世界のルール
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約束
前書き
この世界は殺り繰りで構成されている
では殺らない、誰一人として殺らない者
殺りたくない者はルール違反だ
なぁ、覚えているかな。DがIを殺るとルール違反... そのルール違反をしたやつはどうなるかを
そう、
消えるんだ
人間と言う物は、仲間が居なければ生きられない。同じ種族の生き物が居なければ生きられない。生きようとしないものも居るかもしれない
それじゃあ生き物じゃないな
まぁいい。兎に角、今一番良いたいことがあるとすれば、自分は生き物であっているのだろうか?
■■■
今まで通り、ひたすら真っ直ぐ歩いて行った
赤色同士が戦っているのを見て、泣き叫びながら地面を這いつくばる奴ら共を今日は何度見ただろうか
死んで、いつどうやって自分がこの世から消えるのかわからないのだ、怖いに決まっている
そして少し歩いたところ、狭い路地裏だ、路地裏は危ないとか言うが、今となってしまえば何処もかしこも危ないさ
ガタガタと奥の細い道で物音が聞こえたのでそちらへ目を向けてみた
すると、男三人が女を囲んで居た
目を澄まして見てみる、男は三人そろって赤色
女... 少女は黄色だ
少女が黄色だと分かったと同時に、身体は勝手にその男三人の方へ動いた
一番近くに居た男を蹴り飛ばし、他の男を巻き込んだ
最初に飛んでいった男が落としたナイフを手に取り、頭を抑えて倒れこんで居る男達へ投げた
投げたナイフが、男達の足を擦って壁に刺さる
少女が涙を拭いながらこちらへ走ってくる、ふと少女の腕輪を見て気づく。黄色は黄色、でも、青になりかけていた
シールが剥がれているとかそう言うのではなく... 黄色の部分が半分以上青に侵食されて居るのだ
「おいっ! そこで倒れてる奴らの誰でもいい、殺ってこい。青になりかけてるぞっ!?」
こちらの後ろで息を整えていた少女の肩を掴み、そう言った
しかし、少女は強く首を振った
「お前、人を殺したくない質か...?」
今度は首を縦に振った
そうか...通りで手を出さない訳だ。でも、ダメだ、殺らなければ...
「一回でいい、今だけでいい取り敢えずだ...やってみろ」
少女は下を向き、顔を伏せた。だが、一つわかることは、少女が泣いていると言うこと。ぽたりぽたりと地面のアスファルトにシミを作っているのだ
倒れていた男達がこちらへ来て襲い掛かる
舌打ちをし、一人一人殺めてやった
「助けない方が良かったか?」
ことが終わり少女へ質問してみる。だが、少女は俯いたまま喋らない
同じ黄色だ、仲間になれるかと思ったのだが... これじゃあダメみたいだな
どうしろって言うんだ。めんどくさくなり、その場から離れた
子供は苦手だ、特に女、人間...
路地裏を離れ、一人で歩いている。はずだった...
先ほどの少女がひたすら着いてくるのだ、なんで? 助けた恨みか?
「ありがとう... ございます」
こちらの視線に気づいた少女がそう言った
「は?」
「助けてくれて... ありがとうございます」
「助けて欲しかったのか? じゃあなんで」
「殺したくない。人を殺したくなかった」
そう言えばそうだったな...
確かに殺したくないと言った。正確には頷いた
「人を殺さないとどうなるか知ってるか?」
「知ってます...」
人を殺さないとどうなるか... 簡単なことだ、この世は人を殺すことで回っている。なのに殺さないと言うことはルール違反.... つまり、消える
黄色の奴は七日の間人を殺さないと青になる、青の奴は三日の間人を殺さないと消えるのだ
死体が何処かに逝くのと同じようにな
「じゃあ、人を殺めなければいけない理由。わかるよな?」
「はい... でも、でもっ!」
「でも?」
殺りたくない。その一言のみしか少女にはないのだろう。どれだけその言葉を重ねたって意味が無い。そう思ったのか、少女はその一言は言わなかった
埒が明かなくなり、先ほど助けたときのようにその場から立ち去ろうとすると...
「あの...」
ちらりと少女に目を向けた
「ついてっても... 良いですか?」
少女は自分の手に拳を作り、強く握り締めてそう言った
反対しようと思った、だが... この少女の着けている腕輪、青になりかけの黄色腕輪にどうしても目が行った
ちっ...
