天空遊園地
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王様とヒーロー
俺は、仲の良くない、双子の兄がいた。意見も食い違い、話も進まない、一緒にいても気まずいだけ
喧嘩するほど仲がいいと言われる兄弟でもない、ほとんど他人のような、兄
空音は、俺たちがこんなに仲が悪いのが嫌いだった。そして、敏晴が嫌いだった
理由は、敏晴の独占欲の強い性格だった。自分を独占しようとする敏晴の行動が、空音は嫌いだった
だから空音は、いつも俺と一緒にいた。空音も、だんだん、敏晴を他人のような目で見ていった
その頃だった。仕方なく、敏晴と登下校を一緒にしていた、ある日の帰り道
敏晴は突然「やりたいことがある」と言い出した
「なんだ」と俺が聞くと「一人じゃないとできない」と言った
「じゃあ、やれば」と俺が言うと「先に帰ってて」と言って、どこかへ行ってしまった
それから、夜になっても、次の日になっても、一週間たっても、敏晴は帰ってこなかった
失踪・・・・行方不明になった
あれから二年、俺は中3になり、敏晴のことは、あまり気にせず過ごしてきた
兄弟なのに、今考えれば酷いやつだ
敏晴のやりたかったこと、今ならわかる気がする。この遊園地を動かすこと、それが敏晴のやりたいこと
しかし、何のためにそれをやっているかは、わからなかった
「王様にまでなって、俺の名前を使って、この遊園地を動かして、子供たちの心を奪って・・・・どうしてそれができた?なぜ、こんなことをするんだ!!」
「お前は何も気づいてない、そして何も分かっていない。分かり合うことはできない。そんな奴に、俺の考えを言って何になる?」
「俺は空音が大事だ。空音を危険にさらすのなら、そいつのしたいことくらい知ってもおかしくないだろ」
「結局俺は、一番の兄弟であるはずの俺は、無視か、いないもの扱いか!!それでよく、空音が大事とか言ってられるよ。一番近くにいる兄弟すら大事に出来ないやつなんかに、空音を渡す訳無いだろ?今までやってきたことは、空音と俺のためだ」
「何・・・・?空音と自分のため?お前こそ、何が空音と自分のためだ!兄弟を大事にしなかったのは、俺もそうだが、お前も同然だろ?独占欲の強い、気持ち悪い兄に、妹がついていきたいと思うか?お前の曲がったその性格に、誰かがついてきたいと思うか?」
「黙れ!お前の言えたことじゃないだろう!だから、わからないって言ったんだ。お前に俺の心など・・・・わかるわけない!!!」
「もう、やめて」
その時、小さく、微かに、空音の口元が動いた。そして、もう、やめて、と言った
「なぜ、喋れるんだ空音・・・・遊園地に心を奪われたものは、自分の想いを伝えることができなくなるはず・・・・」
敏晴はそうつぶやいて、手をかざした
「今は、話すな!!」
すると、空音は、あやつり人形のようになり、床へ座った
「お前が・・・・操っているのか?空音の叫びを、聞こうとしないのか?・・・・やっぱりお前とは分かり合えない、お前に空音は渡さない!取り戻す、必ず空音を取り戻す!」
「俺の心を理解しようとしないやつに、空音は渡さない、絶対に!」
空音は「もう、やめて」と言った。それは、俺たちの争いをそばで見て、一番嫌っていた空音だからこそ、言えることだった
なんとかしなくてはいけない、兄弟喧嘩に終止符を打たなければいけない。しかし、分かり合いたくはない
どうする、どうすればいい、なんとかしなくては!
でも、まずは、それを考える前に・・・・
俺は空音を敏晴から奪って、抱き抱えて走り出した
まずは空音を、あいつから引き離すことが先決だ。空音を手元に引き寄せた。話は、それからだ・・・・
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