八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二十六話 バーベキューその十三
「マトンもラムも最高」
「羊毛を忘れないで下さいまし」
「羊では負けない」
「こちらこそですわ」
「二人共凄いわね」
ここでだ、ニキータさんが少し驚いた感じで言った。ニキータさんはでかい牛肉を焼いたものを美味しそうに食べている。
「羊肉へのこだわりが」
「そうね、何かね」
香織さんがニキータさんに応える。
「物凄くね」
「強いこだわりっていうか」
「そういうのがあって」
「しかもそこにね」
「自分達の国の意識もあって」
「それでね」
「引いてないわね」
こう二人で話す、そして。
今もだ、エリザさんとジョーンさんは対峙していた。
その中でだ、エリザさんはジョーンさんに言った。
「ジョーン、絶対に」
「引かないのでして?」
「私はオーストラリア人だから」
「わたくしもニュージーランド人ですわよ」
「羊はオーストラリア」
「ニュージーランドですわ」
そのまま千日戦争になりそうな感じだった、だがここでだった。
井上さんが二人の間に入ってだ、こう言った。
「待て、それならだ」
「それなら」
「と、いいますと」
「どちらの羊肉も美味いのだな」
まずはこのことを確認してだった。
「そうだな」
「そう、とても美味しい」
「最高のマトンにラムですわよ」
二人はここでも引かない感じだったがそれでも井上さんが間に入っているせいか随分大人しくなった感じがした。
その二人にだ、井上さんはまた言った。
「ではどちらも美味いのならな」
「確かめる」
「勝負ですわね」
「いや、半々だ」
こう言うのだった。
「半々でいこう」
「半々?」
「と、いいますと」
「はっきり言えば私はマトンもラムも好きだ」
井上さんは二人にこのことも断った。
「そして君達の国の羊肉をどちらも食べたことがある」
「マトンもラムも」
「そうですの」
「だからどちらの味も知っている」
それ故にというのだ。
「それで言うがどちらも美味い、丁半つけられない」
「それで半々とは」
「どういうことですの?」
「オーストラリアの羊肉とニュージーランドの羊肉をだ」
「それぞれ半分ずつ」
「注文するといいますの」
「そうすればいい」
これが井上さんの考えだった。
「どちらを全てということはな」
「ない」
「そういうことですの」
「それならいいだろう」
「その発想はなかった」
「けれどいいですわね」
二人は井上さんのその提案にこれまでの勢いを完全になくした、それでこうしたことを言った。
「そもそも片方だけが一人占めとか」
「あまりどうかと思いますわ」
「けれど半分ずつなら」
「両方にとっていいですわね」
「一人占めはその時はよくともだ」
それでも、とだ。井上さんは強く言った。
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