静かな勇者
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2部分:第二章
第二章
「あのですね」
「私のことだな」
「怒られていませんが」
こうだ。ワインを水割りにしたものを壺にそのまま口をつけて飲みながら話す。これもまたこの時代の普通の飲み方である。
そうしながらだ。彼に言うのだ。
「全く」
「そうだな。ここ数日はな」
「はい。それでどうして」
「だがもう少しいてくれたらわかると思う」
「もう少しですか」
「そう。もう少しだ」
いればだ。どうかというのだ。
「そうしてくれるか」
「はい、それでは」
ヴェインはランスロットの言葉を素直に受けてだ。そうしてだ。
彼を見続けることにした。やがてだ。
彼とランスロットのところにだ。ある朝に急報が届いた。それは。
「山賊が!?」
「村を」
「はい、そうです」
その通りだとだ。兵士が二人に話す。二人は今ランスロットの城の主の間にいた。そこでこの日これからすることを話していたのである。
「今襲っています」
「それはいけない」
すぐにだ。ランスロットは主の座から立ち上がりだ。
そのうえでだ。ヴェインに対しても言った。
「行こう」
「はい、山賊を退治してですね」
「村人達を救う。いいな」
「わかりました」
ヴェインは強い顔で頷く。だがランスロットは冷静なままだ。それでだった。
彼はヴェインを連れてそのうえでその村に向かった。するとだ。
村は酷いことになっていた。あちこちから火が出ていた。
そして村人達の死体が転がっている。中には。
「こんな小さな子供まで」
「何ということだ」
ヴェインは馬上からだ。血を流してこと切れている子供を見て蒼白になった。ランスロットはその前で同じく馬に乗っている。
そのうえでだ。それを見て話すのである。
「これでは」
「山賊は一体何処に」
すぐにだ。彼は山賊達の居場所を探した。その為にだ。
生き残っている村人を探してだ。そうしてだった。
小屋の陰に隠れていた老婆を見つけてだ。そうしてだった。
彼女にだ。こう尋ねたのだった。
「山賊達は何処にいる?」
「は、はい」
彼が山賊ではなく騎士だとわかってだ。老婆はまずは安堵した。
そしてだった。そのうえでだった。
ヴェインにだ。こう話すのだった。
「村の中央で村のものや娘達を持って来させてです」
「そこでか」
「宴会をしています」
そうしているというのだ。
「食べ物や酒を奪い。少しでも歯向かうと」
「ああしていたか」
ヴェインは老婆の話を聞いてだ。忌々しげにだ。
血の海の中に倒れている子供の骸を思い出してだ。そうして言うのだった。
「何て奴等だ」
「数は多いです」
老婆は山賊のその数も話した。
「五十人はいます」
「数は関係ない」
ヴェインは若さからだ。激情にかられてだ。
老婆にこう告げてだ。そうしてだった。
小屋を出て馬に乗ろうとする。しかしその彼にだ。
ランスロットがだ。こう尋ねたのだった。
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