剣を手に
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5部分:第五章
第五章
「そのことをだ」
「はい、祝って飲みましょう」
「王にもお話して」
こうしてだった。彼等は今は巨人が倒れたことを祝い深夜の宴に入るのだった。肉にビールをだ。好きなだけ飲んで楽しむのだった。
王もそれを祝った。しかしだ。
その中でベイオウルフもまた酒を飲んでいた。大柄な身体に相応しい巨大な木の杯に並々とビールを注いで。それを飲んでいる。
だが彼は酔うことなくこれからのことを見据えていた。そうしていたのだ。
その翌日はだ。彼は王宮に詰めていた。そのうえで夜を迎えた。
その彼にだ。また兵達が尋ねる。
「昨日のお話ですが」
「巨人の家族ですね」
「それが来るというのですね」
「いればな」
そうだとすればだというのだ。
「それは間違いなく来る」
「来ますか」
「やはりそうなのですか」
「巨人の家族が来る」
「いればですか」
「それを待つのだ」
腕を組みまんじりともせずだ。彼は言うのである。
「今はな」
「左様ですか。だからこそですか」
「気を引き締めておられるのですね」
「そうなのですね」
「いるとすれば今日来る」
しかもだ。今日だというのだ。
「家族のものは一刻も早く取り返したいからな」
「ではベイオウルフ殿、今は」
「ここにいてそうしてですね」
「相手を待つ」
「その巨人の家族を」
「そうする」
あくまでという口調でこう話してであった。
彼は待っていた。やはりその巨大な、巨人さえも斬れるその剣を持っている。そうしてその剣を見てだ。彼はまた言うのであった。
「この剣があれば」
「いけますか」
「今度もまた」
「そうだ。俺のかけがえのない友だ」
剣がだ。それだというのだ。
「これがあればだ」
「ベイオウルフ殿は勝てるのですね」
「その巨人の家族にも」
「そうだと」
「そうだ。勝つ」
勝てるのではなくだ。勝つというのだ。
「必ずな」
「はい、それではです」
「我等もせめてです」
「御供させて下さい」
「今こうして」
「わかった」
ベイオウルフもだ。彼等のその言葉に頷くのだった。
そのうえでだ。彼は待ち続けるのだった。
そして真夜中になった頃だ。まただった。
王宮の中に叫び声が木霊した。
「来た!」
「あいつだぞ!」
「死んだんじゃなかったのか!」
「いや、しかし来た!」
「間違いない!」
こうだ。別の兵達の声が木霊する。
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