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とある3人のデート・ア・ライブ

作者:火雪
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第七章 歌姫
  第3話 敵or味方

土曜日に、上条、士道、折紙、十香の四人は天央祭の各校合同会議が開かれる会場へと向かっていた。

本当なら亜衣麻衣美衣の三人が出席する予定なのだが、何でもステージ部門でバンドをやるらしく、その練習をするらしいのだ。

つまり、代役である。

十香「むぅ……鳶一折紙!士道から離れるのだ!」

折紙「それはこちらのセリフ。あなたの体臭は私たちにとって毒でしかない」

十香「な、なんだと!?」

士道「いや、あの……」

上条「士道、お疲れ」

両脇から腕を絡んでくる十香と折紙に士道は困惑するしかなかった。

すれ違う人には決まって驚愕と嫉妬の目をされるので本当に辛い。

折紙「……上条当麻」

上条「ん?なんだ?」

士道には聞こえないような小声で、折紙は顔を上条の方に向けてきた。

折紙「このあと暇?」

上条「まあ、暇だな」

折紙「……この会議が終わったら後で話がある」

上条「ん、了解」

折紙から話があるなんて珍しいな、と思っているとようやく目的地に着いた。

赤煉瓦で構築された荘厳な校門から見えるのはお城のような立派な校舎が見て取れた。

部活や天央祭の準備のためだろうか、休日なのにちらほらと生徒が見受けられる。




私立竜胴寺女学院。



名家の子女の数多く通う、天宮市屈指の名門校。

左右から飛び交っていた口喧嘩も、学校を目の前にしてピタリと止まった。

十香「おお、何だかすごいな……」

上条「さすが、名門校だな」

折紙「……」

士道「じゃあ、さっさと行きますか」

名門私立高校に入るという緊張感を持ちながら、四人は足を進めた。



ーーーー
ーーー
ーー




五河家にて。

四糸乃「……っ!」

よしのん『四糸乃、ドラマに熱中してるね〜、そんなに面白いかなぁ?』

四糸乃「よしのんは、黙って、て……」

よしのん『あ〜、ごめんごめん(あーくんはすぐに寝ちゃったし、何だか暇だなぁ……)』

一方「……zzz」

よしのんはため息を一つついて、観てて面白くないドラマ視聴を続行した。


ーーーー
ーーー
ーー




事務局から入学許可証をもらい、会議が行われるという第二会議室へと向かった。

特に迷うことなく第二会議室へと到着し、扉を開ける。

そこには既に様々な制服を着た生徒がいたが、会議まで時間があるのか席を立ったりして談笑している。

もちろん、つい最近実行委員代理に任命された士道は知り合いなどいるはずもなく、さっさと自分の学校のが書かれているネームプレートへと座る。



どうやらこの会議の特徴として、各学校、会長副会長の二名がこの場に出席することが許されている。

士道は会長代理なので行かなければならないのだが、副会長を誰にするかということにまた折紙と十香が揉め事を起こした。

別に会長だけの出席でも構わないのだが、会長代理に加えてこういう場にあまり慣れていないということもあり、そして公平な結論を出すために、折紙と十香には悪いが上条を示した。

