同士との邂逅
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二十三 生きろ
昨日ぶりの、子どもの涼しげな声が横島の耳に届く。
それと同時に、横島の上に跨っていた音忍の姿が掻き消えた。月代ではなく本来の姿のままのナルトが蹴飛ばしたのだ。
木を薙ぎ倒して吹き飛ばされていく音忍を、横島は呆然と見遣った。
「…ナルト……」
「……………」
無言でナルトは周囲を見渡す。既に気を失って地に伏せている音忍らを確認し、次いでハヤテに目を向けた彼は眉を顰めた。
「なんで…」
「…瑠璃が連れてきてくれた」
横島の問いにぽつりと呟いたナルト。彼の肩に、鳥――瑠璃が翼をはためかせて降りてきた。
「え、まさか…」
音忍から逃走を図る際、横島は適当な場所を指差して「ああ―――――――――――ッ!!!!アレ、何だッッッ!!!!」と叫んだ。
その時指差した空を鳥が旋回していたが、まさかそれが瑠璃だったのだろうか。
色々な事が起こり過ぎて思考回路がパンクしそうな横島。困惑する彼に向かって、ナルトが手を差し伸べた。その小さな手をとって横島はゆっくり身を起こす。
横島がなぜココにいるのかをナルトは詰問する事も咎めもしない。それが逆に気まずくて、横島は暫し視線を泳がせる。だがすぐさまハヤテと破璃の事を思い出し、彼は慌てて声を張り上げた。
「ナルト!ハヤテさんと破璃が毒で……っ!!」
「お前もだろ」
横島の焦る声に動じず、ナルトは彼の頬の切り傷を指差す。そしておもむろに「破璃」と、ナルトを従順に見上げている狼に声を掛けた。
「破璃。解毒出来るな?」
「なに言って…っ!?」
一向に焦燥の色が見えないナルトに、横島が焦れて声を荒げる。その時破璃がガブッと怪我した脚を自ら噛んだ。
困惑する横島に構わず、噛んだ直後に怪我していた箇所を舐める破璃。そこには先ほどまであったどす黒い切り傷はない。
怪我ひとつない脚で破璃はすっくと立ち上がる。そして満身創痍のハヤテの傍に近づいたかと思うと、再び破璃は自分の脚を噛んだ。
鋭い牙によって破璃の脚から幾筋もの血が流れ落ちる。滴り落ちるその血を指で掬い取ったナルトが、それをハヤテの口に入れた。
たった一滴。
その血がハヤテの口内に入った途端、どこからかじゅうう…と音がした。
どす黒い切り傷を負ったハヤテの肩。そこから小さな煙が立ち上り、同時に傷が癒えていく。唖然とする横島の前で、毒のせいで荒かったハヤテの息は落ち着いたものになっていた。
「は?どういう…」
「次はお前だ。呑め」
「いや意味わかんねーよ!どういうことやねん!?」
混乱のあまり地の大阪弁で横島はナルトに問い質す。ナルトは手裏剣のせいで血濡れになっているハヤテの背中に手を翳しながら淡々と答えた。
「破璃と瑠璃が動物を合成させたキメラだと話したな。その際、無理な薬物や乱用に酷使されたと…」
急に何の話だと訝しむ横島に構わず、話を続けるナルト。彼の手から洩れる青白い光がハヤテの身体を包み込んだ。
「こいつ等だけが生き残った理由…それは使用した毒物を解毒することが出来たからだ」
「は?」
「毒を自らの血と混ぜ合わせ、更に唾液を含むことで毒は中和される。そしてその際、コイツラの身体中に流れる血は毒を無害にさせる薬となる。故に同じ毒を受けた者が、破璃もしくは瑠璃の血を摂取することで、体内の毒が一瞬で解毒されるというわけだ」
ナルトの言葉を信じられないといった面持ちで聞いていた横島の鼻先に、破璃がずいっと脚を突き出してきた。ナルトが見向きもせず言い放つ。
「論より証拠。呑め。死にたくなかったらな」
ぐっと言葉が詰まった横島はおそるおそる破璃の脚を流れる血を掬い上げる。
確かにナルトが吹き飛ばした音忍は毒つきクナイを横島に振り翳した。流石に二度目となると、毒が身体を巡っていく感覚が解る。
