確かに井上先輩はね」
美沙さんはまた言った。
「差別とかしないわね」
「自分がされたらどうだ」
井上さんは美沙さんに問うた。
「自分が差別されたらどうだ」
「それでいいって言う人いないわよ」
美沙さんもすぐに返した。
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