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木ノ葉の里の大食い少女

作者:わたあめ
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第一部
第三章 パステルカラーの風車が回る。
  同期


 街は恐ろしいまでの静寂に包まれていた。

「キバ……大丈夫なの、あたし達で? あの、リーさんですら敵わなかった人を……倒すなんて?」

 先頭を行くのはキバだった。次にいの、チョウジと続く。暫時的にキバ小隊と名づけられた彼らは、静まり返った街の中を走り抜けていた。
 先ほどカブトが里の者達に対して使用した術――涅槃精舎というらしい――は、一瞬にして街の人々を昏睡状態に陥らせた。キバ達が助かったのはテンテンが持ってきたユナトの巻物のおかげである。任務はたった一行簡潔に書かれており、それ以降は武器口寄せや結界、時空間忍術や、万が一幻術にかかった時に幻術を弾くような術式すらあった。涅槃精舎から自分たちを守ってくれたもの、それはその術式だったのである。

「っやるしかねーだろ!? 木ノ葉を崩させてたまるかッ!!」
「大丈夫だよ、いの……それに僕らだって頑張らないと。シカマルやサクラだって頑張ってるし」

 キバが加速し、不安そうな顔に精一杯笑顔を浮かべてチョウジがいのを励ました。幼馴染と親友の名を出され、いのは唇を噛み締める。
 予想外に始まったAランク任務の難易度の高さは、想像を超えていた。



「あのユナトと言う女……まるで最初から木ノ葉崩しが起きることを知っていた、そうは思わないか? 何故なら彼女の計画は、余りに周到すぎる……短時間で三つの巻物にこんなに沢山の口寄せや術式を詰め込むなど、ほぼ不可能に近いからだ」

 シノを先頭に、シカマルとサクラ。感知タイプのシノが我愛羅達の位置を探知し、シカマルとサクラがそれに続いていた。シカマル小隊と名づけられたこのスリーマンセル内では、各自砂の者達、大蛇丸やユナトについて知っている情報を交換した後に、彼らに関する推測が行われ始めていた。

「ああ……シノの言うとおりだ。こんなに沢山の術式を、それも三つの巻物に押し込むなんて、例えプロでも一分や二分の間に出来るようなことじゃねえ」
「あ」

 不意にサクラが声を上げ、シカマルとシノが振り返った。

「どうした、サクラ?」
「え、……関係ないかもしれないけど……ユナトって人、ナルトの知り合いの木ノ葉丸って子によく似てるのよ。目元とか」

 戸惑ったように話すサクラにシノは眉根に皺を寄せ、木ノ葉丸という名前に聞き覚えのあるシカマルが直ぐ反応した。

「――!! それってアスマの言ってた三代目の孫じゃねーか!!」
「ええっ!?」

 シカマル自体木ノ葉丸にはあったことがないし、二人は他人の空似かもしれないが、シカマルはどうもただの他人の空似のようには思えなかった。木ノ葉丸とユナトは何か関係があるのだろうか? 暫く考えを巡らしていたシカマルは、直ぐにそれを断ち切った。今は任務が先だ。

 +

「やあ、お久しぶりだねえ白目っ子くん」

 手を振ったのは病田カイナだった。呪印に侵食されかけたその体に、ナルトとネジは目を瞠った。

「知り合い……なのか?」
「……に、近いな。一度戦ったことがある。セミロングの奴は人を病気にさせ、目の虚ろな奴は幻術を使う」

 ナルトが顔を引き締め、すっと呪印に侵食されたカイナとミソラ、そしてなぜか一人だけ呪印はつけていないらしいケイを見つめなおした。
 どくん、と心臓が高鳴る。ひどく懐かしい感覚が襲った。

 +

「……ロバ?」

 目を丸くするサスケとはじめに、ハッカとカカシは険しい顔つきで視線を交わした。修行中偶然出会い、共に修行することにしたハッカ、はじめ、カカシにサスケ。双方の術ももう随分上達した頃、現れたのは灰色のロバ――ユナトの口寄せ動物だった。

「木ノ葉崩しがおきていてねえ~カカシとハッカは里に戻って増援を~。木ノ葉崩しをやってるのは~砂と大蛇丸で~我愛羅達を倒す小隊が二つ派遣されてるからあ~サスケはそっちに~。ヒナタとマナとユヅルって子がまだ里に残っていて、病み上がりの二人と昏睡状態の子じゃ危ないから、はじめは二人をよろしく~」

 間延びした声で喋り終えるのとほぼ同時、ロバは煙を上げて消えていた。ハッカとカカシは顔を見合わせ、頷きあい、そして各々の弟子に向きなおった。

「サスケ、はじめ。グレイ――あのロバの指示に従え。俺たちは一足先に里に帰っているから」

 さっと目にも見えない速さで去っていた師の姿に暫く立ちすくんでいたはじめとサスケは、不意に自分たちのやるべきことを思い出した。はじめが口寄せの術を使用し、鳩を口寄せする。はじめが絶対飛べると言い張る、飛べないんじゃないかと疑うくらいいつも歩いてばかりの鳩だ。

「いくぞ、サスケ」
「ああ」

 こうしてアカデミーの首席と次席は、地面を蹴って飛び上がった。

 +

「大丈夫か? サスケ。修行は相当ハードだったようだが」
「お前こそ大丈夫なのか? はじめ」

 にやりと笑いかけるサスケの髪は、少しの間切られていなかった為に伸びていた。服装も随分と替わっている。紺と白だった服装は黒で統一され、前まで両腕に着用していたそれも違うものに変わっている。はじめは相変わらずだったが。
 くるっぽー、と鳩がはじめの肩の上で鳴いた。

「ぽっぽによると直ぐ近くだそうだ。……私もいこうか?」
「……ぽっぽ? いや、それには及ばねエ。それよりお前はさっさとマナ達のところにいった方がいい」
「――了解だ。気をつけろ、サスケ」
「ああ、そっちもな、はじめ」

 ぽっぽと名づけられた鳩を肩に乗せて去っていくはじめの姿を暫く見送っていたサスケは、意を決してはじめと逆方向に走り出した。今は我愛羅を倒すのが先だ。

 +

 我愛羅の中にあるものはもう、疼きだして久しかった。
 だからうちはサスケが目の前に降り立った時。
 我愛羅はサスケを目撃したかしないかの内に、砂を瓢箪から溢れさせていた。
 
 

 
後書き
全くと言っていいほど進展がありません。
次はサスケVS我愛羅の予定です。 
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