頬のどす黒い切り傷がじくじくと痛み、毒による倦怠感と痺れを感じ始めた横島は思い切って破璃の血を呑んだ。
途端、ハヤテに注入された解毒剤と同じ効果、いやそれ以上のものを感じる横島。ハヤテと同じく頬の切り傷がじゅうう…と音を立てて塞がっていく。
全身の倦怠感が一気に無くなり、毒など最初から盛られなかったのではないかと思うほど身体が楽になった。
「すげ…」
感嘆の声を漏らす横島。ぺろぺろと自らの脚を舐めている破璃をぼんやり眺めていた彼ははっと我に返ってナルトに近寄った。
「ハヤテさんは…ッ!?」
「重傷なところは治した。だが…」
翳していた手を下ろしたナルトがちらりと横島を流し目で見遣る。
「応急措置程度だ。完全に治すには……そうだな。今使わないでいつ使うんだ?」
わざとらしい仕草で肩を竦めてみせた彼は横島に一本の巻物を手渡した。そしてぽん、と通り過ぎ様に肩を叩く。
「処置が終わったらその巻物の中身をハヤテに見せてくれ。記憶消去の術が施されている。お前は決して見るな」
「は!?どういうことだよ!?」
「ここ暫くの記憶を忘れてもらうだけだ。俺の存在もお前の存在もハヤテにとっては無いほうがいい。あと、それが終わったら破璃の背中に乗れ。俺がいる場所につれて行ってくれる」
「ナルト!!」
有無を言わせない言葉に反論しようと口を開いた横島は、ナルトの様子を見てはっとした。
よく見ると彼の姿はボロボロだった。激しい戦闘でもしたのか汚れた服装に、砂がたくさんついている。しかし自分の身より何かを気に掛けているような風情で、ナルトは今にも駆け出すのを我慢しているようだ。
動じていないと思っていたがそれは勘違いだったらしく、酷く焦っている。
「………頼む」
絞り出すような声音で懇願された横島は、ただただ頷くことしか出来なかった。
常に冷静沈着を絶やさず表情に出さないナルトが、横島の承諾にあからさまにほっとしている。そしてぽんっと月代に変化したかと思うと、瞬く間にその場から姿を消した。
気配の余韻すら残さず掻き消えたナルト。
まるで最初から誰もいなかったと錯覚させられ、ぼんやりナルトがいた場所を眺めていた横島は、破璃の鳴き声ではっと我に返る。
そしてハヤテの怪我を治すために、音忍達と戦闘した故に残り少なくなった僅かな霊能力を掻き集めて文珠を生成しようとし始めた。
「う……」
僅かに身動ぎしたハヤテが呻き声を上げる。横島は文珠生成に集中しながら、彼の顔を覗き込んだ。
「ハヤテさん!!しっかりするッス!」
「よ、こしま…くん……お願いが、あるんです…ね…ごほっ」
息も絶え絶えの様子で言葉を紡ぎ始めるハヤテ。耳を澄まして彼の言葉を聞いていた横島は、ハヤテの次の言葉に息を呑んだ。
「ごほごほ…っ、…もう…いい、です…自分の身体のこと、は…自分がよく、知ってるん…ですね…」
「な、なに言ってるんスか!?解毒はもう済んだんスよ!!助かるに決まってるじゃないですか!!」
擦れた声で生きるのを諦めたと言うハヤテに横島は檄を飛ばす。だが、ハヤテは虚ろな瞳で緩く頭を振った。
「自分が…情けないです…あんな不意打ちにやられ、るなんて…忍び失格、です…よこし、まくん…頼みます…ごほ…私を、楽にして…ほしいんですね…」
ハヤテの言葉を聞いた瞬間、文珠生成のために集中していた霊気が拳の中で消散する。
彼の言葉を反芻し、横島は頭に血が上った。
なにを馬鹿なことを言ってるのか。楽になりたいからと言ってそれを俺に頼むのか。
不意打ちにやられたからって、忍び失格だからって、それがなんだ。
自分のほうが情けなかった。馬鹿な事を繰り返して、何度も死にそうな目にあった。
でも楽になりたいと思った事は一度もない。死ぬ事は怖い。死んで楽になるとも思わない。
なによりあの夕陽に誓ったんだ。