上条は一瞬困惑したようだが、何か思いついたような表情をすると快く了承してくれた。

士道「あと五分か……」

上条「そういや、昨日の精霊はどうなったんだ?佐天さんから聞いた話だと好感度が最悪だって」

士道「そうなんだよ。何でそうなったのか俺どころか琴里まであんまり分からないっていうし……」

上条「そりゃあ大変だな」

そうこうしている内に会議開始の時間が迫っていき、談笑していた生徒も静かになっていき、自分の学校名が書かれた席へと座る。

皆は二人だろうが、こちらは凜袮を含めて三人なのだ。これほど心強いことがあるだろうか。

シン、となり緊張感が走る中、上条だけは少し心に余裕を持てていた。

と。

『失礼しまぁす』

そんな一言が聞こえてから、ゆっくりと扉が開かれていく。

入ってきたのは濃紺のセーラー服に身を包んだ少女達の一団だった。

部屋にいた各校の生徒が一斉に顔を上げる。

そして大名行列を出迎える民衆のように、二列に並んで頭を垂れていく。

士道と上条が呆気に取られていると、その少女たちが作った道の真ん中を、一人の生徒が女帝のごとく悠然と歩いてきた。

長い髪をゆったりと一つに纏めた少女。銀色に輝く瞳。圧倒的な存在感。

士道「な……ッ!?」

その姿を見て、士道は息を詰まらせた。

確かに美しい少女ではあった。


だが。違う。そんなことではない。


「こんにちわー。皆さんよく来てくれましたねぇー」


その声を聞いて、確信した。


上条も何となく察したらしく、こう言ってきた。

上条「まさか……あの人が……?」

士道「あ、あぁ……昨日の……」

士道が困惑しつつも最後まで言えなかった。

そう。

その少女は。





美九「竜胴寺女学院、天央祭実行委員委員長、誘宵美九ですぅ」





昨日、士道と佐天が遭遇した精霊ーー〈ディーヴァ〉だった。





ーーーー
ーーー
ーー



会議終了後、上条は折紙に呼ばれたのだった。

折紙は一つ、グシャグシャになった小さな紙切れを渡して、そして一言。

折紙「垣根帝督っていう人……知ってる?」

その人物は、

以前、恋査を倒すために共闘した学園都市Level5第2位の名前だった。



ーーーー
ーーー
ーー




この数日の調査で分かったことがある。

それは、

誘宵美九は大の男嫌いで、大の女好きーー百合の可能性がある、と。

そんな士道の前に神無月が差し出したのは士道が通う来弾高校の制服だ。



ただし、女子の。



士道は「また神無月さん、やっちゃったか……」と思ったが、すぐにその違和感に気がつく。

その制服は新品であり、かなりサイズが大きかったのである。

それは佐天や琴里や一方通行ぐらいの身長では少し大きいし、上条ぐらいの身長なら少し小さいサイズーーそう、″士道ぐらいの身長″の女の子が着ればピッタリ合うぐらいの……

士道「……え?」

嫌な悪寒が士道の身体中を震わせた。




その嫌な予感は、見事に的中した。



ーーーー
ーーー
ーー



その日の夜。

上条「よし、できた」

凜袮『お疲れ様。今日も美味しそうだね』

上条『サンキュー』

精霊達の分も含めた九人分のオムライスを作り上げた上条はリビングにいる皆に声を掛けた。

上条「自分のやつ取っていけよー」

ふっくら膨らんで見える卵の上にはそれぞれの名前が書いてあるという妙にこだわった仕上げ方をされていた。

皆がそれぞれのオムライスを乗せた皿を(九人用にテーブルとイスを拡張させた)それぞれ自分たちが座るところへと持っていく。

あとは琴里と士道を待つだけだが……

と。

ガチャっと、リビングから見える扉の向こう、玄関にあるドアが開いた音が聞こえた。

グットタイミングで帰ってきたな、と誰もが思った。

そして。

そこから入ってきたのは、






琴里と知らない少女だった。






『……誰?』

もう誰が言ったのか分からないぐらい綺麗に声が重なった。

その子は来弾高校の女子制服を着ていて青い髪がサラサラの綺麗に腰まで伸びているのが分かる。

どこか士道に似ているその少女は恥ずかしそうにモジモジとしている。

………ん?