軽く舌打ちし
「好きにしろ」
■■■
少女は今まで、同じ黄色の仲間と過ごしていたらしい。少女が黄色の状態を保っていられたのもその仲間のお陰だそうだ
やはり、その仲間は先ほどのようなことをし、死にかけの奴を殺らせる。これで頑張っていた
だが、それをやって行くに連れ、仲間達は去って行った。そりゃ、自分の手柄を他人にやるんだ。いくら仲間とは言えど、そんなことを続けていたらそのうち嫌気が差すだろう。その結果だとよ
話を聞くに、一人だけ仲間が残っていたんだと
そいつは少女を守った、守り抜いた。だが、少女の腕輪は青だった。その仲間が最後にやったことは、自分を殺させることだった。ボロボロだったその仲間は、少女に殺らせた。自分をな
そんなこともあってか、少女は人を殺るのが嫌になったんだと...
ソファーに座り、いつも通りなんの味もないパンの味しかしないただの食パンを囓っている
少女は遠くの方で体育座りしている
「なぁ、なぁよ」
少女を呼んでみる
「ここには二人しか居ないんだ... わかるだろ?」
「名前が...あります。私には、名前がありますから」
めんどくせぇ....
「私は日向と言います。暁日向です。日向って呼んでください」
また、食パンを囓る作業に戻る
が
「なんで呼んだんですか?」
「なんでもない」
腹減ってないか? そう聞こうと思ったのだが... なんか良いわ。そんな気を使うのが馬鹿らしく思えてきた。そもそもあんなに距離を置かれて居るんだ。狭い部屋のはずなのに、あんな角に行かれちゃ距離を置かれて居る意外に言いようがない
はぁ...
溜め息を吐く
ぎゅるるるる
部屋全体にそんな擬音が鳴り響いた
「お...お腹減ってるわけじゃな・・・
「食パン、あるぞ」
食い気味にそう言う
日向は立ち上がり、恐る恐る食パンに手をやった
一枚抜き取り、所定位置に着き、また体育座りをした
ちらりと日向を見てみる、あまり美味しそうに食べているようには見えない...
「ああ、もうっ!!」
そう言って立ち上がると、日向は身体をビクッとさせる
だが、そのまま少女近づき、日向の手にしている端っこをちょこっと囓ってある食パンを奪い
冷蔵庫を開けた
中にあるハムとチーズとケチャップを取り出し
適当にパンに盛り付け
適当にオーブントースターにぶち込んでタイマーを適当に回してやった
何分かして
チンッと軽快な音を鳴らすオーブントースターを開けてパンを取り出す
そのままズシズシと日向に近づき
「ほら、サービスだ」
食パン.... ピザトーストを日向に押し付け、ソファーに戻った
何秒か間が空き、ソファーの右側が凹む感じが伝わった
ふと隣を見ると、ピザトーストを両手に持って隣に座る日向が居た
日向は顔をムスッとしているも、何処か嬉しそうだった
ぱくり
ピザトーストの一部が無くなる
日向ははふはふと息を吐きながら言う
「あふっ! あふいでふっ! あふいでふぉ〜!!」
「馬鹿っ! 冷まして食えよ、焼いたの見てただろうがっ! って言うかお前良く手に持ててたな!?」
よく見ると日向は自分の服の袖で持っていた
なるほど...
そして何分か待つ
パクッ
一口
はむはむはむはむはむっ!!
次は勢い良く口に入れて行った
余程腹が減っていたのだな
それを見て立ち上がり、また冷蔵庫を開けた
丁度、冷蔵庫の中にはオレンジジュースが入っていた
それを持って日向に渡してやった
日向はそれを飲みながら
「子供扱いしないでくださいっ!」
「じゃあ返せよ」
「嫌ですっ! 返したら間接キスになってしまいますっ!!」
めんどくせぇ...
心の底からめんどくせぇ....
飲み終わったオレンジジュースを捨て、ソファーに座る
「日向。お前はこれからどうする気だ?」
「死にますね」
「そうじゃない。そんなことは知っている」
「だから、死ぬって言ってるじゃないですか」
は? このガキは何を言っているんだ?
めんどくさいじゃ済まない
馬鹿かお前は、と視線を向けると
日向はニコッと笑って見せた
「こんな世界糞食らえです。私はこの歳まで頑張ってきました。でも、失った物の方が大きいのです。今度は自分を失う番なんですよ」
理解した
「そう。死ぬまで面倒見てくれってことか。あと少しで死ぬから見届けてくれってか。わかったよ。見ててやる」
「そんな怖い言い方しないでくださいよ。でも、約束ですよ?」
約束....か
後書き
黄色は一週間で青に戻る
青色は三日で持ち主が消える
だが... 赤色は二度と黄色には戻れない
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