誰も信用できない。誰も信頼できない。自分は世界に望まれていない。それでも。
世界を憎む事も他の誰かを恨む事も、楽になろうともしなかった。だって、彼女が救ってくれたから。
彼女が救った世界。彼女が生かしてくれた命。どうして蔑ろに出来ようか。
だからこそ、[人類の裏切り者]とされても神界・魔界から命を狙われても生き続けたのだ。
それ故、楽になりたいと自ら生きるのを諦めるその言葉が横島には癪に触った。ハヤテの一言に沸々と怒りが湧き上がる。
一点の光が見出せればその光にしがみつく。少しでも可能性があれば足掻いて足掻いて最後まで諦めない。
(しがみつけよ…!足掻けよ…っ!)
――――――――――生きろよ!!
怪我人だというのも忘れて、横島はハヤテの胸ぐらを掴んで捲し立てた。
「ふざけんな!!アンタ、確か夕顔って恋人いるんだろ!それなのに死ぬとか簡単に言うんじゃねぇ!!」
一緒にナルトの屋敷で過ごしていた頃。屋敷傍で咲く夕顔を見つめながら微笑んだハヤテの横顔を横島は憶えている。
茶々を入れると真っ赤な顔をして夕顔という恋人がいるとはにかみながら白状した――――あれは何だったのだ。
ふっと一瞬、横島の瞳に蛍の光が過る。痛切な思いを胸に抱きながら、彼は声を張り上げた。
「置いて逝くのも辛いことだってわかる!!けどな、置いて逝かれるほうの身にもなってみろ!!夕顔って女性(ヒト)泣かせんのか!?泣かせたくなかったらそんな馬鹿なこと、二度と口にすんな!!!!」
癇癪を起したような、それでいて切実な横島の叫びがその場に響き渡る。瞠目するハヤテの前で、はあはあと肩で息をしながら横島は更に声を張り上げた。
「アンタはどうなんだ!?恋人に会いたくねえのか!?生きたくねえのか!?」
横島の心からの訴えに、ハヤテは肩を震わせた。逡巡する彼の答えを横島は黙って待っている。
とうとう観念して、ハヤテは震える唇で怒鳴り返した。
「あ、会いたいですよ!!会いたいに決まってるじゃないですか!!」
そして真っ直ぐに見据えてくる横島から視線を逸らして俯くハヤテ。嗚咽雑じりで蚊の鳴く様な声を彼は絞り出した。
「い、生きたい…っ。生きたいです…!!」
それは忍びにとってはあるまじき言葉だった。
いくら尋問されても堅忍不抜の意志を持つ忍者の在り様をばっさり切り捨ててしまうような一言だった。
それでも横島の強い眼光には逆らえず、ハヤテはつい本心を口にしてしまっていた。
横島の泣き叫ぶような言葉に、心を動かされてしまった。
今まで内心思っている事も絶対に声に出さなかったのに。横島の切実な叫びに促されて、ハヤテはうわべでは無い本意を明かす。
それは、彼の生きてきた人生の中で初めての事だった。
自責の念に駆られながらも、なぜかハヤテはスッキリしていた。自分は忍びだからというのを言い訳にして隠してきた思いを、積もり積もった自分自身の本当の心を曝け出して肩の荷が下りた気がした。
生きたいという人間らしい言葉を耳にし、どこか満足げな表情を浮かべて横島は拳を握り締める。
「生きろよ!!生きて恋人に…夕顔さんに会えよ!!それで…一緒に生きろ!!」
―――――――だから、そんな簡単に楽になりたいなんて二度と言うな!!――――――
誰かが目の前で死ぬのはもう嫌だ。
八方美人だと非難され、偽善者と罵られ、甘すぎると諭されようが、横島にはどうでもいい。
ただ助けたいのだ。失いたくないのだ。―――――――――守りたいだけなんだ…。
それの何が悪い。恋人がいるのなら猶更だ。哀しむ人がいるのなら、俺と同じ想いをその人に抱かせたくない。
置いて逝かれて、それでも生きなければならない苦痛。追い駆けたいのを必死で止める理性。
一緒に逝きたかった望み。共に生きたかったという願い。
それらを何れも解っている横島だからこそ、絶対に楽になどさせない。
だから。
(生きろっ!!!!)