と、誰もが違和感を覚えた。

いや、あれは……まさか。


琴里「紹介するわ。対ディーヴァに向けて変装した士道……もとい『五河士織』さんよ」



数秒の間をおいて。


五河家からさまざまな絶叫が聞こえた。




ーーーー
ーーー
ーー




学園都市にて。

麦野「はまづらぁ。さっさとシャケ弁買ってこいよ」

浜面「へいへい。仰せのままに」

絹旗「私は超なんでも構いませんよ」

滝壺「私はいらない」

浜面「了解」

アイテムは車で学園都市最大級のショッピングセンター、セブンスミストに行こうとしていた。

その途中、コンビニでお使いを頼まれた浜面は車を脇によせて、財布を手にコンビニへと一人入って行った。

と。

プルルルル……と、麦野の携帯電話が突然鳴った。

鬱陶しそうに麦野は携帯電話を取り出し、電話に出る。

麦野「もしもし」

ここで喧嘩腰な口調をしないところからして、彼女もまともになってきたのであろう。

『……麦野沈利様、ですね?』

麦野「……誰だテメェ」

『申し遅れました。私は学園都市統括理事会本部第一部隊の秘書をやらせてもらっている原田利光(はらだとしみつ)と申します』

統括理事会。

存在自体はよく知らないが、なんとなく想像はつく。ロクなヤツらではないことを。

麦野「……んで?そのお偉いさんが何の用?」

原田『詳しいことは後ほどメールでお伝えしますが、こういう許可は直接電話でいいかと思いまして』

麦野「早く言え。切るぞ」

原田『そう怒らないでください。では単刀直入に言わせてもらいますがーー』








原田『ーー五河士道という人物を、殺してほしいのです』









麦野「……あ?」

原田『おや?聞こえませんでしたか?ではもう一度ーー』

麦野「そういうことじゃねぇ。今更殺害以来だ?なめてんのかテメェ」

原田『まさか。私はあなたの力を買っているのですよ』

麦野「まさかこの私がはいやりますと簡単にオッケーすると思ったらお前は猿以下の脳だぜ?」

原田『……フレメア=セイヴェルン』

麦野「……人質取るとるほどヤツを殺してぇのか?」

原田『そう思っておいてください。大丈夫です。彼女は殺しませんよ』

麦野「信用できるとでも思ってんのか?」

原田『まさか。では、了承してくれますか?』

麦野「……気に食わねぇけどな」

原田『ありがとうございます。では、詳しい詳細は後ほどメールで』

そう言い残すと、原田と呼ばれた男は一方的に電話を切った。

それとほぼ同時に浜面が帰ってきて、運転席へと座る。

絹旗「誰からですか?」

麦野「統括理事会から。殺害依頼よ」

浜面「さ、殺害!?」

浜面がエンジンをかけるのも忘れて後ろに座る麦野の方を向く。

滝壺「なんで受けたの?」

麦野「フレメアが人質に取られた」

『……!?』

さすがに、これは浜面だけでなく絹旗や滝壺も驚きを隠せなかった。

絹旗「それだけ殺したい人物が超いるってことでしょうか?」

麦野「さあ?……っと、メールがきた。多分さっきの男だろうけど」

メールボックスから新着のメールを手早い操作で開く。

差出人は不明だが、おそらくあの男のメールだろう。

そこに書かれていたのは、シンプルで、そして意味がよく分からないものだった。



差出人:不明

内容:五河士道の殺害依頼について。

五河士道を殺す、又は瀕死、もしくは殺そうとすることでこの任務は達成されます。

能力の使用は許可します。

場所は町田市。

顔は画像より。

報酬はフレメア=セイヴェルンの解放、百万円のボーナス。

以上。いい結果が帰ってくることを祈っています。





麦野「……どう思う?」

絹旗「おかしなところだらけですね」

滝壺「そうだね」

浜面「……え?どこが?」

麦野の携帯電話を覗き込んでいる三人だったが、浜面の疑問に呆れたのか顔を上げて、説明を開始する。

絹旗「おかしな点が超三つ……いえ、四つあります」

浜面「ふむふむ」

絹旗「まず、冒頭のこれです。殺す、瀕死までは分かりますが、殺そうとする、で任務達成っていうのは超おかしくないですか?」

浜面「……言われてみればそうだな。その『五河士道』ってやつに拳銃向けるだけで任務達成ってことになるのか」

絹旗「事実上そうなりますね」

滝壺「それに、たったこれだけのことで報酬がよすぎる」

麦野「たかがこんなことでフレメアを人質に取る理由もねぇし、そもそもこの程度の任務、その辺のチンピラにも出来るしね」

絹旗「能力の使用って言われても……この程度の任務、拳銃一つあれば超可能ですよ」

浜面「た、確かに……」

言われてみれば、全てそうだった。

違和感だらけのこの任務。何かがおかしい。




そう。





まるで。




自分たちを学園都市の外に行かせようとしているように。





ーーーー
ーーー
ーー




上条『凜袮』

凜袮『ん、どうしたの?』

上条『ちょっと、頼みたいことがあるんだけど……』

凜袮『はいはい、言ってごらんなさい』

上条『それはーー』

凜袮『ーーー!?』

それは、

全く現実味がない、でもどこかやってみたい、そんな頼みごとだった。










 
 

 
後書き
そろそろ学園都市が動き出します。ここからは誰を中心に話が回っていくのかマジで分かんなくなりますぜぃw 
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