天空遊園地
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ヒーローショーと自分
地図を頼りに進んでいくと、次にここから一番近いアトラクション、と言っていいのだろうか・・・・に向かった
そこでは、俺が子供の頃に見たヒーローのショーをやっていた
随分と古くて、懐かしいヒーローショーをするなぁ・・・・そういえば、俺も子供の頃、知らない遊園地でヒーローショーを見たっけ
あの遊園地がどうしても思い出せない。でも、この場所によく似たような遊園地だ
まぁ、ここでも空音を探してみよう。男の子ばかりだが
「正義のヒーロー、赤レッド!」
「子どもを守る、青ブルー!」
「悪を蹴散らす、黄色イエロー!」
「三人揃って、カラフル戦隊、イロレンジャー!」
今思えば、なんてストレートでひねりのないヒーローだったんだと思う。
大人目線はこうだったのか・・・・って、今はそんな場合じゃない
子供たちを見渡した。しかし、ここに空音はいなかった。でも、もうしばらく、このヒーローを見ていたい
俺は、10年前の、遊園地で見たヒーローショーを思い出した。あの頃と変わらない、ヒーローショー
空音の妊娠が分かって、俺は初めてできる妹を心待ちにしていた。そして誓った
「俺、イロレンジャーみたいなヒーローになって、妹を守る!」と
小さい頃のその約束は、今、果たせているんだろうか。結局俺は、何もできない、無力なやつになってしまった
妹一人、幸せにしてあげることができない・・・・
もしかして空音は、遊園地に行きたい願いが強くなって、この遊園地に呼ばれてしまったのか?だとすれば納得がいく
そうだ、こんな危険な目に合わせてしまったのは、全部俺のせいなんだ。俺が、この事態の元凶だ!
「随分、困り果てた顔だね。そして、その溢れる負のオーラ、ここにはあってはならない感情。君は一体何者だ?どうして、お前のようなやつが、この遊園地にいる?」
妹くらいの年齢の少年に、俺は突然、話しかけられた。こいつも・・・・管理人の一人?
「俺は、妹を助けるためにここに来たんだ。空音という。妹を知らないか?」
「入場してきたのは知っているが、どこにいるかまではわからん。しかし、そのためだけに、自分の身を危険にさらすのか?」
「そうだ、空音は、たった一人の妹なんだ!」
「ふーん、そうか・・・・・「兄」はいなかったのか?」
その時、俺の心の中に、何かが刺さった気がした。その刺さったものが、俺の心に大きな穴を開けていく
俺は、自分の胸をつかみ、服を握り締めた
「いない・・・・そんなのはいない!!」
「ふーん、そうか。でも、それにしても、お前はヒーローだな」
「え?」
俺はその言葉に驚いた。そして少年は、にやりと笑って続けた
「自分は無力だ、とか、俺のせいで妹がこんな目に、って思ってるかもしれないけど、逃げずに問題に立ち向かって、それを解決しようと努力するのは、素晴らしいことだと思うよ。だから、君は、このヒーローショーのヒーローに、少しは、なれてるんじゃないのか?」
少年は少し落ち着きを取り戻すように小さく咳払いをした
「・・・・失礼なことをしたな。申し送れたが、俺の名前は江夏太陽だ、君には興味をそそられる。おそらく、春人がそう思ったはずだ。春人に会ってきたんだろう。その地図は春人しか持っていないからな」
太陽は俺の持っている地図を指さした
「君がどうしてここに来れたのか、君がどうしてあのお方と同じ顔なのか、興味がある。これは何かのめぐり合わせだろう。先へ進め。できるものなら、妹を救い出してみろ!」
そう言うと、太陽は去っていった
ヒーロー、か・・・・なかなかいいことを言ってくれた管理人だったな。
・・・・・そうだ、少しでも、ここにいることをプラスに思わなくては
しかし、ここまでいい管理人が続いているが、油断はできない。残り二人も、俺に興味を持って見逃してくれるといいんだが・・・・
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