眩い光が横島の拳から溢れ出す。
指の合間から洩れる青白い輝き。もう枯渇していたはずの霊能力を無理に引き出し、集中する。
双眸を閉じて深呼吸した横島がカッと目を見開いた。刹那、彼の手中に霊気が集束されていく。
戦闘で疲労した身を叱咤して、彼は拳中に強い眼光をそそいだ。全身に脂汗を滲ませながら横島は残り少ない霊能力を玉の形へと生成していく。
「この世に未練がある奴は霊になるんだよ。でも霊になっちまったら、伝えられるもんも伝えられなくなるんやで…。アンタには待ってる女性(ヒト)がいる。生きて、生きて帰ってやれよ…っ!!」
噛み締めるようにそう叫んで、横島は辛うじて出来た文珠に【癒】の字を入れてハヤテに押し付けた。
閃光が木立を駆け抜ける。
光が消えた後には、ハヤテの身体は傷ひとつない健康体(普段咳き込んでいるので健康かどうかわからないが)普通の状態になっていた。
ガバリと身を起こし、横島と自分の身体を交互に見遣るハヤテに、横島は静かに話し掛ける。
「ハヤテさん。色々ありがとうございました」
「横島くん…?」
「短い間だったけど、ハヤテさんと過ごした日々は楽しかったッス。鍛錬はスパルタでしたけど…でもハヤテさんの言葉で救われたこともあったんで、感謝してるッスよ」
突然感謝の言葉を告げられたハヤテが目を瞬かせる。横島はハヤテの眼をじっと見ながら、地面に置いておいた巻物を手繰り寄せた。
「でもこれだけは言わせてください……一度でも生きることを諦めたからには恋人に謝れ」
そう告げた瞬間に、横島はハヤテの眼前で巻物を広げて見せた。巻物の中身を見たハヤテの眼が虚ろになる。
ぼんやりと虚空を見つめる彼の傍で、中身を見ないように巻物を巻いていく横島。それをポケットに押し込んでいると、突然瑠璃が甲高い鳴声を上げた。
ビクリと肩を震わせた横島は、誰かが近づいて来る気配を察する。
「おい、シカマル!!どこだ!?」
「こっちだっつ―の!!」
男の声と子どもの声が、ガサガサと草を踏み分ける音と共に木立の中で響き渡る。
なんだか聞き覚えのある声だなと思った横島の裾を破璃が強く引っ張った。
そのまま無理やり横島を背中に乗せた破璃は、疾風の如くその場を走り去る。軽やかに走る破璃の背中に乗りながら、ぼんやりと横島は思っていた。
(シカ三角じゃなくてシカマルか……惜しいな)
奈良シカマルは音忍達からの逃走に助力してくれた青年が気掛かりだった。
そのため、一度中忍試験会場まで戻り、援軍を呼ぼうと考えていた。全力疾走で木立の中を駆けていた彼は、会場までもう少しといったところで自らの担当上忍――猿飛アスマと出会う。
そして事情を説明した後、今来た道をアスマ携えてもう一度戻ってきたのだ。自分を助けてくれた青年――横島を助けるために。
だがシカマルが音忍に囲まれた場所には、既に青年の姿はなかった。いたのは―――――。
「お、おい…。アンタなんでここに…?」
死んだはずの月光ハヤテだった。
木の幹を背に、ぼんやりと虚空を見つめている男――月光ハヤテの姿にぎょっとしたアスマは、すぐさま状況を訊こうと彼の肩を揺さぶった。ハヤテの傍では数人の音忍達が倒れている。
危険はないと判断したシカマルも、アスマの後ろに控えてハヤテを窺っていた。
「おい!ハヤテ!!お前、生きてたのか!?今までどこにいたんだ!?」
矢継ぎ早に質問する興奮気味のアスマを落ちつかせようとシカマルが口を開き掛ける。その時アスマの声のお蔭か、虚ろな瞳に光が戻ったハヤテが不思議そうに目を瞬かせた。
「…おや?アスマさん、どうしたんですか?」
「どうしたんですかじゃねーよ!!お前がどうした!?」
「落ちつけって…」
シカマルの諫める声にようやくアスマが冷静を取り戻す。一方のハヤテは、その場をきょろきょろと見渡してから眉を顰めた。
「おかしいですね…、ごほっ。私は確か砂と音の密会を目にして…それから火影様に報告しようと…。そ、そうです!!砂と音が手を組んで木ノ葉崩しを…」
「いや今ちょうどその真っ只中ッスよ」
取り乱すハヤテにシカマルが突っ込んだ。動揺するハヤテの様子を眺めていたアスマが何かを思案するように、ふむと顎を撫でる。
「つまりなんも憶えてねーんだな?まぁ考えられる事は、その密会を見てしまったせいで敵側に捕虜となっていたという可能性が高い。ハヤテ、お前は死んだことになっているんだぞ」
「ええ!?…でもそういえばここ数日の記憶がぽっかり無くて…」
「……とりあえずコイツラと共にイビキに引き渡すか。何か敵の重大な情報を持っているかもしれねえし…」
ちらっとその場に倒れ伏す音忍達を視界に入れたアスマは、はあと嘆息しながらハヤテに肩を貸して立ち上がらせる。
同じく辺りを見渡していたシカマルは気絶しているだけらしい音忍達の姿に眉を顰めた。
「この音忍達はハヤテさんがやったんスか?」
「…わ、わかりません。気がついたらココにいたんで…」
ハヤテの言葉に益々訝しげな表情をするシカマル。そこら中で蹲っている音忍達は自分を取り囲んだあの時の音忍に加え、別小隊がいる。
シカマルを追い詰めていた九人の音忍は誰もが息絶えているようだが、残りの七人はまだ息がある。そしてココから少し離れたところに音忍の一人が気絶している。
まるで暴風がその音忍ひとりを道連れにして吹き抜けたかのような。薙ぎ倒されている木々を見てシカマルは再び眉根を寄せた。
(……あの人がやったのか?)
自分を助け、囮となった青年の姿を思い出しているシカマルにアスマが声を掛ける。
「おい!後でここの音忍達も回収すっから、まずはハヤテを医療室に連れて行くぞ。血臭が酷え」
「いえ…どこも痛くないんですが…」
今にも中忍試験会場方面へ向かおうとするアスマを、シカマルは慌てて引き止めた。
「え、さっき俺を助けてくれた人はどうすんだよ!?」
「仕方ねえだろ。この惨状じゃ…。それにもうすぐ木ノ葉崩しも終わる」
「なんでそう言い切れんだよ!?」
シカマルの言葉を聞き流しながら、アスマはハヤテの腕を自分の肩に回す。そうして肩越しに振り返った。
「さっき試験会場に向かってくる人影を見た。アイツが来ればもう大丈夫だ」
「アイツ…?」
顰め顔で見上げてくるシカマルに対し、アスマはくっと口角を上げた。
「月代だ」
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